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12.過去の重荷

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よろしくお願いいたします!

「どう思う? ってそんな事を聞いても仕方ないか」

『はい。 艦長と我らは一心同体。 艦長の思いのままに――』


未だかつて、ここまで悩んだことがあっただろうか?

それ程までに俺はガラにも無く思いふけっていた。


「なにもない、だからこそどうしたらいいのか解らねぇや」


目的も使命も無い。

何もかもから解放された俺は本当の意味で自由の身だ。


『今一歩踏み出せない。 という事でしょうか?』

「かもしれないな。 あいつは言ってたろ? いつか俺の力が必要になると…けどなぁ~。 なんというか、こう~今一歩踏み出す為の材料の足りないんだ」


敵を多く作り過ぎたアリスの命が危険なのも解る。

俺と言う抑止力を欲する意味を解る。

国を守りたいと言う気持ちも十分伝わって来た。

が―――それ以上に気乗りしない自分が居たのだ。


かもしれない――と発言したが、俺自身…いいや。

きっとアルジュナの奴も本当は解っているんだろう。

俺とアルジュナはあいつ(アリス)が苦手だ。

――だったと言うべきか? アリスが悪いんじゃない、これは俺達の気持ちの問題だ。


「そうじゃないって頭の中では理解してるんだけどな?」

『……………』

「お? アルジュナ、お前も今回は流石に堪えてるか?」

『そうですね。 感情が存在しているからでしょうか? やはり、切り捨てられない過去もあります―――』

「そうだな。 アリスが悪いんじゃない。 きっとこれは俺達が背負ってきたものの重さなんだろうな?」

『――――えぇ。 やはり―――』


彼女が背負うには荷が重い。

だからこそ俺達は決めた、今回の話は断る事にしようと。

だが―――


「背負うわよ? あんた達の重荷も。 だってそれは本当は私が背負うものだった…全部全部」


まるで俺達の話を聞いていたかのような物言いをするアリスは寝間着姿で俺達の背後に立っていた。


「おま、どうして―――」

『ランスロット…あなたですね? 私の通信を傍受出来るのは、貴方位のものです。 まさか――ここまでするとは、この行動の意味が解っているのですか?』

『申し訳ございません、艦長…アルジュナ様。 ですが、これだけは言わせて頂きたい! アリスさんに協力するべきだと。 今までの我々は破壊しかしてこなった。 だからこそ…守る戦いをするべきだと思うのです。 この国の民の笑顔を――国を守る為に。 私達は戦いたい!! そうだろう!?』

『『『『『あぁ!』』』』』』


通信に割り込んで来た声を聴き、俺はため息を零した。

まさかこいつらが俺達に逆らってくるとは、どういう風の吹き回しだ?


「守る戦いか。 だが? こいつに俺達の重荷を背負えると思うのか? ―――現実から逃げていたこいつに!」


俺は声を荒げアリスを力強く指差した。

これは本音だ。 

俺達が死に物狂いで戦っていた時も、残酷な現実から目を反らしていた人間だ。

もっとこいつが早く受け止めていれば、行動していれば…もう少しマシな未来だったのかもしれない。

そう、俺とアルジュナは未だに”あの時の事”を酷く後悔している。


だからこそ、俺達は今一歩踏み込めないでいた。


「………わた、私は――」

「大丈夫だ。 アリスなら。 なんせオレと――」

「私も居る」


そっとアリスの背中を支えたアルメイアとイルダは俺をジッと見つめていた。


「………」


無言で3人を睨み付ける。


「うっ…」

「ははは、やべぇ…」

「あぁ…」


大いなる力には大いなる代償が伴う。 なんて事をアニメか何かで聞いた気がするが、まさにそれだ。

お前達の今、強大な力を得ようとしている。


「リュウジ聞いて」

「……」

「私はこの国を守る為に、貴方の力が…ううん。 貴方が欲しい! 私は悪巧みする奴らをけちょんけちょんにやっつけられる位の力欲しいの! この国住まう者達の笑顔を守る為に! だってここは私の国よ!? 誰にも汚されたくないわ! だから、だから力を貸して!! 断っても無駄よ!? 何回でも、何度でも、言いまくってやるんだから! あんたが折れるまで! だから――」

「お、おい!? アリス!?」

「な、何を!?」


両手と膝を付き、頭を下げたアリスは俺に土下座していた。

以前の彼女なら考えられない行動だ。 

それに―――


「はぁ、しゃあねぇな―――」

「全く。 アリスと言う奴は…」

「「頼む!!」」


アルメイアとイルダも同様に土下座した。

更には―――


「そうだね。 君を今捕まえておかないと、逃げられそうだ? 僕からもお願いするよ」

「えぇ。 娘の為に一肌脱ごうかしら?」


気付けばアリスの両親まで登場し、全員が俺に土下座しているではないか。


「はぁ、これだったら俺が悪者みたいじゃねぇか?」

『全くです。 で? どうされますか?』

「どうも何も…これじゃ~なぁ?」

 

彼女らはきっと、認めるまで一生この状態だろう。

下手すれば何日間もこの状態が続きチキンレースが始まる位だ。


「わかったよ。 協力する――――」

「「「「「!!!」」」」」

「だが、タダでは駄目だ。 ちゃんと対価を支払ってもらうぜ? そうだな、金でいいか」

『えぇ。 そうですね』

「ほ、本当に!?」


顔を上げたアリスは心底嬉しそうな表情をしていた。

そこまで期待されても、何も出ないぞ?


「あぁ。 それとなんだ? 悪かったよ。 あの怒鳴った事」

「ううん。 だって間違いってないもの、リュウジはいつも正しかった。 けど…私が弱かったの…逃げて逃げて…現実から目を反らしてた。 だから―――」

「別に本気で怨んじゃいない。 ただ、俺が自分自身を許せなかっただけだ。 あの時、俺が死んでりゃ――多くの人―――」

「言わないで!!!」


力強く手を握ったアリスは泣きそうな顔でそう告げた。


「死んでたらとか言わないで。 お願いだから…あんたが居たから、あんたが励ましてくれたから。 今の私があるの。 私の大切な人なんだから…そんな事二度と言わないで」

「………お前な? それをこんな大勢の前で良く言えるな?」


冗談交じりにそう言った俺に微笑みかけたアリスはこう告げる。


「そりゃ、あんたが大好きだから!」

「「「「ヒュ~ヒュ~!!!」」」」

「やけるねぇ~!! ヒュ~!!」

「お、お、お幸せに!」

「初夜はいまからにするかい!?」

「まぁまぁ! 孫の顔が!」


と騒ぎ始める始末。


「やっぱ断ろっかな」

『えぇ、同感です』

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