3話 女の「オレ」とマッドサイエンティスト
「ーー」で二人の「オレ」の目線が代わります。
「はぁ...はぁ...はぁ...」
やっと学校に着いた....
今何時だ?
オレは時計を見る。
案の定、一時間目が始まっていた...
クソっ!!
今日ほど最悪な日はない!!
元はと言えば、あの狂った女科学者のせい....
...だよな。
今になって考えるが、あの科学者は実在する人物なのか?
やっぱり夢じゃ....それもないか。
何にせよ、「オレ」が二人になったのは事実だ。
アイツが嘘をついてるようには思えなかったし....驚き方とか、仕草とか、言葉遣いも外見以外はオレにそっくりだった。
オレって自分の事よく分かってるよな....
自分で言うのもなんだが....
はぁ...どうせ遅刻だし、ゆっくり行こ....
((ガラガラガラ
先生こっち見てない。
オレの席は後ろだからソッと....
「遅かったじゃないか佐藤。早く座れ。」
(クラスメイト)「アハハハハハww」
バレた.....
ほんと最悪だ。
この笑い声。嫌だな....
クラスの奴ら全員に笑われて....
はぁ、死にたい....
アイツはいいな....
いい思いばかりして....
こっちは本当に辛いって言うのに....
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「オレ」....今頃先生に叱られてんだろうな。
なんか、申し訳ない気がする...
オレだけいい思いばかりして、これはこれで「オレ」の為になんてなってないよな。
まあ、オレも色々と最悪ではあるが....
あの女科学者。オレを実験台にしただけなんだろう。
こんな事して....はぁ、ほんとに最悪。
((ピンポーン
インターホンが鳴った。
誰か来たみたいだ。
だが、今のオレが出るのはマズイ。
オレは確かに「オレ」だが、この体は全くの別人だからな....
服装も下着だし....居留守を使うしかない...
((コンコンコン
まだ居るのか....
この人には悪いが、早く立ち去ってほしい。
「あれ?生体反応はあるんだけどなぁ....何か飼ってるのかな....」
ん?この声、聞き覚えが....
「キーピックで開けてみようかな....」
オレは急いで玄関のドアの覗き穴を見た。
あぐっ!!
やっぱりあの狂った科学者じゃねぇか!!
((タッタッタ!!
「うわっ!!なんか近づいてきてる!?」
((ダンっ!!
「はぁはぁ、やっぱりお前か!!この野郎!!」
「ああ。やっぱり居たんだね。」
「やっぱり居たんだね。じゃねぇーよ!!これ!!この体!!どうしてくれんだ!!」
オレは募りに募った怒りをこの女に向かって爆発させた。
戻してもらえる確証は無いが、矛先を向けれるのはこの女しか居ないからな。
「満足してもらえました?」
「してるように見えるか?!」
「えっ?シてないの!?」
「はあっ?!」
((ドンッ!!タタッ
「えっ!?ちょっと!!」
オレは急いで女科学者を家の中へ押し込んだ。
こんな会話、近所の人に聞かれたら変な目線で「何あのヤバイ人」見たいに思われるからだ。
それにしてもこの女科学者。頭は相当良いのだろうが、人として大事な部分が抜け落ちていると言うか....この人は「ヤバイ人」で間違いない....
そんなことより、本当にコイツは誰なんだ?
怖いし、気持ち悪いし、美人だし....あれ?なんか風向き変わったような....いやいや今はそんな事気にしてる場合じゃ無いっ!!
「って言うか!!お前は何者なんだ?!」
「私は見ての通り科学者。シフノと呼んでくれて結構よっ☆」
なんだこのテンション。
美人でも流石に引くわ....
この人、本当に無神経で気楽そうだな。あの無邪気な笑顔がそう教えてくれる....
今のオレの事なんか、気にも留めてないだろう。
「お前は気楽そうで幸せだな...オレは今、これからどうなるのかと言う不安で、頭が一杯だと言うのに...」
「ふむふむ...メンタル面で支障が出ていると。」
シフノとか言う女科学者はメモをし出した。
やっぱりこいつ、人の思いなんて簡単に踏み躙る奴なんだな....
