それがあんたらの運命さ
『鑑定』の術を使っても鑑定できなかった赤い宝石を占いの老婆に持ち込んだ三名は驚愕の事実を知ることになる。
「私のところに持ってくればいいのに。タダだぞ」
タダより高いモノはない。『神聖皇帝ディーヌスレイト』よ。
「可愛がってやるのに」そういって頬を赤らめる『神聖皇帝ディーヌスレイト』。
一方、ヒサシはヒサシで謎の怖気を感じていた。哀れ。
「どうした? ヒサシ。風邪か」「い、いやミザリィ。なんでもない」「貴様は鍛えるのが足りん」
マッチョと化したサラマンダー。今度のレベルアップのサイコロ目も絶好調である。
老婆はいい加減耐えかねたらしい。
不快な香りを放つ香の煙の奥、彼女は厳かに告げる。
「この宝石、いや宝玉は『赤の宝玉』。伝説の『青の宝玉』と対になる代物さ」
なんでそんな凄いものが転がっているんだか。すべてはご都合主義である。
老婆はローブの奥から覗く口元だけで笑って見せる。
皺だらけの乾いた唇が不気味に歪む。「それがあんたらの運命さ」
ヒッヒとあざけるように笑う老婆は告げる。
「光が見える。高貴な光だよ。あんたらは彼女とともに世界を救うのさ」
「おい。ちゃんと話せ」
『神聖皇帝ディーヌスレイト』が老婆の首根っこを掴んだ。
「適当なことを言うならばこの場で首を折る」
ヒサシは自分のプレイヤーに告げた。
「老人虐待をしないでください」神聖皇帝は泣いて従った。
「あ、あの女は?」「あ。気にせず。外野ですから」「ですです!」「俺も関わらないほうが良いと思うぞ!」
ゲホゲホと咳をする老婆を労わるプレイヤーキャラクターたち。
この辺は三人ともお人よしらしい。
「ま、まぁよい……ここの領主が『青の宝玉』を手に入れようと画策しているのは存じているな」
もちろん、知らない。
だってGMが今明かした新事実だもん。
「どういうことだ。三千世界のすべてにおいて私が知らないことはあり得ぬ」
『オリジナルディーヌスレイト』の首掴みを喰らってGMは悶絶していた。