第36話 捕獲
燃はあんなの蹴りを伏せてかわした時、大蔵病院のほうに光が落ちるのを見た。
「隙あり!」
あんなはそう言って燃の頭上にあった足を、そのままかかとおとしで下ろした。
「ぐはっ!」
足は燃の頭に直撃し、燃の頭は地面にめり込んだ。
燃はそのまましばらく動かなかった。
このとき、もう既に28日が過ぎていた。
正人はすぐに病院から出て、塀に隠れた。
そして気をまとってステルス代わりにした。
やがて光の中から、一人の男が出てきた。
「こちらカイ。無事、到着しました。」
カイは無線に向かってそう言った。
「空は大分歪んで来てます。もう、後1,2日で準備は終るでしょう。」
カイは空を見上げながら言った。
正人も空を見上げた。
すると驚いたことに、空は歪んでいるなどというものではなかった。
空が大きく割れているのだ。
割れ目の向こうには真っ暗な世界が広がっていた。
「はい・・・はい・・・分かりました・・・では、失礼します。」
カイはそう言って電源を切った。
正人はその瞬間、塀から飛び出した。
「なっ!?」
カイは驚いて戦闘の構えを取った。
しかし正人の拳は構えを取る前にカイの胸に当たっていた。
「がはっ!」
カイは吹き飛び、塀にあたり、そのまま動かなくなった。
「よし。」
正人はそう言ってカイを背負い、慎之介の借部屋へと向かった。
「おーい、慎之介。敵捕まえたぞ、敵。」
正人はドアを叩きながら言った。
「ありがとうございます、正人さん。それで来た早々悪いんですが、燃と師匠を呼んできてください。」
「分かった。」
正人はそう言って慎之介の借り部屋を出た。
「達也君、いよいよだ。」
慎之介は振り返り、達也を見ながら言った。
「はい。頑張ります。」
達也はしっかりと答えた。
正人は燃とあんなのところへ行った。
そんな正人を出迎えたのは地面に顔をうずめた燃だった。
「何してんだお前?」
正人はそのままの意見を燃にぶつけた。
「あれ?おじさん、どうしたの?」
あんなは正人の存在に気がついた。
「ん?ああ・・・慎之介が呼んでる。今すぐ来いだってよ。」
「分かった。今行く。ほら燃くんも起きて。」
あんなは燃を引っこ抜いた。
「ぷはっ!死ぬかと思った!」
燃の顔は土まみれだった。
「慎之介君が呼んでるんだって、早く顔洗って。行こ。」
あんなは燃を促した。
「は〜い。」
燃は疲れたように返事をした。
「お前らどんな修行してんだよ・・・」
正人は呆れたように言った。
二人の格好を見るとボロボロなのである。
「とっても厳しい修行。」
あんなはそう言ってウィンクをした。
しばらくして三人は慎之介の借り部屋へと向かった。
「おーい、慎之介!連れてきたぞ!」
「ありがとうございます。じゃあ中に入ってください。」
慎之介はみんなを促した。