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4 学生と勇者の二足の草鞋

前回までのあらすじ


なんやかんやあって、最終的に勇者を引き受けることにした俺。

自分の生活もあるから学校の終わった放課後一時間という時間限定でな。

まぁ、そんな約束をしてから元の世界に戻してもらったわけだが・・・

移動時の衝撃なのかわからないけど、すげー全身が痛くてクラクラして

そのまま意識を失ったっぽいんだよな・・・


なんでそう言えるかって?

・・・そりゃあ、遠くからなんか声がするからな・・・


「・・・い、おい・・・せ・・・かり・・・」


ちなみに男の声な、そして聞き覚えのある声でもある。


「・・・おい、ももせ・・・しっかりしろ・・・」

「んあ・・・」


あ、声出た。目も開けられそうだな・・・

目を開けると、目の前には俺を心配そうに見つめながら呼びかける

担任の吉川先生がいた。


「あれ、センセ・・・?なんでいんの?」

「なんでって、お前が全然戻ってこないから様子を見に来たんだよ。

 そしたらお前は床に倒れてるし、呼んでも起きないから心配したぞ。」


危うく救急車を呼ぶところだったと話す吉川先生をよそに

俺はキョロキョロと辺りを見回した。

どうやらここは異世界に行く前にいた第三資料室のようだ。

無事、元の世界に帰ってこれたみたいで安心したぜ。


「しっかし、お前結構ビビリなんだな。」

「は?」


にやにやと笑いながら近くにあった段ボールをポンポンと叩いた。

その段ボールは真っ赤に染められている・・・あっ・・・


「あれの中見て気絶してたんだろ?まさか開けるとは思ってなかったから

 中身は伝えてなかったんだが・・・教えといた方がよかったな?」

「気絶?んなわけ・・・まぁいいや、それよりもそれ何だよ?」

「これか?これは生首の小道具だ。」

「んなもん見りゃわかる!何に使うんだよ!」

「何にって・・・演劇部で使うにきまってんだろ?」

「は?」


俺は間抜けな声を出した。

そんな俺に吉川先生は「お前なぁ・・・」と呆れ顔された。


俺の記憶にはないんだが、吉川先生はうちのクラスの担任であり

演劇部の顧問でもあるらしい。

それで、次の劇に使う小道具を集めていたらしい。


「つーかそれ、どんな時に使うんだよ。」

「これか?処刑された恋人の首を抱きしめる時だな。」

「使いどころがピンポイントすぎる!!」


どんな劇だよそれ!!

あー・・・もう、なんかすげー疲れたわー・・・


俺が大きな溜息をつくと、先生は俺の頭をぐしゃぐしゃと撫でて

いたずらっぽく笑って「悪かったな」と言った。


「まぁ、助かったよ、ありがとな。・・・気を付けて帰れよ。」

「おう・・・」


そう言って吉川先生は生首の入った真っ赤な段ボールを抱えて

第三資料室を出ていった。


一人になった第三資料室はすごく静かだった。

まるで、異世界の話も妖精も夢だったように感じるほどに・・・


いや、もしかしたら夢だったのかもしれない。

小道具の生首に驚いて、先生の言っていた通り気絶していたのかもしれない。


・・・まぁ、明日の放課後、約束通りにここに来てみりゃハッキリするか。

あれはが夢だったのか、それとも現実だったのか・・・・


つーわけで帰ろう。速攻帰ろう。さくさく帰ろう。

俺は教室に鞄を取りに戻って、そのまま帰路についた。


何事もなく平穏無事に家に着いた俺は、家に忘れていった財布を手に

近くのコンビニに、夕飯の弁当と目覚まし時計の電池を買いに行った。


その後も、特に何事もなく就寝できた・・・どうやら不運はもう起きないようだ。




翌日、

時間通りに鳴り出した目覚まし時計のおかげて寝坊することなく、

遅刻することもなく学校に辿り着いた。


授業はまぁ・・・なんとなく聞き流しながら、俺は放課後を待った。


放課後、帰宅部の俺はいつものように鞄を持ち教室を出た。

だけど向かうのは下駄箱ではなく第三資料室。


そういや、昨日はなんとも思ってなかったけど、こういう教室って普通

鍵がかかってるもんじゃないのか?一応、様々な資料も保管してあるわけだし?


・・・まぁ、いいや、鍵かかってたら帰ろう。


そんなことを考えながら第三資料室の引き戸に手をかけると、

やっぱり鍵はかかってないらしい。すんなりと開いてしまった。


不用心にもほどがあんだろ!

・・・いや待て、もしかしたら中に誰かいるのかもしれない。

昨日の俺のように、誰かがここの物を取りに来てるのかも・・・


「誰かいますか~?」


教室に足を踏み入れ俺は声をかけてみた。

しかし、教室内は静まり返っており、俺以外には誰もいないようだった。


だから不用心・・・もういいや・・・


第三資料室でキョロキョロしていると、背後から聞き覚えのある声がした。


「お待ちしていました、勇者ヒビキ。」


振り返ると、触角の生えたピンク髪の妖精が棚に座ってこちらを見ていた。

昨日のアレはやっぱり夢じゃなかったようだ。


「よう、来たぜ。」


俺がそう言うと、妖精は頷いて立ち上がった。


「さっそくアーヴィルに向かいましょう、目を閉じてください。」

「あー・・・またアレを体験するのか・・・」

「昨日は失敗しましたが今日は大丈夫です。私は優秀ですから!」


ちょっとまて。

昨日は失敗したって・・・まさか帰りのあれか!?

あれ失敗だったのか!体中痛かったのはその所為か!!


一気に俺の中で不安要素がでかくなったんだけど・・・ホントに大丈夫か!?


「大丈夫ですよ。なんたって、私は優秀ですから。」

「心を読むな。」


やべぇ・・・勇者引き受けた事、今すげー後悔してるかも・・・




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