おいはらえるとおもうのか
ぞく。
ぞくぞく。
無駄に胸の大きな娘が身もだえをしているが別にやましいことを愉しんでいるわけではない。
「この季節になってもコタツにミカン」
仕舞えよ。暑いだろ。
GM様は三畳アパートで優雅に。
もとい何もすることなくだらけている。
セッションの日に誰も来ない。
女の子にはよくあることだがあの三姉妹の場合サボりである。
ひた。
ぴくんとGM様の耳が動いた。
ひた。ひた。ひた。
少女の足音のような音がGM様の後ろの台所で止まる。
ぞくぞくぞく。
GM様の肌が泡立つ。
明るいはずの部屋が『暗く』なり、匂いが消える。
音が足音以外消えてなくなる。世界がこの部屋だけになる。
「おねえちゃ」「なんまいだぶ なんまいだぶ」
不信心極まりないGM様はお経を唱えだす。
足音は静寂に。匂いは消えたまま。
肩の力を抜いてGM様は振り返る。
そこに怨念の限りを顔に浮かべた少女の顔。
『そんな もので おいはらえると おもうか』
「よっしゃ! プレイヤーゲット!!!」
GM様は幼女の怨霊をあっさり捕縛した。
なんですと?!!!!!!!!!!!
「いやぁ。魔王並みに怨念抱えている貴重な奴、オンリョーっていうの? それニホン独特のモンスターだって? 私の世界にもほしいし!」
「さ、座って座って。お姉さんと楽しいゲームを」
気が付くと妙に身体が長い女だのジャンプが早い女だのすごく早く走る女だのが卓に座っている。
「さぁ! 100年でも500年でもぶっ続けでやりましょう!!!」
こうして、怨霊たちは浄化されてしまった。
TRPGのマスターは、相手を選ばないらしい。




