97.巨大ワームVSサソリの化け物+白色
「よっと」
奴から距離をとる事にした俺は現在、逃げた筈のアルジュナの隣を並走中である。
というのも…
「な、なんであなたまで逃げて来てるの!? 意味わからないんだけど! 後ろ後ろ!!」
「ふむ。 何か策があるとか?」
『解りません。 こちらにはこの方々が何を考えているのか――』
「まぁ、そうっしょ」
「仕方ない。 私達は負け組、大人しく従うしかない」
等と呑気なやり取りをする2人+1…
『合流ポイントまで、後200m…スティンガーは現在。 合流地点に待機中。 ですが、スティンガーでは火力が足りません。 ですので、換装済みのパーシュパタを現地に待機させております』
「成程。 パーシュパタ…」
え? なんだって?
「お、おい!! おまえ! まさかパーシュパタまで持ってきたのか!? というか、換装!? なんだそれは!!」
そもそもパーシュパタに換装なんてシステムは搭載されていない。
いや、問題なのは換装が必要であるかどうかと言われると、やつにそんなものは必要ない。
何故なら、どんな環境下でも運用が出来る構造になっているからだ。
「換装って必要ない――」
そう発言しようと思った時である。
「え? なに、あれ…」
「……敵ではない、明らかにこちらを待っている…」
『理解不能です。 巨大なサソリでしょうか? どうやらこちらに敵意は無いようですね』
俺達の前方には14mはあろう巨大なサソリが、何か大きな箱を引きずってこちらの到着を今か今かと待ちわびていた。
ちなみに、あの2人はどうやって目の前の景色を確認しているかというと、アルジュナと視覚情報の共有を果たす事で…後ろと前。
どちらの情報も確認できるようになっている。
「グォォォァ!!」
しかし…あともう少しだってのに、あのデカブツめ、どんな移動力をしてやがるんだ!
それはもう恐ろしく早いスピードでこっちへ迫ってくる巨大ワームは大量の雑魚を引き連れてやってくる。
『このままでは追い付かれます。 ですので――』
「あぁ、それしかないわな…」
俺はスティンガーへと通信チャンネルを切り替えると、目の前の奴へ向け指示を出した。
「スティンガー! 先行を頼む! 後ろのデカブツの相手をしてやってくれ」
『はははは!! はいよぉ! どうせ、艦長が猛攻して怒らしでもしたんだろ? ありゃ、相当な怒り具合だぜ? が、あいつは化け物だな…交渉の余地はなさそうだ。 んじゃま。 スティンガー! 輸送コンテナを切り離し!! んでもって! 突撃ぃぃぃ!!』
「「へ??」」
ズガン!!
巨大サソリ事、スティンガーは大きく飛び上がると俺達の頭上を飛び越えていった。
それも…
カチャカチャカチャ!と機械音を上げて、変形しながらだ。
ちらりと隣の2人を見れば、その光景に驚いたのか…馬鹿みたいに大口を開けながら固まっていた。
『スティンガーロボットモード!! いや、これだったら普通だな。 スティンガー!ファイターモード! いや…なんかパクってる感…スティンガー! ええぃ! どっちでもいいわい! のパンチ!!』
ゴン!!
「グギャァァァ!!」
ベラベラと要らぬ事を喋りながら、巨大ワームへ拳を叩きこんだスティンガー。
なるほど。 物理はわりかし奴に効くらしい。
「しゃ、しゃ、喋ってるじゃん!? ロボが喋って!? いや…それよりもさっきまでアレ…サソリじゃなかった?」
「……解らない。 余程、技術が進歩しているのか。 まるで人間の様な話し方…それに、アレは直前まで行動を起こす事は無かった。 だとするならば…彼は、何者?」
『…こちらの情報量ではアレの解析も、そしてこの方々の情報を掴む事は不可能です。 より高度な技術――――いえ、我々よりもはるか先の存在であるのは確かです』
妙に鋭い少女と何かを悟った様なサポートAI。
こうなったらもう、何もごまかしがきかないぞ?と言わんばかりの視線をアルジュナへ送った俺。
全くあいつの思考が読めん。 まさかとは思うが、こいつらをこっち側へ引き込むつもりでいるんじゃないだろうな? おいおい…これ以上増えるのは勘弁だぞ。
ただでさえ色物が多いというのにだな…
『ふむ。 色々とこちらへの意見もある事でしょう。 主様。 ですが、今は――ー』
「解ってるよ。 あいつを排除してからみっちりと! もうそれもうねっとりと詳しい話をお聞きしたいもんだな!!」
『…では。 コンテナのロックを解除致します。 同時にパーシュパタの起動を開始―――及び、換装内容ですが。 防御力向上の為の追加装甲、および砂漠地帯戦闘を想定したブースターの出力調整、新規武装の追加です。 マニュアルは必要ないと判断したので、あとはいつものアドリブでよろしくお願いいたします。』
「アドリブっておまえなぁ…」
丁度そんな話をしていると目の前に放置されたコンテナからは、少し角ばった形に変わってしまったパーシュパタが姿を現した。
ガコン…ガコン…
「ま、またロボットぉぉぉぉ!? マシロ!! またロボットが見えるんだけど! もうこれは夢!? 夢なんじゃない!?」
「また、二足歩行型のロボット…けど妙に動きが雑。 目の前のアレと比べると圧倒的に」
そういいながら目の前を指差すその先には。
『ははは! やるじゃねぇか!! デカブツ!! だが、これでどうだぁぁ! スティンガーナックス!!』
「ギギャァァァ!!」
『へへっ。 再生はしても…痛みは感じるらしいな? だったら付き合ってやるぜぇぇ!!』
ド派手な戦闘が繰り広げられていた。
というのも、自分の倍はある巨大なワームを抱きかかえ背負い投げを繰り出すスティンガ―。
あいつ…アレを相手に遊んでやがるのか。
「けど、流石にあの量の雑魚が群がってきちゃ。 スティンガーでもやべぇかもな、アルジュナ! そっちでパーシュパタのコックピットを展開してくれ。 このままパーシュパタのコックピットに突っ込む! いくら装甲の分厚いスティンガーでも、雑魚がじゃまで真面に戦えてないしな」
『了解。 コックピット解放致します』
カシュン!!
パーシュパタは立ち上がると胸のコックピットを解放した―――したのはいいのだが。
「え? なんだ、あの肩に付いてる2つの十字架は!?」
目の前には見た事のない巨大な十字架が…パーシュパタの肩部へ接続されている事を確認。
しかし、俺はあんな武装を知らないし…見たこともない。
おい、まさか…新装備って…
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