なにを食べさせようかな
明日部屋を出ていくと言ったA子さん。
彼女の荷物は着替え数枚と電気毛布と小さな棚と枕代わりのクッションだけ。
電気毛布と着替えだけ持って行くと言ったので、私はそれが入るサイズのバッグを探しました。
クローゼットの奥から前にパンのシール集めてもらった未使用のボストンバッグが出てきました。
袋に入ったままのそれを広げて見たらなんとか電気毛布が入るサイズだった。
着替えは紙袋に入れていくって。
A子さんは明日は夕飯を食べずに部屋を出ると言ってるので、今日が私と食べる最後の食事です。
別に名残惜しくはないけど、最後だからね…
私はA子さんの為にがんばって苦手な揚げ物をしました。
カツを揚げた。
なんに対してかはわからないけれど、とにかくA子さんがこれからの人生勝ってゆけるようにと。
この人は部屋を去っていくけど、夫くんの心からこの人が消えることはないんだろうなと思いながらカツを食べるA子さんを眺めた。
うん…
やっぱり夫くんと不似合いな気がするなと思った。
チャーミングにはチャーミングな人だけど。
A子さんは夫くんの初カノなんだよね…
夫くんはあんまり女子に興味無かったみたい。
学生時代も彼女とかいなくってちゃんと女の子と付き合ったのはA子さんが初めてだったらしい。(A子さん情報)
自分のフィールドの枠からはみ出したところにいた人との初めての恋。
25歳にして出来た初カノ。
そりゃあ忘れられないでしょうよ。
女の人は新しい恋人が出来ると前の恋人のデーターの上に上書き保存するから前の男を忘れ去るけど、男の人は恋人ができる度に別ファイルを作るって言うもんね?
いつまでも前の恋人の記憶は残しておきたいって。
あーあ。
私なんかひどい目にあったなぁ。
心のいろんなところを引っ掻かれた。
でもこの大変だった同居生活も終わる。
明日で。




