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11.恵まれた者

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よろしくお願いいたします!

「いやはや! こうしてお目にかかれるとは! 光栄だよ! リュウジ君! 私はアリスの父、アグナ・ブランヒルデ。 そしてこっちが妻のアイリス・ブランヒルデだ! よろしく!」

「よろしくお願い致します。 リュウジさん?」


またもや両手を取られた。

いや、握手って普通片手でするものだろ? 

なんで両方を取られているんだ?

あの3人はというと、まだ話し合いがあるとかなんとかで別の部屋に移った。

結果――こうなった訳だ。


「ど、どうも。 リュウジ・アクツです…」

「気軽にアグナと呼んでくれたまえよ! リュウジ君! 話は娘から伺っているよ、とうとうあの子は会えたのだな? 君に」


等と俺に言った、金髪イケメンの真っ白なスーツを着た男性。

どうみても20代前半位の容姿だ。

流石はエルフと言うべきか…長命なだけはある。


「そう身構えないでください? なにも取って食おう等とは思っておりません。 あの子が、アリスが思い焦がれた人なのです。 長い、長い間…その方にあって少し興奮しているだけです」


母親の方もアリスと殆ど容姿が変わらない位には若く見える。

白いドレスに身を包み、ニコッと微笑む彼女の顔を見ると何故か気まずい。


それから2時間程。

2人の質問攻めに頭を抱える事になったのは言うまでもない。

というか、あのやろう…1から10まで全て包み隠さず話してるじゃねぇか!

幾ら信用に足るからとは言え、人のプライバシーを侵害しすぎだ。

後でとっちめてやるとするか。





―――――――――――――――――――



「ふぅ~やっと終わったぜ。 よくやるよな~アリスの奴。 正直オレにはマネ出来ねぇぜ」

「そうだな。 しかし、そういう所が彼女の魅力でもある。 故に見合い話も後を絶たないんだろう」

「だな」


そして何故か俺に集まる視線。


「おい、2人とも? 俺は部屋を移動した気がするんだが? 何故お前達の顔が見えるんだろうな?」

「え? そんなの決まってんだろ? リュウジと話をする為だ。 なぁ?」

「そ、その通りです!」


全く。 こんな事ならすぐにでも帰るんだったな。

だが、両親といいこいつらといい、なんでこうも世話焼きなのか。

俺的には放って置いてもらいたいんだがな?


「はぁ…あんた達といい。 あの両親といい。 悪い奴じゃないってのは理解しているが、警戒の1つや2つ位はした方がいいと思うぞ?」

「警戒…ねぇ? そういわれてもなぁ? あのアリスがあれだけ信頼を置いてるんだ。 逆に気になっちまってさぁ?」

「そうだな。 知っていますか、リュウジさん? アリスの奴、リュウジさんの時はあんな感じですが…他の男性が絡むとかなり冷たくなるんですよ?」

「冷たく?」

「冷たいっていうか、棘があるっていうか?」


なんだそれ。 

そんな話、聞いたことも無いぞ?

いや…確かに知り合って最初の頃はそんな感じが―――

ん~曖昧だ。 あの時は俺も色々と必死だったからな、そんな記憶すら残っていないらしい。


「別名”鉄壁の姫”アリスがあんな態度を取るのは、オレらか家族…そんなもんなんだぜ?」

「まぁ、昔から期待以上の成果を果たす彼女を見てか…惚れる者も多くてですね。 おまけにあの容姿ですし…」

「昔はペチャパイだったのにな…」

「「え?」」


ボソッと呟いた俺の言葉に反応を示す2人。

ん? なんだこの反応は?

そこで俺は色々察する。

もしかして、俺の話は他人して? 自分の話は何もしていないのでは―――と。


「2人とも。 この話、詳しく聞きたくないか?」

「「コクコク!!」」


首を縦に振る2人を見て俺はニヤッと微笑む。

ふふふふ…ふははははは! 

情報量はアリスに劣るが、奴が話していないのであれば話しは別!

さぁ。 復讐タイムだ!!!