「それで、自分の姿は鏡で見ました?」
....見てないな。
状況が状況でまだ見てなかった。
そういや、今のオレってどんなんだろ。
たぶん本来のオレの姿とは似ても似つかないんだろうな....
さっきの「オレ」の反応を見る限り、そうなんだろう。
「見ていないと....」
またメモか、ほんとに自分の事ばっかだなコイツ...
てゆうか、何も言ってないのになんで分かるんだ?
「ああ、言い忘れてましたね。実は私、自分で開発した[人の心を読める装置]を持っているので、喋らなくても色々分かっちゃうんですよ。」
「えっ?!ええっ!?そんな技術、存在するのか?!」
「私は世界一の科学者ですから。」
よく自分で言う!!
「すいませんね。」
「しまった...」
あれ?まてよ...よく考えたら、オレの心、全て読まれてたって事だよな。
えっ、じゃあさっき言った「気持ち悪い」とか「怖い」とか「美人」とか色々聞かれてたって事か?!
「そうですよ。」
((ガーン...
「ああ!!そんなに落ち込まないで下さい!!私、結構美人とか言われて嬉しいんですよ!!」
「死にたい...」
「ダメっ!!まだ研究は始まったに過ぎないんですから!!」
「そっ..それはどう言う事だ?!」
研究は始まったに過ぎない?
コイツ、何が目的で....
「私の事はコイツではなくシフノと呼んでくれると嬉しいですね。目的は性別が変わると、心はどの様に変わるか。私はそれが知りたくて...」
「なぜ...何故オレなんだ。そんな事して何の意味がある?!」
「意味は無いですよ。ただの私の好奇心。科学者として知りたいだけです。」
「狂ってる...本当にアンタは....本当にアンタは!!正真正銘のマッドサイエンティストだ!!」
「ええ、私は狂ってますよ。自分の事は自分がよく分かってますから。だけど止められない、抑えられない。心がウズウズして堪らない!!」
ネジが外れてる。
それしか言い様がない。
「オレの為の研究」
あれは嘘だったのか...
少しでも希望を見たオレは...バカだったのか?
「いいえ、それは君次第で変わりますね。君を可愛くしたのはその為ですし...」
可愛くした?
コイツ、オレをどんな風に変えたんだ?
「だからコイツはやめて下さい!!私はシフノです!!」
「どうでもいいだろ...そんな事...」
「(本当に暗いなこの人は...まあそれだからやり甲斐があるわけだけど。)」
「それで、オレ次第で変わるとは?」
「もう一人の君を癒してあげるのです。」
「はぁ?」
「君をよく知っているのは君だけでしょ?良い話し相手にもなりますし、その体を利用すれば簡単に癒すことが可能ですし。」
「どう言う意味だ?!」
「どうって、気持ちy」
「ストップ!!....もういい。アンタには恥じらいがないみたいだから。」
「って、まだ自分の体を確認してないんですか?」
「....興味ないし。」
あっ、嫌な予感。
オレはそう言うの嫌いだから構わないで欲しい....
「研究の途中経過を書かないといけませんし....色々確認しません?」
「....嫌だといったら?」
「....そんな体で、抵抗できるんですか?」
あっ、もう手遅れだ....
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
今頃何してるかな?「オレ」は
自由奔放にゲームでもして遊んでるかな?
まさか、あんなことやこんなことを....
あぁぁダメダメ!!オレは何を考えてるんだ....
確かにあの姿は可愛いとは思うが、「オレ」がいきなりそんなことをする訳が....
「はい佐藤。この答えは?」
えっ?
みんなの目線がオレに集まった。
何も聞いてないし、まず問題なんだった?
あぁぁぁ!!!最悪だぁぁぁぁ!!
向こうの「オレ」!!
オレと代わってくれ!!
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「にゃぁぁぁ!!」
「あら、可愛い....」
「反応は意外と猫みたい...と。」
何メモってんだコイツ!!
うっ....
この変態科学者。容赦なく色んな所を触って....
「あっ...んっ...」
「可愛いよ...佐藤くんだっけ?あっ、今は佐藤ちゃんか。」
「どうでもいい...あぁっ」
向こうの「オレ」!!
頼むからオレと代わってくれぇぇ!!