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4話 君の反省文


はぁ....

「ボク」が死んでもう2年程か....


だがボク、いや私はここに居る。

だけど今のボクはあの「ボク」とは似ても似つかないんだ。

親友だろうと、ボクを見ても気づく事は無い。


いや、この「ボク」は私じゃない。

私は全く異なる人間。

ただ心が似ているだけ....


だから忘れよう....

私に親友なんて居ないんだから....


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


学校終わったぁぁ

今日は最悪な一日だったぁぁ


「佐藤。ちょっといいか?」


先生?

急に何のようだ?


「はい....」


先生の手には一枚の用紙があった。

嫌な予感しかしない。


「今日遅刻しただろ?その反省文を書け。全行書けよ。」


全行って!!鬼過ぎる!!

疲れてるって言うのに....

あと、遅刻したのオレのせいじゃないし....

まあ「オレ」のせいって訳じゃ無いけど、オレでは無くてあっちのオレ....

あぁぁ!!もう何も考えたくない!!


「何ボーッとしてんだ?ちゃんと書いて職員室まで持ってこい。いいか!!」


「はい....」


断るなんて事、出来るわけないしな....

ってか何て書けばいいんだ?

「朝起きたら、もう一人の「オレ」が居て遅れました。」とか?

流石にそんな事書いたら、先生にごちゃごちゃ言われてメンタルブレイクしそうだからやめておく。


なら全部嘘を書けって言うのか?

あたかも全部自分が悪いように....


はぁ...もういいや、早く帰りたいし....


適当に書いて、謝って、帰って....

....思ったら帰った後も面倒だわ。


オレは自分の席に座る。

教室にはオレ以外誰もいない。

書くのは面倒だが、気は楽だ。

オレはペンを握って反省文を書き始める。


それっぽい感じに書けばいいか...

真面目に書く気なんて更々ないし。


「君、何をしてるの?」


誰かに声をかけられた。

オレはすぐさま隣を見る。


見た事ない人だ。

隣のクラスの人か?

....もしかしたら同じクラスの人かもしれないが....


...すごく目を合わせてくる

はぁ、オレは人と目を合わせるのが嫌いだって言うのに....

適当な言葉を返して乗り切るか...


「反省文書いてるだけ....」


オレがそう言うと、反省文の内容を確認しに、その女子はオレに近づいて来た。

これは話が長引きそうだ。最悪....


「遅刻したんだ?珍しいね。」


珍しい?

何でこの人はオレの事を知って....


「何故それを知ってる?」


その女子は、顔をさらにオレに近づけて囁いた。


「ボクの事、やっぱり分からないか....」


ボク?

おかしな人だな、急に「ボク」とか言い出しちゃって...

それにしても「やっぱり分からない」って、オレはどこかでこの人に会ったことがあるのか?単にオレが忘れてるだけなのか?


「どこかで会ったことあります?」


「ないよ....今のは忘れていいから。ごめんね、急に変な事言っちゃって。代わりに反省文書くの手伝ってあげる....」


「そんな事しなくても大丈夫。」


オレは食い気味に断った。


一人で書いた方が作業効率がいいに決まってる。オレの場合はな。

まあ、これでこの人も帰ってくれるだろう。


「君は変わったな....そんな事言わずに手伝うから。」


一瞬口調が変わったような...

やっぱり変だぞこの人。


「どうせ全行書けって言われたんでしょ?私は文章書くの得意だから、私の言う通りに書いて。」


「えっ?いや、それは申し訳ない...」


「別にいいの。そもそも真面目に書こうなんて思ってなかったでしょ君は。」


「それは...そうです....」


心の内を見破られてる...

だが、意外といい人そうだ。

少しおかしな所はあるが、優しくて、なんか頼り甲斐がある。

まるであの親友のようだ。


あと可愛いし.....いやいやオレはそう言うの興味ないから!!


「ねぇ?ちょっと聞いてるの?それじゃあいつまで経っても終わらないよ?」


「ごめんなさい。」


オレは何を考えてるんだ!!

せっかく手伝ってくれてるのに、変な事を考えるな!!


こうしてオレは言われた事を用紙に書き留めた。

文章を読み返すと、丁寧でちゃんと反省してる感じが出てる。

この人すごいなぁ。


「ありがとう。おかげ様で反省文書けたよ。それにしてもよくこんな良い文章を思いつくな。」


「フフッ、喜んでもらえて何よりだわ。」


「それじゃあ、オレは職員室まで提出に行ってくる。本当にありがとな。」


「うん。それじゃあね、佐藤くん。」


どうしてオレの名前を?...

やっぱり知り合いなのか?

それなら名前を聞かないと!!


「ちょっと待って!!」


「何?」


「名前を聞き忘れてたから...その...」


「私は蒼井(あおい) (しずく)。よろしくね。それじゃあ。」


蒼井だって?!

あの親友の名も、蒼井だった....

いや、そんな訳はない。

だってアイツ男だし...それに、もう死んだのだから。

ただの偶然だ....そう、ただの偶然....


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


はぁはぁ....

この科学者、本当に危ないやつ....

いきなりこんな辱めを受けようとは....

なんかウズウズが治らないし...


「もうやめてくれ....これ以上はもう耐えられない....」


「まあ途中経過は書けましたし、もうこの辺にしときますね。」


オレは全身の力を抜き、地面に倒れこんだ。

息が荒い。死にそう....


「どうです?中々良かったでしょ?感度も良い見たいですし。」


「もう...いや...だ」


「完全に疲れ切ってますね....ちょっとやり過ぎたかしら...」


((ガチャッ


玄関のドアが開いた。

どうやらオレが帰ってきたようだ。

これでやっと救われる....


((パタッ...


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


やっと帰宅できた....

今日は本当に長い一日だった...


やっと休むことができると思ったオレは、今まで自分を縛っていた縄を解き、玄関の段差にもたれかかった。


だが何かおかしい。


「あれっ?この靴は誰のだ?」


それからふと前を見ると、あの悪夢に出てきた科学者が目の前に居るのが見えた。


「えっ、なんで?」


「どうも〜」


女科学者はオレに軽快に手を振る。

オレは幻覚でも見てるのかと思った。


だが、その奥でもう一人の「オレ」が倒れているのが見えた。


幻覚でも、夢でもない。

それを見たオレはその事を直ぐに理解した。


「お前。一体「オレ」に何をした?!」


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