第42話 破壊
「達也・・・」
燃は心配そうな顔で達也を見た。
達也は大分落ち着いたのか、いつもの顔に戻っていた。
「何だよ?親父のことならもう大丈夫だ。俺も覚悟は決まっていた。」
「そうか・・・」
「それよりもお前こそ止まるんじゃねえぞ?覚悟は出来てても目の当たりにすると意外と辛い。」
「・・・・・・わかった。」
燃たちは地図に沿ってずっと走っていた。
燃は前方に3人ほど敵が現れたので、その相手に向かって衝撃波を放った。
相手は吹き飛びあちこちの壁に叩きつけられた。
燃たちはそのまま走り続けた。
しばらくすると、あんなはスピードを落として燃の横に来た。
「ねえ、燃くん。あんまりエネルギーの無駄遣いはしないようにね?」
あんなは燃のことを心配した目で言った。
「分かりました。でもまだまだ大丈夫ですよ。」
「・・・・・・わかった。無理しないようにね。」
あんなはそう言って、また慎之介の隣に行った。
しばらく走ると、大きな空間に出た。
燃たちの目の前には大きな機械で出来た柱のようなものがあった。
「じゃあ、次は私の番かな?」
あんなが前に進み出た。
「師匠・・・?どういうことですか?」
燃はあんなの不審な言動に疑問を抱いた。
「燃くん。別次元と空間を繋げるのってものすごくエネルギーを消費するのは知ってる?」
「はい・・・」
燃も何処かでそんなことを訊いたことがある気がした。
「これが今回の件のエネルギーのたくわえ場所。」
あんなは柱を見上げた。
「じゃあ、早く壊しちゃいましょう。」
燃は手にエネルギーを送った。
「無駄だよ。」
あんなが言った。
「何でですか?」
燃はあんなの方に振り返った。
「撃っても跳ね返されちゃう。物理的な攻撃を受け付けないんだ。」
「じゃあ、どうするんですか?」
燃は嫌な予感がしていた。
「あれに莫大なエネルギーを流し込んでパンクさせるの・・・」
「その・・・膨大なエネルギーって・・・?」
「私がエネルギーと気をあわせてそれを流し込む。これしかない。」
あんなははっきりと言った。
「師匠・・・それじゃあ、師匠は・・・」
「うん。たぶん、生きてられないかな?」
「そ・・・そんな・・・そんなことって・・・」
燃はうつむいた。
「燃くん、これは私の使命なの。燃くんも使命・・・あるでしょ?・・・さあ、早く行って。これ以上私を迷わせないで。」
あんなは懇願するように言った。
「くっ・・・・・・・・・分かりました。」
燃は達也のことと、慎之介の行った言葉を思い出し、頷いた。
「じゃあ、俺も俺の使命を果たしてきます。」
燃たちは燃がそう言うとすぐに走り出した。
「うん。行ってらっしゃい。」
あんなは笑いながらそういい、エネルギーと気をあわせた。
その途端、辺りに暴風が吹き荒れた。
あんなの手からは真っ白に輝くエネルギーと気の合成体があった。
あんなは自分の体が少しずつ崩壊していくのを感じた。
あんなはそれを柱に押し付けた。
「さよなら・・・燃くん・・・」
あんなは最後にそう呟いた。