24.意外な才能
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「それにしても驚いたわね…」
「あ、あぁ…」
「びっくりです。 まさか…」
等と先程から俺をからかう様にわざとらしく告げる3人。
今は村を出て森の中を進んでいる途中――
「またその話か」
「だってそうでしょ! アルメイアはともかく、私とエリスより子供達と仲良くなるって何!? たった1日遊んだだけの奴になぜ負けたぁ!?」
「お、おい? 何故私は省かれた!」
「そりゃ、まぁ…常にムスッとしてるし」
まぁ確かに、アルメイアに関して少し近寄りがたい空気を感じる気がする。
常にしかめ面のせいもあるんだろうが――
「わ、私でも2ヶ月は掛かったというのに、す、すごいです!」
「えぇ。 これはもう才能としか言いようがないわね。 子供の心を鷲掴みにする才能!」
どうもこいつらは俺が村の子供達と仲良くなった事が腑に落ちないのか。
もう2日渡ってそんな話をしてくる。
「成程。 子供たちがアッシュ君に似てるって言ってた意味が解った気がします」
「あんなに暑苦しくは、ないと思うけど?」
「あいつはもっと臭いだろ。 こう~臭う感じが」
「酷いですよ! 2人とも! アッシュが聞いたらなんていうか!」
ぷくっと頬を膨らませ真っ赤な顔のエリス。
しかし、2人共特に謝る気配もなく、寧ろ――
「なら、本人の前で言ってやるとか?」
追い打ちをかけるアルメイアと
「まぁ、本人に実際言ってるし?」
まだまだ言い足りなそうな顔のアリス。
「ますますそのアッシュって男が可哀想になってきた」
「むぅ~…」
ほら、また拗ねたぞ、エリスの奴が。
だが、安定と安心の放置プレイである。
「で? 2人とも。 私の国へ亡命した訳だけど? 帰ったらビシバシやるから、覚悟してなさい?」
「お、お手柔らかにな?」
「あの、その…が、がんばります!」
「頑張れ~」
まぁ主な原因は”俺が家に帰る事”らしいが、そこは無視の方向で。
とはいえ、まだ5日程掛かる道のりな訳で―――俺は1人。
「にしてもあんた? 罪悪感は無い訳?」
「あ、あははは…」
「そ、それは~アリスちゃん?」
堂々とランスロットに跨り、寛いでいた。
罪悪感? そんなものは無い。
足が死ぬ前に俺は最善の選択をしたまで。
「馬鹿を言うな。 お前等みたいに長距離の移動に慣れてないんだ。 俺の足が死んだらどうする…」
「私の足が死んだら?」
「引き摺って連れて行く」
「……こいつ、本気で言ってるわ…」
呆れた表情のアリスを尻目に和気藹々と話を交わす、エリスとアルメイア。
しかしこいつら、よく見ればどれもこれも美人揃いだ。
アリスを筆頭にエリスは幼げもありがならしっかりしたプロポーションをしているし、アルメイアに至っては表情こそ硬いもののよく見れば美人。
「眺めは…悪くないか」
「?? どうしたのよ?」
「ん~? 何かあったのか?」
「はい?」
どうして反応しなくていい時だけ、こいつらは反応を見せるのか…
わざとやってるのか?
暫くしてからの事である。
ついに痺れを切らしたアルメイアが口を開いた
「というかなんだこれは!! 魔物は!? 魔物はどうした!? ここ1週間1匹たりとも発見していないぞ!?」
「そ、そういえば。 ついつい旅行気分でしたけど…この近辺って魔物が多い筈なんですが…」
え?今更?と言う顔を向ける俺。
事情を知っているアリスは特に何も言う事は無かった。
というか、こいつら…俺が何の為に後を陣取っているのか意味を理解しているんだろうか?
