13.力の証明
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名目上、お抱えの用心棒となった俺は結局この国に4日以上滞在する事となった。
飯も美味いし、何ら不自由がないのだが俺はさっさと家に帰って風呂を作りたい!
なんて我儘が通る訳もなく、今回ばかりはアリスの傍でぐったりと大層な椅子へ腰かけていた。
「見せつけるってどういう事だよ?」
「へ? そのままの意味よ。 いやらしい目を使ってくる連中に見せつけてるのよ? 私は心に決めた相手が居るから諦めなさい?ってね」
「そんな事が通じる連中なのか? 人間にエルフに竜人に獣人…リザードマンってやつからドワーフやら…あぁ~多すぎて解らん!」
「まっ。 顔なんて覚えなくてもいいわよ? 外交関係でちょくちょく来る位の人達だから」
「へぇ~…けどなぁ~」
俺が人間と知ってか、半数以上の連中はえらい形相で俺を睨んでた気がするんだけど?
やっぱりこんな話し受けるんじゃなかった。
「ほら! 次のお客人よ!」
「はいはい…」
椅子に座る事早5時間余り、正直しんどい。
こんな生活をもう4日だぞ? 早く家に帰してくれ。
「お嬢様。 ダークエルフの国から要らした、ビクトリア・ゲイツ様でございます」
「失礼。 アリス様? なんでも、お抱えの用心棒を雇ったのだとか。 噂は各国に広がっておりますよ? それもお相手は人間…」
黒いドレスに身を包んだ褐色肌の女性はニコッと俺に微笑んだ。
なんというか、大人の雰囲気漂う魔女みたいな雰囲気の女性だ。
「えぇ。 そろそろ身を固めようかと思って」
「それはそれは…にしても。 成程―――」
品定めするように俺の身体をなめ回すように見つめた彼女はまたもや微笑みかけて来た。
「???」
「あら残念。 ちっとも私に魅かれないなんて」
「ビクトリア? あんたチャームの魔法使ったでしょ?」
「あら~解っちゃった? ごめんなさ~い!」
わざとらしくそう告げた彼女は身体をくねくねさせアリスに謝罪していた。
なんだろう。 異世界って広いな~。
「で? 何の用!? いちいちチャームの魔法を掛けに来たんじゃないんでしょ?」
「うふふ。 ごめんなさい、ちょっと耳よりの情報が手に入ったから。 伝えに来たのよ~そう邪険にしないでよ~」
「五月蠅いわねぇ! さっさと要件だけ話しなさい!」
何だ知り合いか。
彼女の様子からするからに、この女性も古くからの知り合いなのだろう。
「で?何よ?」
「と、その前に~」
パチンッと指を鳴らしたビクトリア。
その瞬間。 この部屋一帯を何かが包み込んだ。
「へぇ~? 態々”魔法結界”を張るなんて。 余程重要な話みたいね?」
「えぇ。 私とアリスちゃんの仲だから伝えておこうかとおもってね? それにアリスちゃん。 なんでかそっちの彼の事も余程信頼してるみたいだし。 彼にも聞いてもらった方が良いわね」
「で? 何よ?」
「単刀直入に言うわね~? 人間の勇者の1人…魔に堕ちそうよ?」
「なっ…」
信じられないという表情をしていたアリスは大口を開けていた。
魔に堕ちる? どういう事だ?
「魔に堕ちる?」
「あら? そっちの彼は知らないみたいね?」
「え、えぇ。 そう言えば説明をしていなかったわ」
「???」
「隠語みたいなもんよ。 魔に堕ちるってのは魔王に下るという事…つまり」
「成程」
それだけで十分理解が出来た。
まさか異世界の勇者様が魔王に下ろうとは…世も末だな。
「で? 現状は?」
「残念ながらそれ以上の情報はないわ。 なにせ”あの”人間の国なんですもの。 私達亜人が踏み込めない部分が多すぎるわ。 それにこれは友人故の親切な言葉よ? アルメイアちゃんを引き抜きなさい―――じゃないと、後悔するわよ?」
彼女の表情は真剣そのものだった。
しかし―――
「残念だけど、それは出来ないでしょうね。 なんせあの頑固騎士様だから…」
「よねぇ~知ってた! こっちもいくつか手を打ってあるけど、正直それでどうにかなるとも思っていないわ。 なんせ相手は腐っても国と異世界の勇者様よ? リスクが大きすぎる」
「そうね。 ありがとう、ビクトリア。 だけどそれは心配ないわ!」
「へ?」
誇らしげな表情で胸を張ったアリスは俺の方を見るや否や、ビシッと指差し―――
「なんせ私達には、こいつって言う化け物がいるから!」
グィ。
「………」
「あだだだだだだ!! 何すんのよ! こら! いだだだだだ!!」
なんとなく癪に障ったので指を掴んだ俺は軽く捻った。
「あの~私。 真剣な話をしてるんだけど~? こう見えてかなり真剣なんですけど~?」
「ご、ごめん! ふざけてるんじゃなくてね!? こいつ―――あだだだだだ!! こら! いい加減やめなさいって! 謝るから! っていうかどんな力してんのよあんた! あだだだ!! 折れる! 折れる!!」
「全く―――何を」
その時である。
「い、いけません! まだビクトリア様が!」
「えぇい、しつこい! いいから合わせろ! その用心棒と言う男に!!」
バタン!
目の前の扉が開くと同時に、銀髪の狼風の男が俺をギッと睨んだ。
牙を剥きだしにした男は今にも飛び掛かって来そうな勢いだ。
「あら? フェンリルじゃな? どうしたの~?」
「お前か? ビクトリア…俺はなぁ? まだ納得してないぞ?」
「ほんとっ。 しつこいわよ? 貴方?」
うわ~ねちっこ~い等と文句を言いながらビクトリアは彼を煽っていた。
が、そんな言葉もお構いなしに話しを進める。
「アリス! なんでだ! なんで俺じゃ駄目なんだ! 俺には地位も名誉も力もある! なんでそんな男なんだ! 俺じゃいけない理由はなんだ!?」
「ん~私さ? 犬…好きじゃないのよね」
「プププ…ざまぁ~」
バッサリと一刀両断された男は怒りを露わにする。
おい、そんなに煽るなよ? こっちを見てるぞ?
「――――っただろ」
「ん?」
「ん~?」
「俺はお前を手に入れる為になら! 何だってするってなぁ! うがぁぁぁぁぁ!!」
「「ちょ、ちょっと!?」」
『警告。 艦長に対する敵意を検出。 来ます――』
目の前の男の服は破け、全身毛むくじゃらの狼と化していた。
まさか…まさか彼って…人狼ってやつかい!?




