10.接触
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あいつにしたら、あるいみ手土産と呼べる品を運び。
俺はエルフの国へやって来た。
身分証など所持していなかったが、俺の恰好を見た兵の1人が顔色を変え、すんなり通してくれた。
そして―――
「ここが我らが女王。 アリス・ブランヒルデ様が居られる、スタイン城です。 只今面会中だと思われますので、暫くこちらでお待ちください! 直ぐに話を通してまいります!」
「あ、あぁ」
兵の男は興奮気味に城の中へ駆けて行った。
「なんだこれ…」
『歓迎されているのでしょうか? ですが――初対面ですよね?』
「いや、初対面だろ普通に?」
俺にそっくりな知り合いでもいるんだろうか?と疑うレベルには様子が変だった。
恰好からしても、ある意味異彩を放っている俺は来る途中までは注目の的だ。
それがどう転べば、この様な扱いになるのか…
「これはこれは! まさか本当に貴方様の方からいらして頂けるとは! お嬢様の言葉に狂いはなかった…という訳ですな?」
いきなり現れた執事風の老人がそう言った。
「これは失礼! 申し遅れました、わたくしはお嬢…アリス・ブランヒルデ様に使える執事。 セバスと申します。 以後お見知りおきを」
「こ、これはどうもご丁寧に――私の名は――ー」
「いえいえ。 存じております。 リュウジ・アクツ様。 ささっこちらへ! 只今お嬢様は面会中にあられますが、今回集まってる方々であれば――問題はないでしょう。 ささっ!」
まさかこいつ!? 超能力者!? なんてことはないだろうが、これは後でアリスを問いただす必要がありそうだ。
とんとん拍子に話は進んで行き、いつの間にか俺はセバスによってある部屋へ通された。
コンコン!
「お嬢様。 緊急で御来客です」
「そっ。 思ったより早かったわね。 いいわ! 通して」
「では、失礼致します。 さぁどうぞ、リュウジ様」
「あ、あぁ」
部屋に入ると何やら仲睦まじく話を交わす3人の女性の姿があった。
1人はアリス。 もう1人は騎士風の女性、更にもう1人は褐色肌の角と尻尾を生やした女性だ。
アリスは俺を見るや否や
「ってあんた! そのままの恰好来たの!? さぞ注目を浴びたでしょう!?」
「おかげさまで」
「ったく。 思い立ったらすぐに行動する所は相変わらずみたいね?」
「っというよりも。 アリス? お前面会中だったんだろ? よかったのか――?」
アリスを挟む様に座った2人を見つめそう告げる。
「問題ないわ。 この子達も居る方が色々と楽だから」
「???」
「さて、まずは自己紹介ね! こっちの疲れ切った顔をしている女騎士の子がアルメイア・コレスニコフ。 彼女は人間の国に仕える王国騎士団長」
「アルメイア・コレスニコフです。 貴方のお話はかねがね! ま、まさか本当にお会いでるとは…どうぞよろしくお願い致します」
「あ、あぁ…」
立ち上がった彼女と握手を交わす。
「そしてこっちが―――イルダ・ドラゴニク。 竜人の国の女王様って奴ね。 まぁ、女王様ってガラでもないけどね?」
「がははは! ちげぇねぇ! 話しはアリスから色々と聞いてるぜ? まぁ、こいつはその変の事…あんたに言ってないみただけどなぁ!? がははは! よろしくぅ!!」
「……」
もう片方の開いた手を強制的に握られた俺は終始無言でアリスを睨み付けた。
時は流れ―――
「なっ…本当に!?」
「イルダ?」
「あぁ。 間違いねぇ、こいつはベルザード本人だ」
全員の目線は俺に注目した。
諸々事情を話した後、手土産でもあるベルザードの頭をアリスに差し出した。
所謂証拠って奴だ。
「ベ、ベルザードと言えば。 あの!?」
「ここ200年に渡り、勇者を何度も滅ぼし。 魔族の中でも悪名高い奴よね?」
「あぁ。 こいつの能力が厄介でな? 魔法が一切通じないんだ…オレも何度も戦った事があるが、こいつの転移の魔法も厄介でな? いい所でいつも逃してた」
「へぇ~」
「「「…………」」」
おっと口が滑った。
無意識に発言した俺の方を凝視する3人。
まるで事の重大さが理解出来るのか?と言わんばかりの目線である。
「そ、それ位の存在でしかないのか…? この方には」
「えぇそうよ。 こいつにとっては取るに足らない存在でしょうね? まぁ、庭を荒らしに来た害虫位の認識なんじゃないかしら?」
ご明察。 よく俺の事を理解している。
「ははは…流石にそれはオレもちびりそうだぜ」
「300の魔族を相手に無傷。 相変わらずあんたはどんな奴なのよ…」
「300じゃない200ちょいだ」
「どっちでも同じよ…」
「で、何故この2人が俺のアレコレを知っているんだ? 詳しく聞かせて貰うとしようか?」
ここからがおれにとっての本題だ。
何故こいつら2人は俺の力を知っていて、更には名前までご存知な意味を教えてもらおう。
―――――――――――――――
「と、いう訳よ…」
「成程。 2人はお前の幼馴染で? こっちの世界へ来る前にもらったという預言書やらによると、俺がこの世界へやって来るのは明白。 おまけに場所まで…更には以前の出来事を全部2人に話した…成程な?」
俺は握り拳を作り、アリスを睨む。
「ま、まぁまぁ! 私も半信半疑で聞いていただけですし! おろしましょう! その拳をおろしましょう! ね?」
「まっ。 オレも正直な所、こいつの与太話かと思ったが、今日…いや。 今確信した! お前は本物だぜ! リュウジ!!」
またもや両手の自由を奪われた俺は深いため息を付いた。
それだけ信用できる者達なんだろうが、そう自慢げに俺の事を話す意味とは?
「はぁ…この2人とあのセバスって執事だけか?」
「……」
ばつの悪そうな顔をしたアリスは恐る恐る、俺の後ろを指差した。
後ろ? 後ろって扉の方だろ?
俺が振り返った瞬間である。
少し開いた窓の隙間から、男性と女性の顔がチラリと見えた。
「「………」」
というか、目が合った。
「あれは?」
「お、お父様とお母様…」
「成程―――お手上げだ」