「はぁ~…言ったでしょ? 空から見てるって。 こいつは」
「あ、あぁ…しかし、空に浮かぶドローン?という物があったとしても、音は聞こえる筈だろう!? それが無音というのは―――」
「当たり前でしょ? アレは隠密行動用の兵器よ? 音なんか立てる訳ないじゃない」
「は? 音を立てない?」
そう俺が寛いでいるもう一つの意味は、常にドローンの映像を監視していれば何も危険は無いと判断したからだ。
この近辺の魔物は集団で行動する魔物は少ないお陰で、ドローンのサイレンサー内蔵の狙撃銃でも十分に役立つ事が証明された。
「お、音を立てないってそれじゃあまるで暗殺用の――」
「そうよ?」
食い気味にに反応を示したアリス。
その反応を見てか2人の表情は青ざめる。
「と、という事は。 そういう事も―――」
「私は命令しないわよ? けど―――言えばこいつはやるでしょうね」
「………」
仕事ならば。 と発言しようと思ったが、俺は途中で堪える。
これが俺の悪い癖だ。 感覚麻痺を起こしているというか、頭で考えるよりも先に口が動いてしまう。
そう生きて来たせいってのもあるんだけどな。
「まぁ今はお前らを守る為に使う。 それが俺の役目だからな?」
「た、頼もしい―――」
「です…」
「寧ろ、頼もしすぎて不安になるわよ」
その日の夜。
夕食を済ませた俺は近くの川の岩陰でディスプレイ上に表示された映像を眺めていた。
成程。 ここら辺の魔物は動物系か…兎やら狼やら。 ちらほらと姿を確認できる。
が、数はあいつらが言うほど多くも無い。
「言っても魔物に関してはデータが少なすぎるか…」
『はい、エイリアンとは異なる生態の様ですが、詳しい情報は未だに不明です』
「知っておいた方がいいのかもな? この先の街で冒険者ギルドに寄るらしいから、そこで聞いてみるか」
『そのほうがよろしいかと』
「で、だ。 あいつらまだか?」
もう30分は軽く経っているぞ?
「ふぁぁ~生き返るぅぅ~~」
「ぐっあぁ~これが幸せか…」
「あ、あったまりますぅ~」
岩の後ろからは気の抜けた様な声が聞こえて来た。
綺麗な月夜の光に照らされ、もわっと白い湯気が空へ昇る。
そう。 今こいつらは俺特製の露天風呂で身体を温めている所だ。
「ま、まさか。 こんな使い方も出来たなんてね? あんた、最高よ」
「あ、あぁ…ありがとう」
「ありがとうございますぅ~」
「どういたしまして。 ごゆるりと…」
まさか川の水を沸かすのにレーザーソードを使う事になろうとは。
丁度いい窪みを発見した俺が「露天風呂もいいな…」とついつい口走ってしまったせいで今に至る。
はじめは水浴びするつもりだったこいつらも俺が湯を沸かせると知ってか、頭を下げ頼んで来た。
「あんたも一緒に入ればいいのに?」
「な、な、何を言うんだ// アリス!!」
「そ、そうですよ!!// お、お、お、男の人と一緒にお風呂なんて!」
いや、そういう所はデリケートなアルメイアさんとエリスさんなんだ。
俺は後で入るから気にするなアリスよ。
「気にするな。 後で伸び伸びと入るから」
そして――
「ふぃ~~…やっぱり風呂は良いよな~」
3人が着替えてテントへ戻ったのを確認した俺は1人でのんびりと湯へ浸かった。
久々の風呂に興奮気味の俺は大の字で夜空を眺めた。
「うん。 こういうのも悪くないな」
『家にお風呂が出来れば尚の事良いのでしょうが―――』
実のところ戦闘用スーツを身に着けていれば衛生面等の問題は一切排除され。
風呂に入る必要も無ければ、サラの様に頭まで装備を身に着けていると尚の事洗う必要性が無くなる。
というのも、サポートをメインに特化した戦闘用スーツには特殊なジェル状のナノ装甲が用要られており、それが作用して身体の汚れや衛生面の管理を24時間体制で行っている。
しかし! 日本人としては風呂へ浸かりたい、これは気持ちの問題だ!
なので、俺は改めて風呂の必要性を強く感じた。




