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25話


 私は両親を知らない。

 教会のシスターから聞いた話では、ある雨の日の朝に赤ん坊の私が籠に入れられ教会の門のところに捨てられていたらしい。


 町の人達は私達をを可哀想だと言うが少なくとも私は一度も自分が可哀想だと思った事はなかった。

 教会は私達身寄りのない孤児を時には優しく時には厳しく育ててくれるし、血は繋がっていないけれど兄や姉、弟や妹、たくさんの家族がいる。

 毎日賑やかで楽しくてだから両親が知らない事を悲しいと思うことはなかった。


 月日は流れ私が十を過ぎたころ教会に聖女と呼ばれる女性がやって来た。

 聖女は祝福が有る様にと町の色々な所を巡っているらしい。

 私達は粗相のないようにと奥の部屋から出ないように言われたけど、聖女様がどんな人なのか知りたくて部屋の窓からこっそりと覗いていた。


 聖女様は想像していたよりも綺麗な女性だった。

 普段恋愛に興味のない男子や同性の私でも見とれてしまうほどだった。

 聖女様が御祈りを捧げ、シスターと少しの間何か話してすぐに次の所に向かってしまった。

 それから聖女様を見ることはなかった。


 そして数年が経ったある日、聖女様が勇者様と結婚するという噂を耳にした。

 町外にも噂が流れその噂を耳にした人達が町にやって来ているのかいつもより町が賑わっていた。


 噂が流れてから数日が経ったある日、聖女様が行方不明になったという噂が出てきた。

 最初は町の人達もその噂を信じていなかったけれど、どんどん日が経つにつれて城の人達の動きが大きくなっていき町の人達もその噂が事実なんだと受け止め始めた。


 聖女様が行方不明という噂が流れてから数か月がたったある日、買い物に出かけていると、兵隊さんに呼び止められた。

 兵隊さんが言うには流行病が流行し始めたということを耳にし、念の為に住民に検査を受けるように呼びかけているそうだ。

 検査の内容はすごく簡単で用意された水晶に手を翳すだけだった。


 私は自分の番が来ると前の人に倣い水晶に手を翳す、すると周りに居た兵隊が一瞬驚いたように見えた。

 検査が終わったので私が戻ろうとすると兵隊さんが声を掛けてきた。

 私が驚いている間に兵隊さんは私が流行病に罹っているとそれだけ言って、連れていかれた。


 連れていかれたのは豪華な部屋だった。

 そこで待つように言われ数分待っていると身分の高そうな人がやって来た。

 その人が言うには私は聖女の後継人だと言う。

 信じられなかった私みたいな何にも取り柄のない者が聖女なんて無理だ。


 私が断ろうとすると、今よりも生活が良くなるだの美味しいものが食べられるだの言って説得しようとしてきたけど、私にとって大事なのはあの教会で一緒に暮らす家族だから離れたくないと言うと、教会への支援を打ち切るそれが嫌なら我々に素直に従えと言われた。

 如何やら私に拒否権はないみたいだ。

 私は渋々従うことを選びお城へやって来た。


 お城では基本的な言葉遣いや動作などと言ったマナーなどを叩き込まれた。

 お城に連れてこられてから一年が経った頃には城外に出させてもらえる程度にはなった。

 家族に会えない悲しみを抱えながら数年の時が流れたある日、大きな儀式を行うということで城の偉い人達数人が集められていた。

 そしてなぜか私も参加させられていた。


 訳が分からないまま儀式での役目を伝えられその通りに儀式を進めて行くと、床に描かれていた魔法陣が光を放ち視界を覆いつくしたかと思うと、そこにはあの日と服装や髪の色などが違うが、確かにあの日見た聖女様が立っていた。

 如何やらあの魔法陣は聖女様を連れ戻す為のものだったらしい。

 私は聖女様とは何も話せないまままた部屋に戻された。

 そして聖女様と話したいと言っても一回も会わせてもらえずにまた月日が流れた。


 いつか聖女様と話したいと考えながら、部屋から昼の空を眺めていると突然大きな爆発音が聞こえた。

 数秒後に兵隊さんが私を守るために部屋にやって来た。

 部屋に結界を張ったから心配を要らないと言われたが、結界が破られた音がした。


 部屋に入って来たのは、背中からは漆黒の翼、全身は獣のような剛毛、手は黒く鋭い爪、顔は肉が一切付いてない髑髏、額には鋭く尖った角の生えた悍ましい化物だった。

 化物は私達を見たまま止まってしまった。

 あれはきっと私達をどんな風に殺すか考えているのだろう。


 兵隊さんの一人が恐怖に耐えられなくなったのか剣を構えて襲い掛かると化物の腕が漆黒の剣に変わったかと思うと兵隊さんの首は落とされ、落ちた生首が私の足元まで転がってきた。

 私はその生首と目があってしまった。

 その瞳には一切ひりを灯さずただただこちらを見ていた。

 私は余りの現実離れした出来事に耐えられなくなり気を失ってしまった。


 気が付くと私は部屋のソファーにいた。

 どうやら私が気を失ったすぐ後に部屋から出ていきそのまま戻ってくることはなかったようだ。

 化物は聖女様を連れて何処かに飛びだってしまったそうだ。


 私はもうこんな所に居たくはない。

 そう思い皆が混乱している隙に城から抜け出し何処か遠くに、あの化物と二度と出会うことのない場所へと逃げることにした。


これで第一章は終わりです。

次回から第二章に入ります。

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