第5話 事件
「ただいま〜。」
大蔵正人の息子、大蔵達也が大蔵病院と書かれている普通の家みたいな病院に帰宅した。
「おう、お帰り。遅かったな。」
正人は待合室でタバコをふかしながらそう言った。
「親父さあ、いい加減待合室でタバコふかすのやめとけって。」
「ちっ、何で今日に限って燃、そんでもってさらにお前に言われなきゃいけないんだよ・・・」
「親父、燃にも言われたのかよ・・・・・・燃!?何で燃が!?」
まさか燃が来ているとは思わなかったようだ。
「何か女の子連れてたぞ?」
「ふ〜ん・・・そんで?燃は帰った?」
「いや、まだ101号室に居ると思うぞ?」
「分かった・・・じゃあ、タバコは控えめにしとけよ。」
「ほいほ〜い」
なんともいい加減な返事だ。
「おい、燃。お前女の子を連れ込ん・・・」
達也の言葉は止まった。
「親父、親父!」
「何だよ、うるせえなあ。そんなに俺の幸せなひと時を邪魔したいのか?」
「そんなこと言ってる場合じゃ無いんだよ!」
「分かった、わかっ・・・・・・うわ・・・」
そこにあった光景は血の海と背中をナイフで刺されている燃の姿だった。
「こりゃあ・・・もう手遅れかもな・・・」
「親父!変な冗談言ってないで手術、手術!」
「冗談なんかじゃねえよ。よく見てみろ。この出血量だ。それに流れ出した血が固まりだしてる。」
「そ・・・そんな・・・」
「まっ・・・いくら俺でも手の打ちようが無いって奴だ。」
そう言って正人は燃の背中に刺さっているナイフを抜いた。
「お?」
正人が何か気づいたようだ。
「おい、達也。」
「・・・」
「達也、とりあえず聞け。」
「・・・」
「燃は生きてるぞ。」
「何だって!?」
燃の傷口は完全にふさがっていた。
「え・・・じゃあ何だ、この血は?」
「これは・・・・・・吐血だな。」
「あいつって何か持病持ってたっけ?」
「さあ・・・」
「まあ、とりあえず手術だな。」
そう言って正人は燃を抱き上げた。