閃光の刃
本当は金曜日に更新する予定だったのですけどいろいろあって遅れてしまいましたww(まさか、データが全て吹っ飛ぶとは………)
これからはデータを吹っ飛ばさないように気をつけます!
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(アカウントは@koneko451040です)
では、皆さん!いい夢を
夢の住人。
己の体内に化け物を一匹飼っており、常人よりも非常に高い魔力係数を持つ人。
人々は彼らのことを「悪魔」だの「妖怪」だのと言って恐れていたが時が進むにつれて彼らは勢力を失ってゆき、ちょうど三年前、複数の退魔師と「ソロモンの知恵袋」の魔道士達によって起こされた「大和事件」によって絶命したと言われていた。
彼が都市伝説だと言うのも驚きだが、それ以上に喉に突っかかることがあった。
「僕が夢の住人ってのはどう言う意味だ」
「意味も糞もないよ」
都市伝説は先ほど脱ぎ捨てた紅いおめんをまたつけると喋り続けた。
「君と僕は同じ人種であり、同じ悪魔だってことだ」
「同じ悪魔だと?」
「まぁ、今はとってもどーでもいいことだね。それより………」
都市伝説はルナの方を見つめると「今はルナの破壊が優先だ。」と言った。
バン!
僕は銃弾を都市伝説の右腕に撃ち込んだ。
「…………銀の弾丸か」
都市伝説はそう呟いた。
「つまらないものを使うなぁ」
タラァ。 彼の右腕から紅い血が流れ出てきた。退魔具は効くらしい。どうやらほんとに夢の住人のようだ。
「あぁつまらないつまらないつまらないつまらないつまらないつまらないつまらない。実につまらない」
都市伝説は頭を抱えまるで自分の脳を搔き毟るかのように手を動かした。そして、両腕を肩からぶら下げると笑いに満ちた声で
「なら、君から壊そう」
と喋り出した。
僕は構えてた銃のトリガーめいいっぱい引いた。
バン!バン!バン!綺麗な火薬の音が響いた。しかし、あの鈍い音はしていない。どうやらバズれたらしい。
僕はゆっくり顔を上げた。そこには目を疑う光景が広がっていた。
「銃弾が…………。浮いている」
魔力を層状に放出し一種の壁を作る。魔障壁だ。しかも「銀の弾丸」を受け止めるほどの強度だ。かなり繊細で高度な術式を組まない限り不可能な術だ。
都市伝説はそれを一瞬でやってしまったのだ。
「化け物め……」
僕は両眼で彼の顔をにらみつけながら深い深呼吸をした。
まず、あの厄介な魔障壁をどうにかしなければならない。
方法は三つある。
一つめは、敵の魔力が切れるまで攻撃を続ける。
二つめは、魔障壁が展開されるより速い攻撃を叩き込む。
三つめは、魔障壁もろとも破壊してしまう。
普通に考えたら二番目の考えが妥当だろう。
僕は考えをまとめると魔力の充電に移った。両眼を閉じ、神経を集中させる。光系補助魔法「電光石火の速〜ライトニング〜」だ。
魔力の充電が終わるとハンドガンをしまい、短剣を取り出した。ライトニングとあわせるなら銃よりも剣の方が使い勝手がいいからだ。
僕は両足に力を込め、思いっきり地面を蹴り飛ばした。
「!?」
都市伝説が防御モーションに入った頃、僕はすでに彼のふところに飛び込んでいた。
シャン!短剣を振り下ろした。しかし都市伝説は身体を斜めに動かし、僕の斬撃をかわした。
かわすということは魔障壁が間に合っていない証拠だ。
僕はそれを確信すると彼の逃げた方向におもいっきり地面を蹴り飛ばした。
短剣が彼の頬をかすめた。
今だ!僕はそう心で叫ぶと手に持っていた短剣を宙に置いた。
彼と僕の間には攻撃を避けたことによって生まれた人二人分ぐらいの隙間ができていた。
絶妙にいい間合いだ。
僕は 地面を真下に蹴ることで、速度のついた身体を宙に浮かせた。そして空中で宙返りをしながら態勢を整え、蹴りのモーションに入った。
光系体術「電光石火の蹴撃〜ライトニング・ソニック〜」だ。
光速を超えた蹴りは魔障壁を貼る隙を与えず都市伝説の心臓めがけて撃ち込まれた。
ズダダダダダダダダタァアアアン!
