第六話 歩く姿は百合の花
私はナイフを握った。
標的は隙を見せている。
いけるか?と自問する。練習した通りにやればいい。わら人形に向かってやった練習と同じだ。
いける。
私は気配を消した。息を止めて空気の流れさえも消す。自然体で、わら人形を刺すぐらいの気軽さでやらねば気づかれてしまう。
人とて動物。自分に向けられた敵意を察することぐらいできる。
一歩、二歩、ドスッと鈍い音が聞こえた。
目を背けてはいけない。耳も塞いではいけない。
確実に心臓をやったはずだ。
ぬちょりとした感触がする。ゆっくりとナイフを抜く。血が流れ出てきた。
アリア─標的は白目を剥いてうつ伏せになって倒れた。
「ふうっ…っはあ…はぅ…ふう」
人を殺した。
平和な日本で生まれたら体験することができないことである。分かってはいたが、これが私の仕事なのだ。私は人を殺した。
「あ、ああそうだ仕事」
まだ温かい死体に軽く手を合わせてから家の中を荒らす。強盗が入ってきて運悪く死んでしまったように見せるためだ。
服も床にぶちまける。
「うぇ」
生活臭がする。吐きそうだ。
自分が今刺したのは生きていて普通に生活をしていた人間なんだと改めて実感させられる。
あらかた荒らし終えたところで裏口から抜け出す。
後ろから悲鳴が聞こえた。
しばらく走り続けて予め合流地点にしていた場所で迎えの馬車が待っていた。
馬車の中で何度も手を開いたり閉じたりしていた。
「まだ感触が残ってる」
肉を裂く音、ナイフを通じて伝わってきた鼓動
「ぅえ」
また吐きそうになった。
馬車はそのまま家へと向かわずにこの辺を治めている貴族のレミントン家へと向かった。
「この度は大義であった。今後もよろしく頼むと両親にも伝えておけ」
「はっ」
私の前にいるこの偉そうな男はルイス・レミントン。私の家が仕えている貴族である。
今回の依頼もルイスの命令である。暗殺者というのは普通、フリーであることが多いが貴族や王に仕えるものもいる。給料が支払われるので安定しているのだ。
私は家に帰った。
一刻も早くこの嫌な感触を落としたい。
川で軽く体を清めた後、父から「今日は休め」と言われた。言われなくても今日はもう寝たい。
「お茶とお菓子よ」
私は言葉が出なかった。なぜ死んだはずのアリア・バーミストレアがいるのだ?
「う…うわああああああああああああああ」
いつの間にか握っていたナイフで突き刺した。
「はあハァハァハァ…はっ!?」
「お茶とお菓子よ」
奥からもう一人アリア・バーミストレアが出てきた。
「なんだよ、なんなんだよ」
私は外へ逃げ出そうとした。外への戸を開けると
「お茶とお菓子よ」
「ひっ…」
戸の外は家の中だった。
「ごめんなさいごめんなさいごめんないごめんなさいごめんなさいごめんないごめんなさいごめんなさいごめんないごめんなさいごめんなさいごめんないごめんなさいごめんなさいごめんないごめんなさいごめんなさいごめんない」
プロットとか下書きとか用意してないのでいつ終わるかわかりません。




