第8話 秘密
外は闇に包まれ、それがまた燃の不安をかき立てた。
燃達は家の近くの公園にきた。
「ど・・・どうしたのさ。」
燃は次に起こることを予測しながらも聞いてみた。
「お前がどれくらい強くなったか、見てやるよ。」
「遠慮しとくよ。」
「何故だ?」
「そういう気分じゃないから。」
「嘘つくなよ。お前は何か激しく動けない理由があるんじゃないのか?」
「そ・・・そんなことないよ。」
「じゃあ別に良いじゃないか。」
慎之介は戦いの姿勢をとった。
燃も仕方なく戦いの姿勢をとる。
「燃。」
「何だよ。」
「持久戦でいくからな。」
慎之介はそう言ってニヤリと笑う。
「?」
燃は訳が分からなかった。
慎之介は地面をけると同時に燃に向かって拳を繰り出してきた。
とても人間のスピードとは思えない。
燃はそれを避け、肘に掌底を食らわそうとした。
こちらもまたものすごく速い対応だ。
慎之介はそれを肘打ちで対応し、あっさりと引いた。
「なっ!?」
燃はてっきり連続技で来ると思っていたようだ。
「言ったろ?持久戦で良くって。」
「・・・」
燃には慎之介が何を考えているかは分からないようだ。
「ほら、次行くぞっ!」
次は蹴りで来た。
燃はこれを伏せてかわし、地面についた左手を軸にし、慎之介の足を蹴った。
「!!」
慎之介はたまらず転んだ。
それを見て燃は起き上がり、慎之介のみぞおちに掌底を叩き込もうとした。
慎之介はその瞬間、何かをして燃を吹っ飛ばした。
「っ・・・」
燃は3メートルほど吹っ飛んだ。
燃はかろうじて受身を取り、起き上がった。
「はあ・・・はあ・・・はあ・・・」
燃の息があがっている。
「お前はおそらく俺よりも強い。だが、お前はこの程度で息があがっている・・・一体何があった?」
「知ら・・・ないな・・・」
「そうか・・・」
その瞬間、慎之介が目の前から消えた。
「!!」
燃は息が上がっているため、反応が遅れた。
すでに慎之介は燃の後ろへ回っていた。
「くっ・・・」
燃は吹っ飛ばされるのを覚悟した。
しかし、背中に来たのは普通の人間と同じくらいの拳であった。
だが・・・
「げほっ、ごほっ、ごほっ!」
「やっぱりな・・・」
「・・・・?」
「お前・・・毒の塗ってあるナイフで刺されたろ。」
「ああ・・・」
最早、ここまで来たら隠しきれないと思ったようだ。
「丁度、親もこんな感じだったからなあ。」
そう言って慎之介は手を差し伸べた。
燃は差し伸べられた手をとり辛そうに立ち上がった。
「なあ・・・兄貴?」
燃は慎之介の背中にのりながら帰っている途中、慎之介に話し掛けた。
「分かってる。誰にも言うな、だろ?」
燃は静かにうなずいた。
「いわねえよ。言ったって俺に得は一つもない。」
「サンキュ。」
そう言って燃は慎之介の背中で静かに眠った。
次の日には燃はベッドの上で寝かされていて机の上に一通の手紙だけがあり、
そこには(また仕事でいなくなるけどがんばれよ!)とだけ書いてあった。
燃はそれだけで胸がいっぱいになった。