第4話
帰宅した摩耶を出迎えたのは、倉崎だった。
「どうだった?」
「……」
摩耶は、今日の出来事を倉先に説明した。
「なるほどな……ご苦労。また明日、尾行を頼むよ」
「ああ」
そういって、自分の部屋へと戻ろうとした摩耶を呼び止める倉崎。
「ちょっとまて……そういえば、忘れていたよ。この腕輪を装着してくれ」
「なんだ、これは」
「お前が逃走しないように発振器がついている。それを身に着けて行動してくれ」
「……」
摩耶は銀色の腕輪を装着する。
「お前がこの町から出ようとすると、腕輪に仕込んである毒が血液に送り込まれるようになっている。本当は首輪だったんだが、さすがにそれは奴隷みたいで嫌だろ?」
「……そういうことか。まあ、いいさ。どうせ逃げ出す気なんてない」
「理解が早くて助かる。では、また明日な」
「ふん……」
摩耶は自室に戻るとベッドに寝そべって、天井を見上げた。
「くだらない……」
(世の中なんて、そんなもんさ。いつか訪れる『死』まで行動しているだけだからな)
(うるさい……)
(お前が殺した女はそれが早かっただけのことさ)
(黙れ……!)
(なら、お前が死んだ方がよかったのか? それなら、オレは現れてなかったはずだ)
(黙れ)
(お前が死にたくなかったから、オレが現れたんだろ)
(黙れ)
(黙れ)
(黙れ)
(黙れ、黙れ、黙れ、黙れ、黙れ、黙れ、黙れ、黙れ、黙れ、黙れ、黙れ、黙れ、黙れ、黙れ、黙れ、黙れ、黙れ、黙れ、黙れ、黙れ、黙れ、黙れ、黙れ、黙れ、黙れ、黙れ、黙れ、黙れ、黙れ、黙れ、黙れ、黙れ、黙れ、黙れ、黙れ、黙れ、黙れ!)
摩耶は頭を抱える。無意識に耳を押さえて聞こえないようにするが、心の中の声はなくならない。ストレスではちきれそうだ。
そのどうにもならない衝動を、ベッドを叩くことで紛らわそうとした。
結果、ホコリが立ち、咳き込む摩耶だった。