2 運悪く勇者に選ばれてしまった
前回までのあらすじ
朝から不運に見舞われた俺、百瀬 響は放課後、担任の吉川に頼まれて
第三資料室(別名:物置)に荷物を取りに行った。
そこで見つけた生首(作り物)に驚いた俺は棚に激突し一冊の本を落とす。
本の下から出てきたのは翅の生えた小人・・・ファンタジーな妖精っぽい何かで、
気づけば学校にいたはずの俺は、木々が囲む森の中に突っ立っていた・・・
・・・自分で言っててなんだが、まるで意味がわからない!!
どうしてこうなった!?
つーか周りを見渡しても樹木以外見当たらないんだが・・・どこだここ?
日本にこんな森なんてあったっけ?・・・富士の樹海とか?んなわけないか。
しっかしこの状況・・・どうしたらいいもんかねー。
ここがどこだかわからないし、コンパスもないから方角もわからないし・・・
って、方角だけわかっても意味ないか・・・
うーむ、と考え込んでいた俺の耳に、聞き覚えのある声が聞こえてきた。
「あ、ようやく見つけました!」
声の主は俺が学校で見かけた妖精っぽい何かだった。
・・・妖精っぽい何かって言いにくいな、妖精(?)にでもしとくか。
その妖精(?)は何かを確認するように俺の周りをふわふわと飛び回った後、
俺の目の前でニッコリと笑った。
「よかった、五体満足のようね。」
ちょっとまて。
今聞き捨てならないセリフがあったぞ!
五体満足って何?どっか欠ける要素があったってことか!?
いやそれよりも・・・
「ここはどこなんだ?あと、お前はなんだ?」
まずは状況を把握するのが先だと思って尋ねれば、
妖精(?)は俺の質問にすんなり答えてくれた。
「ご説明しましょう!この世界はアーヴィル、
あなたがいた世界とは別の世界・・・言うなれば異世界です。」
なんとなく予想してたけど異世界確定か・・・
「そして私は、この世界に生きる妖精です。
妖精はヒトに名前を教えないので、妖精、もしくはフェアリーとお呼びください。」
あー、やっぱ妖精か・・・触角ある妖精かー・・・
つーか、妖精かフェアリーって、呼び方がまんますぎんだろ・・・
「他にご質問はありますか?優秀な私がズバっと答えますよ。」
えっへん!と胸を張る妖精に、普通、自分で優秀とか言わないだろ。と
口をついて出そうになる言葉を耐えて飲み込んだ。
落ち着け俺、ツッコミは後だ。今はとにかく状況把握と解決方法を探すんだ。
「んじゃ、なんで俺はこの世界に連れてこられたんだ?」
「それは、あなたがこの世界を救う勇者だからです。」
あー、そういやここにくる直前に言ってたっけ・・・
「・・・てか、なんで俺が勇者なわけ?
大体俺は、どこにでもいるいたって普通の男子高校生だぜ?」
成績も平均、運動神経も普通、なにか飛びぬけた特技があるわけでもない。
そんな俺が勇者とか、どこぞのゲーム&ラノベ世界だよ・・・
「あなたには勇者の資質があります。」
「は?」
「ですから勇者の資質です。」
・・・頭痛くなってきた・・・
勇者の資質?なら、なおさらありえない話なんだが・・・
俺、結構見て見ぬふりするし、人助けなんて全然しないし・・・
「勇者の資質というのは、目に見えない潜在能力のようなものです。
私たち妖精はそれを感知することができるんです。」
「あっそ・・・」
「私はこの世界の危機に強い資質を感じる世界へ飛びました。それがあなたの世界
・・・そしてそこで出会ったあなたこそ、この世界を救う勇者なのです!」
あー・・・これ、実は別の人が勇者でしたー。ってオチな気がしてきた・・・
今日はやたらに運が悪かったしなー、いつもならもう家に帰ってる時間だし、
誰かと間違えられて勇者として連れてこられてもなんらおかしくないな!
「・・・聞いてますか?」
「うん、人違いじゃね?」
「何言ってるんですか?」
「俺に勇者の資質なんてあるわけないだろ?」
「ありますよ?」
え・・・?
戸惑う俺に、妖精は大げさにため息をついてから言った。
「言いましたよね、妖精は勇者の資質を感知できると。
私はあなたに勇者の資質を感じています。」
「ま、まじで・・・?」
「優秀な私が言うんですから間違いありません。あなたは勇者です!」
・・・まじで?まじで俺に勇者の資質なんてあんの?
すげー嘘くさいんだけど・・・
「そういえば、あなたの名前をまだ聞いていませんね。教えてくれますか?」
「あ、俺の名前は百瀬 響だけど?」
「モモセヒビキ?」
「あー、うん、ヒビキだよ。」
よく考えたら、異世界でフルネーム名乗っても意味ないよな。
つーか、異世界の名乗り方はやっぱ名前からなんかな?
なんて、どうでもいいことを考えている俺をよそに、
妖精は名乗った俺の名前を何度も声に出して復唱した。
「ヒビキですね、覚えました。」
にっこりと笑ってそう言った妖精はとても嬉しそうだった。
そしてすぐに真剣な顔になると、俺に向かって口を開いた。
「勇者ヒビキ。お願いです、どうかこの世界を救ってください。」
そう言った妖精の表情はとても真剣で、とても辛そうで・・・
勇者が必要なくらい切羽詰まってることが感じ取れた。
だがしかし!
「断る!」
一瞬の間、
俺の言葉が信じられないのか、妖精はバタバタと両手を動かしながら叫んだ。
「なんでなんでなんでー!?」
断られるとは思ってなかったのか、妖精は何度も「なんで!?」と叫び続けた。