4話
朝になり二人は見張りをしなかったことを謝ってきた。
二人には貸し一つということで納得してもらい町に入ることにした。
町に入るには鑑定石での検査と通行税の支払いが必要でありそこで問題がある場合は町に入ることはできない。
鑑定石と言うのは読んで字のごとく鑑定する石だ、ただしここで使われている物は名前、レベル、種族、状態、の四項目しか見ることができない。
これよりも高性能な鑑定石は町にはなく国に数個あるだけらしい。
鑑定は問題なく済んだ(レベルが低いことで不信感を与えたようだが気にしない)のだが通行税を払う金が無い、冒険者ならば通行税を払わなくてもいいらしいが、僕達は冒険者ではないので通行税を払わなければいけない、そこで門番にゴブリンの耳と皮、生肉を代わりに売ってもらい、そこから通行税を引いてもらうことになった。
この世界の硬貨は銅貨、銀貨、金貨、白金貨、の四種類があり、
銅貨100枚=銀貨1枚、銀貨10枚=金貨1枚、金貨100枚=白金貨1枚で交換できる
売った物から通行税(一人銅貨10枚)を引くと手元に残ったのは銅貨15枚だった、如何やら綺麗に解体されていたので少し高く買い取ってもらえたようだ。
時間が掛かるとはいえ自動で解体できるうえにそれが全て綺麗に解体できるシステムウィンドウにはこれからもたくさんお世話になりそうだ。
町に入るとそれなりに活気づいており二人はどんな商品が並んでいるのか気になっていたが、それよりも先に冒険者ギルドに行き冒険者登録をすることにした。
ギルドの場所は門番に聞いておいたので迷うことなく辿り着くことができた。
「ここが冒険者ギルドか、異世界物の作品だとこういう場面だと先輩冒険者に絡まれたりするよな。」
「もし本当に絡まれたりしたら東のせいだからね。」
二人がくだらない話しをしていたが気にせずに扉を開ける。
するとギルド内にいる人たちがこちらを測るように横目で見ていた。
どうやら絡んできそうにないので、周囲の目を気にせずに受付のところまで行くと受付嬢が対応してくれた。
「おはようございます。どういった御用件でしょうか。」
「おはようございます。冒険者登録をお願いしたいんですけど。」
「冒険者登録ですね、こちらの用紙に必要事項を記入してください。」
渡された用紙には名前、年齢、種族、使用武器、得意スキル、の項目があったが後ろの二つは二人の分も空欄で出しておいた。
受付嬢は用紙を見ると安堵していた、如何やらスキル等の情報を秘密にできているかどうか心配していたみたいだ。
僕はこの世界の常識はもっているのでこのぐらいのことは理解している。
因みに冒険者にはランクと言う制度があり下からF、E、D、C、B、A、S、SS、SSSとなっている、ランクは余程のことがない限りFから始まる。
「それではこれが冒険者カードになります。身分証明にもなりますのでなくさないようにしてくださいね。」
カードを受け取りながら宿について聞いてみる。
すると幾つかの宿を教えてもらえたので依頼が決まり次第宿を決めておこう。そうと決まれば早く依頼決めなければ。
そんなことを考えながら依頼ボードに手頃な依頼がないか見に行く。
依頼は受けられるランクが決まっていて自分のランク±1のランクまでだ、つまりFランクの僕達が受けられるのはEランクの依頼までだ。
「二人共どの依頼を受ける?」
「私は特にリクエストはないけど。」
「俺はできれば魔物と戦える依頼がいい。」
「殺すことに躊躇しているのにか?」
「早めに慣れておきたいんだよ、もしもの時に戦えませんじゃ笑えないだろ。」
「解ったよ、じゃあ常時依頼のゴブリン討伐でいいか?」
二人が了承したので受ける依頼はゴブリン討伐に決定した。
常時依頼は何匹以上狩れば依頼完了と言うものなので特に申請する必要がないので、そのままギルドを後にした。
受付嬢に教えてもらった宿に着くと四十代ぐらいの女性が対応してくれた。
「いらっしゃいませ、お食事ですか?それともお泊りですか?」
如何やらこの店員さんは、ここらでは見かけないような恰好をしている僕達でも普通に対応してくれる方のようだ。
「宿泊で、えっと部屋は一人部屋と二人部屋をそれぞれ。」
「はい、ありがとうございます。宿泊料金前払いとなってまして、朝と夜の食事付きで1泊銅貨80枚となります。ただし10日以上滞在の場合は銀貨7枚に銅貨20枚にさせてもらっています。」
「すいません、お金が少し足りないので少し稼いでからまた来ます。」
そう言って三人で宿を出る。
うん、お金が全く足りない。
今の全財産が銅貨15枚、つまり一泊もできない。
これは依頼をこなしてから来るべきだった。
「二人共、ゴブリンを多めに狩って宿泊費を稼ぐよ。」
「今日も野宿は嫌だからね。」
舞はこの世界に来てから風呂に入れてないのを気にしているのか自分の裾等を嗅いだりしている。
「僕もまた一晩中見張りをするのは嫌だよ。」
「それは本当にごめん。」
「冗談だよ、冗談。」
そう言いながらゴブリンを狩りに近くの森に行くことになった。