第46話 過去
燃の手は真っ黒になり、まるで熊のような手の形をしていた。
「お・・・お前・・・それは・・・」
シンには肩から腰まで熊に引き裂かれたような痕があった。
「エネルギーで熊の手を作ったんだ。」
燃は自分の手からエネルギーを離して自分の手に戻して見せる。
燃も自分の腹を抑えていた。
「ふっ・・・エネルギーか・・・お前疑問に思わなかったのか?」
シンが笑いながら言った。
「何が言いたい?」
燃はシンを見ながら聞いた。
「お前の師匠がエネルギーと気を合わせたとき、真っ白に輝いただろう?」
「それがどうした?」
「お前、知りたくないか?本当のお前を・・・」
燃は達也たちのほうを見た。
「兄貴!ミサイルはどうする?」
「今何とかしてる!」
慎之介は機械と向き合いながら言った。
「分かった。じゃあ、話してくれ。」
燃はシンの方に向き直り、そう言った。
「まず、ある子供がこちらの世界で作られた。この子供は対エネルギーの使い手として作られた。こちらの計画を実行するためにはエネルギーの使い手は邪魔だったからな。」
シンはゆっくりと話し始めた。
「まあ、作り方はクローンにエネルギーの使い手のDNAを混ぜ、さらに改造を加えた、といったところか。」
シンは作り方まで説明した。
「だが、その子供を作った二人の男女が我々の計画、つまり今やっていることだな。それに異を唱え、その子供を連れ去り、向こうの世界へと連れ去った。」
燃はシンの話を黙って聞いていた。
「もちろん、逃がさないように毒の塗ってあるナイフや銃で攻撃をした。当時あんなに良く効く毒は無くてな、しばらく効き目は現れなかった。やっと最近になって死んだようだけどね。死ぬまでの間、その二人はその子供の親の振りをした。養子を取り入れ、兄まで作ってね。」
燃は嫌な予感がした。
「そしてその親の振りをした二人は死に、その子供は山を歩いていた。その子供が倒れる寸前、偶然その時のエネルギーの使い手継承者が現れた。とまあ、こんなところか。もう分かっている通りこの子供は君だよ。」
シンはにやりと笑った。
燃は震えていた。
「な・・・そんな・・・嘘だろ・・・」
「本当さ。君は本当はこっち寄りなんだ。」
燃はとっさに慎之介の方を見た。
慎之介は燃から視線を逸らした。
「分かったかい?これが現実だ。」
シンは楽しそうに笑った。
燃が地面を蹴った。
次の瞬間、燃は慎之介の胸座をつかんでいた。
「兄貴!嘘だよな!嘘だって言ってくれよ!なあ!兄貴!」
燃は必死に叫んだ。
慎之介は黙っている。
「ぐっ・・・」
燃が自分の腹を抑え、うずくまった。
「燃・・・」
慎之介がそう呟いた。
達也はシンがレーザーガンを構えているのを見つけた。
「燃!後ろ!」
達也が叫ぶと同時にシンがレーザーガンを撃った。