ものすごい轟音とともに都市伝説は吹っ飛んだ。
「やったか!?」
右足には手ごたえはあった。普通の敵ならばこの感触で殺れるのだが、今の僕にそんな安心感はなかった。
「いったいなぁ」
予想どおり都市伝説は膝を折ることなく重力に逆らうかのようにアスファルトの上に立っていた。
さすがは夢の住人。そうとうの化け物だ。 僕は先ほど放り投げたナイフを拾うともう一度深い深呼吸をした。
一瞬、ライトニングでルナを抱き抱え戦線を離脱しようと考えた。
まぁ、背を向けた瞬間に後ろからズドン!だろうけど………。
そんなことを考えていたら都市伝説は片手をピストルのように構えていた。
「我汚れし理りを浄化するものなり」
都市伝説が言葉を唱えるとピストルの指先に光が集まってきた。
詠唱魔法だ。
しかし、それに気づいた時はもう遅かった。
「聖なる光の破壊光線〜レーザービーム〜‼︎‼︎」
彼の右指から飛び出てた一筋の光がコータローの右の太ももを貫いた。
「ウグッ!」
ズボンがじわりじわりと紅い色に染まった。
僕は地面に跪くと右の太ももを両手で抑え痛みを堪えた。
流石はS級詠唱魔法だ。右足が痺れて動かない。
「くそやろぉ」
僕の眼は都市伝説の姿を鋭く睨みつけていた。
「わー怖い怖い。怖いなぁ救われないなぁ」
都市伝説は笑いながらまた、ピストルの形をした手を僕に向けてきた。
チュン!空気を飛ぶ静かな音、僕はその音に吊られて左肩を貫かれていた。
「うわぁアァァァアァアアアァアア」
激しい痛みが脳内を支配する。肩が熱くなり、ぬるぬると湿ってきた。
じわりじわりと滲み出てくる血液。脳に響く笑いの狂想曲。激しい痺れが僕の身体全身を襲った。
都市伝説はただ笑っていた。ただ笑い狂い踊り続けている。
これが都市伝説。これが「夢の住人」。
人を恐怖で支配する者。
コータローは治癒魔法を唱えようとした。しかし、両手に魔力は集まらない。もともとコータローは他の人間に比べ著しく魔力係数が小さいのだ。それに魔術効率も著しく悪い。
結論を言えばコータローは魔術が使えない退魔師なのだ。
「アレェ?反撃しないのぉ?それとも魔力つきたぁ?」
都市伝説が僕の顔を覗き込んできた。すると、髪を掴み僕のことを無理やり重力に逆らわせた。
「もっと踊れよ」
都市伝説は両眼を見開き、まんべんの笑みでそういった。
僕は痛みを堪えながら右手で銃を構え、都市伝説に撃ち込んだ。
しかし、それは叶わなかった。僕の身体が銃を構えるより早く放物運動をしていたからだ。
ズリィイィ。アスファルトに引きずられる音が耳に響いた。
しかし、僕の顔は笑っていた。
「なぁ知ってるかぁ都市伝説。」
僕はゆっくりアスファルトから身体を引き離し重力に逆らいながら痛めている足を起こした。
「?」
都市伝説は一度首を傾げると何か気づいたように自分の右腕を見つめた。そして「あぁ」と頷くと全てを理解した眼でこちらを見てきた。
「呪術魔法陣か………。」
呪術魔法陣。術式を対象者に書き込むことで己の魔力でなく対象者の魔力を媒体に術を発動させる魔法。
一見便利そうに見えるが敵にバレずに術式を書き込むというリスクが存在するため、滅多に使われない魔法。
「普段化け物相手だと、接触している時間は少ないけど!」
僕はその言葉と共に術式を解き放った。すると魔法陣が作動し、都市伝説の周りに光のサークルが現れた。
「やめといた方がいいよ。絶望を見ることになるから」
「もう、遅いよ」
僕は右腕を天に捧げるようにあげると空に向かって叫んだ。
「天を貫く火炎弾〜メテオ〜‼︎‼︎」
夜空が赤い光に包まれると隕石がゲリラ豪雨の如く都市伝説の上に降り注いだ。
ズドドドドドドォオオォオォオォオン‼︎‼︎ものすごい轟音共に白い煙が舞い上がった。
やったか!?そう思いながら立ち上がる煙を見つめていた。
ガシャ!
煙を向こうから聞きなれない棒と棒が擦れる音がした。
ガシャ!
その音は徐々に徐々に大きくなっている。
ガシャ!ガシャ!
その音源が眼に映った時、僕の身体は震えていた。
僕の目の前には動く骸骨の姿があった。肋骨の中には紅く動く心臓があった。
都市伝説だ。
「酷いなぁ。肉片が全て飛び散っちゃったじゃあないか。」
都市伝説の口がそう言うと骨という骨からまるで植物のように肉がうねうねと生えてきた。
僕は眼を見開きながら「化け物め」としかいうことができなかった。
都市伝説の身体はまるで時を戻したかのように元にもどっていった。
都市伝説の足が一歩、また一歩僕に近づいてくる。
絶体絶命。万事休すとはこのことだ。僕はただ彼を睨むことしかできない。
焦る心臓。高まる心拍数。全ての身体の機能がほぼ停止状態にある僕めかげて都市伝説は右腕を振り上げた。
「今まで楽しい思い出をありがとう。そして………」
右腕には無数の光の刃が集まっている。
光系S級魔法「夜空を貫く聖なる槍〜グングニル〜」だ。
「さ よ う な ら」
その言葉共に都市伝説は右腕を振り下ろした。
ズドドドドドドォオオォオォオォオン‼︎酷い轟音と共に眩い光が辺りを包んだ。
その時だった。
スシャン!
一筋の音と共に先ほどの眩い光が四方八方に飛び散っていた。
何が起きたのかはわからない。ただわかることはグングニルが消えていた。ということだけだ。
「へぇやっときたんだ。」
都市伝説は僕以外の誰かに向かって声を発した。
やっときた?まさか!?
「ナーニをボサッとしているコータローくん」
僕が眼を向けた先には一本の日本刀を持ったオッさんが偉そうに突っ立っていた。
僕は唾を飲み込むと嬉しさのあまりその人の名を口に出していた。
「ハヤミさん!」
ハヤミさんは僕を見るとニッと笑いながら親指を立てていた。