夕食時―――――

顔を真っ赤にさせ、頬を膨れさせたアリスがずっと俺を睨み付けていた。


「ははははは! だはははははは! ペチャパイ! そうかそうか! アリスは胸無しだったのか!! あははははは!!」


フォーク片手にバンバンと机を叩くイルダ。


「ど、道理で胸を強調する服ばかりを選んでる訳だ。 くくくく…くくっ…おまけに、身長も小さかったとか…? ぐぐっ駄目だ! 全く想像出来ん筈なんだが! 筈なんだが! 目に浮かぶ!! はははは!」

「………」


ついつい笑い声に釣られそうになった俺は全力で堪えながら、無言で出された肉を頬張っていた。


「あの~食事中なんですけど? そんな話しないでもらえますかー? というか、リュウジさん? 何処までお話になったんでしょうか? リュウジさ~ん?」


ひたすら無視を決め込む俺は料理を楽しむ。


「まぁまぁ! 今はほら! 胸があるだろう!? いいじゃないか! アイリスの様に立派な胸が!! 見て見ろ、この豊満な果実を! エルフは巨乳に限る!! 貧乳派閥に負けてなるものか!! 魅力的だよ、アイリス!」

「まぁ♪ あなたったら♪ お上手なんだから♪」

「そこぉ!! イチャイチャするなぁぁ!!」

「いいじゃねぇか、仲睦まじ気で。 なぁ、アルメイア?」

「全くだ。 アリスの食卓は賑やかで落ち着くよ」

「何処がぁ!?」


なんとも騒がしい夕食だが、悪い気はしない。

アリスの表情も昔に比べて随分良くなった気がする。

昔はどうであれ、今は守るべきものがあり…大切な存在はこんなにもいる。

それが今の彼女の原動力なのだろう。


「…ふっ。 騒がしいな」


ひたすらツッコむアリスの姿を見て思わず笑みが零れる。


「ほぇ//?」

「ほぉ?」

「成程」

「ほぅほぅ!」

「あらあら♪」


何故か騒ぎは収まり、全員が俺に注目しているではないか。

ん? アリスよ…赤面する意味とは?

突っ込み過ぎて疲れたのか?


「……何か?」

「「「「「何も~!!」」」」」


再び騒がしくなった食卓。

いや、一体何があったんだよ!?


夜。

大浴場で疲れを癒した俺は改めて感じた。

やっぱり、毎日水浴び程度じゃ疲れは取れない! 帰ったら風呂を作ろう!と。


「ふぅ~…やっぱり風呂は作るべきだったな」

『そうですね。 心なしか艦長の精神に何らかの変化が見られました。 日本人故のソレなのでしょうか?』

「解らん。 なんというか風呂に浸かると、終わった~って感じがするんだよな?」

『ふむ。 リラックス効果があるのですね』

「多分それだ」


城の屋上で城下町を眺める俺はアルジュナとそんな会話を交わしていた。

少ししか目にしていないが、やはりこの国―――


「いい国だ」

『えぇ。 市民達の笑顔が何よりの証拠です。 不思議なものです。 エルフの国と言いながらも街には亜人や人間が入り乱れていました。 それでこの状況を保てるというのは…』

「警備に対しても抜かりはないみたいだしな? 夜もあれだけの人数で徘徊されてちゃ、おちおち悪さも出来ないんだろう」

『なんでもこの国には騎士団とは別に、警備会社なるものが存在しているらしいですよ?』

「警備会社!?」

『えぇ。 月額制で腕利きの冒険者達が運営をしているらしいとの事です』

「成程。 どうりで色んな奴が街を徘徊してる訳か?」


しかし、警備会社とやらも身だしなみには気をつかっているみたいだ。

流石に冒険者風の恰好では無く、統一されたロゴ入りの銀鎧を身に着けている連中が多い。

まぁ…着られてる感満載だけど。


『はい。 おまけに鎧のセキュリティもバッチリであの十字架のロゴには特殊な魔法が施されているらしく、職員で無ければ身に着けられない仕様になっているとの事です』

「相当儲かるんだろな。 そこまで徹底してるって事は」

『かなりの腕利きが集まっていると聞きますしね』

「お~こわ」


しかし、それ故にアリスは敵が多いのだろう。

これだけ豊かな国を見れば、誰だって亡命を希望する筈だ。

なにより…人口も多く経済の周りが尋常じゃない。

需要と共有、職も腐る程ある…寧ろ人手が足りない位だ。


『この国1つで。 自己完結しています。 つまり――それを気にくわない連中がごまんといるのでしょう』


まさに理想郷。 そんな国が目の前には広がっていた。

200年以上に渡り、平和の続く国か…そりゃあいつも必死になる訳だ。


「…………………」


俺は昼間に言われた言葉を思い出し、考えていた。

勇者でも無ければ、国王でもない、ましてや国の一部でもない俺が本当に必要なのだろうかと。

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