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プロローグ
ある世界のどこかに、エーニアという国があります。この国では様々な《概念》が、人の形をとって暮らしていました。
《概念》といっても、例えば《優しさ》という概念は優しさだけしか感情を持っていないわけではありません。
《概念》たちの性格のベースが自分の司る《概念》になるだけで、《優しさ》だって意地悪な気持ちになるときもあります。逆に、《残虐》が傷ついて泣くこともあります。それがエーニアの《概念》たちです。言ってしまえば、どこかの世界の人々と何ら変わらないのです。
そのためエーニアの中でも、絵に描いたような冒険譚や抱腹絶倒の笑い話、あるいはドラマティックな悲劇が時折起こります。
今回はそんな話の中では平凡な、けれど微笑ましく切ない恋のお話を。
一途でキラキラな女の子と、穏やかでちょっと鈍感な青年のお話です。