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レッド・アイ  作者: マヤ
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第3話

 外に出た摩耶が目にする光景はごくごくいつもの風景だった。いつもの町並み。人がまばらに歩いており、道路には忙しなく車が行き来している。

 信号が青に変わる。摩耶はゆっくりと歩き出す。

(くだらないな……この世界は。全員が同じ場所に立ち止まり、スイッチが切り替われば、同じように歩き出す……おもちゃのように)

(お前もその一部だってことに、変わりはないんだぜ?)

(黙れ)

 そう、摩耶は普段、この存在と声を出してやり取りすることは少ない。基本的には、脳内でのやり取りがほとんどだ。感情が高ぶると、口調にもそれが反映されやすく、場合によっては先程のように、口でのやり取りも始まるようだ。

(ヒヒ、しかしよかったぜ……オレはてっきり刑務所なんかで一生を終えることになると思っていたからよぉ。やっぱり、シャバの空気はうめぇなぁ)

(クズが。黙れと言っただろう)

(誰のお陰で助かったと思ってんだか)

(誰も頼んじゃいない)

(そうかい、そうかい。まあ、オレもオレ自身のことはよくわからねぇからな。お前の分身なのかも、そうでないのかも定かじゃねぇ。あの日、突然に目覚めたというべきかねぇ)

「……」

 摩耶は人混みの中を歩いて行く。目的地は、三原和子の学校だ。その場所はここから、徒歩十五分。それなりの距離だろう。

「ここか」

 学校にたどり着く。門から中を覗こうとすると、警備員に声をかけられた。

「君、冬鬼摩耶さんだね? お話は伺っております。どうぞ、お通り下さい」

「……」

(はは、入れちまったな)

(うるさい。……用意周到だな。すでに手回し済みってことか)

(らしいな。ま、都合がよかったじゃねえか。塀の上を飛び越えずに済んだしよ)

(黙れ)

 学校の敷地内に入ると、屋上に女生徒の姿があった。三原和子だ。どうやら、昼休憩の模様。摩耶は屋上へと向かった。

 屋上にたどり着くと、そこには三原和子の姿があった。一人で外を眺めている。

(飛び降りるつもりだったりしてな)

(バカか)

 すると、柵を飛び越えて三原和子は空へとダイブした。

「なっ……!」

 摩耶は慌てて、走り出す。そして、すぐさま柵を飛び越えて地上を見下ろすと……。

(誰も……いない?)

「どうかしたの?」

「っ!」

 振り向くと、そこには三原和子の姿があった。驚いた摩耶の姿を見た相方は。

(ハハ、お前でもそんな顔するんだな)

(くっ……黙れ! それより……こいつ、何をした?)

「ふふ、何をそんなに驚いているのかしら? まるで、鳩が豆鉄砲を食ったようね」

「お前……何者だ」

「あら。貴方こそ、何者なの? そんな格好で……この学園の生徒じゃないわよね?」

「……」

「答えないのかしら?」

「冬鬼、摩耶だ」

 摩耶の眼が赤く光る。三原和子は何かしらの『能力』を使った可能性が高いからだ。摩耶の眼は能力を強く感知しようとする時、眼が赤く光る。戦闘行為を行う時もそう。

「私は三原和子。その様子だと、すでに知っているような感じがするけど? なんでかしらね?」

(こいつ……)

(ハハ、なかなかのやり手じゃねーか。早速、見透かされてんぞ)

(うるさい、黙れ)

「それじゃ、また会いましょ。冬鬼摩耶さん」

 そういって、屋上から姿を消した三原和子。残された摩耶は、拳を握りしめて、空を見上げた。



 下校時。学生たちは一斉に、門の外へと出ていく。アリのように。しばらくすると、三原和子の姿があった。それを確認した摩耶は、後をつける。

「……」

(今度はヘマするなよ、相棒)

(黙れ)

 三原和子から、かなりの距離を取って尾行する摩耶。細心の注意を払って行動していた。眼は赤く光ったまま。いつ能力が発動してもいいように、待ち構えている。

 しかし、三原和子にその様子は一切なかった。何事もなく、彼女は自宅へと帰っていったのだ。

(……帰るか)

(相手さん、中々したたかだな。簡単には尻尾を出しやがらねえ)

 相方に突っ込む気力にもなれなかったのか、摩耶は黙って帰宅した。


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