5話
「東、そっちに一匹行ったぞ。」
「わかった、まかせろ。」
あれから森でゴブリンを狩り続けていた。
ゴブリンの群れを見つけては奇襲をしかけ、敵が反撃し始めたところで退却するふりをしてゴブリンを誘導し設置しておいた罠にかける。
罠にかかったゴブリンを確実に殺す。
二人が安全に殺しに慣れさせられるうえに、レベルが上がり、お金が稼げる、まさに一石二鳥どころか一石三鳥だった。
ただ何故かこの話をしたとき二人から白い目を向けられた。わけがわからない。
そして二十匹ぐらい狩ったときに東が唐突に聞いてきた。
「なぁ、あと何匹ぐらい狩ればいいんだ。」
「今二十匹ぐらい狩ったから………あと四十匹ぐらいかな。」
「はぁあああ!流石に四十匹はきついって!何でそんなに狩る必要があるんだよ?」
「ゴブリンの肉とかを売ったときのこと覚えてないの?三匹分売って銅貨45枚なんだから一匹あたり15枚、宿泊費が銀貨7枚銅貨20枚、つまり宿泊費だけでゴブリン四十八匹狩る必要がある。」
「それならあと二十匹ぐらいでいいだろ。」
「それだと手元に残らないだろ。」
「それなら明日も狩りにこればいいじゃん。」
「お前それ本気で言ってんの?」
「ああ、本気だけど?」
東が何かおかしいのかという表情をしている。
「東、お前って昔っからそうだよな。行き当たりばったりと言うか、向こう見ずと言うか、無鉄砲と言うか、考えなしと言うか、今の状況を全く理解して無いよな。」
「涼、お前なんかこっちにきてから口悪くなってないか。」
「元からだよ。今は言う必要があるから言ってるだけで、向こうに居た時は態々言う必要がなかったから言わなかっただけだよ。」
「そっか、でっなんで十二匹も余計に狩ろうとしてるんだ?」
「情報収集する時間が欲しいからだよ。数日分の稼ぎが余分にあれば情報収集に時間を割けるだろ、あとで知らなかったで済まなくなかったら困るんだよ、そうならない為にも早めに情報が欲しいんだ。」
「それもそうか。俺は先のことを考えて動くのは得意じゃないから、涼が一緒に居てくれて助かるぜ。」
「はいはい、それよりこれ以上話してると舞に怒られるから持ち場に戻れ。」
東も舞に怒られるのは避けたいらしくすぐに持ち場に戻って行った。
やっと六十匹狩り終わった………
うん、流石に目標が高すぎたかもしれない、狩り始めてもう2時間と少し経過していた。
いや、2時間ぐらいで六十匹も狩ったなんて普通に考えたらすごいことみたいだ。
三人パーティでの普通はゴブリンだけを相手するにしても1時間に二十匹狩れれば良い方らしい。
そう言えば今回のことでかなりレベルが上がった。
僕がLv.9に、東がLv.32に流石は『天才肌』レベルの上り方が尋常じゃない、そして舞がLv.11に僕よりレベルが上がっているのは舞に優先的にラストアタックを譲ったからだ。
経験値の分配はラストアタックした人が全体の半分を貰い残りの半分をパーティ全員で均等に分けられるみたいだ。
つまり三人パーティだと、ラストアタックした人が2/3、残りの二人が1/6ずつもらえる。
ここらへんの設定も本当にゲームっぽく感じる。
ゴブリンの買取金額は銀貨9枚になった。
これで宿泊費などは何とかなる。
宿に来ると前回対応してくれた四十代ぐらいの女性が声をかけてきた。
「いらっしゃいませ、お金は用意できたようですね。」
「ええ、さっきは冷やかしみたいになってしまい、すいませんでした。」
「別に構いませんよ。それで一人部屋と二人部屋とで銀貨7枚、銅貨20枚になります。」
銀貨を8枚出すと銅貨を80枚のおつりが返ってきた。
どうやらこの宿ではチップは受け取らないようだ。
店員に案内され部屋に入る。
思っていたよりも部屋がきれいだった。
少しして舞が僕達の部屋に来た。