第47話 心
「なあ、燃・・・少しだけ俺の話を聞いてくれ。」
燃が目を開けると慎之介が上に乗っかっていた。
「俺はお前のことを一度も弟じゃないなんて考えたこともない。」
燃は手に生暖かい液体が流れてくるのを感じた。
「兄貴、血が・・・」
慎之介の胸には穴が開いていた。
「俺だけじゃない。そこに居る達也君、正人さん、師匠、お前と俺の両親、皆お前を人として見ている。」
「兄貴、喋るな!血が!」
燃は血を止めようと傷口を塞いでいた。
「お前が作られた?そんなことはどうだって良い。問題なのはお前の心だ。」
慎之介は燃の手を握った。
「ああ・・・もうやばいな・・・目が霞んできた・・・燃、最後だ、今お前に出来ることはただ一つ、世界を救うことだ・・・俺の命を無駄にするなよ・・・?」
「あにき・・・兄貴!!」
慎之介は燃の上に倒れた。
「燃・・・」
達也は心配そうな顔でその光景を見ていた。
しばらくすると燃が起き上がった。
シンはすでに息絶えていた。
おそらく達也が撃ったのだろう。
「達也、ミサイルはどうなった?」
「あ・・・ああ、後もう少しだ。」
達也は慌てて作業に入った。
「ふう・・・」
燃は壁に寄りかかり、ため息をついた。
「燃、やばいぞ!間に合わない!」
「何だと?」
「出来る限りやっているが、このままだと2秒ほど間にあわない。
「2秒?」
燃はその数値に疑問を抱いた。
「俺のできることはもう終ったんだが、機械が間に合わない。」
その機械には『標的変換まで後2分30秒』と書いてあり、シンの押した機械の方には『着弾まで後2分28秒』と書いてあった。
「確かに・・・標的変換ってどこに変換したんだ?」
「ここの世界各地に設定した。だから急いで逃げるぞ!」
達也は走り出した。
「待てよ!20本のミサイルはどうするんだよ!」
「諦めるしかない。」
達也は辛そうに言った。
「なっ!?おい!待て!」
「何だよ!早く行かないと間に合わないぞ!」
「何だよじゃねえよ!20の町の人間を見殺しにしろって言うのか!?」
燃は怒った。
達也は燃に近づいてきて胸座をつかんだ。
「いいか?燃。俺たちの目的は世界を救うことだ。町を救うことじゃない。」
「お前・・・どうしちまったんだよ・・・?」
燃は苦しそうに言った。
「燃、実はな、ここと向こうの世界の空間が途切れたとき、別の空間とつながってしまう可能性がある。そのときのためにお前は生きなければならないんだ。迷っている暇は無い。行くぞ!」
達也は燃の手を引っ張った。
「・・・・・・分かった。」
燃も走り出した。
しばらく走ると、達也が止まった。
「?どうした?」
燃は達也の横から覗いた。
「なっ!?お前・・・」
そこには燃を殺そうとした女、リンが立っていた。