第35話 無駄
「なあ、達也君。」
慎之介は自分の持ち帰った、書類を読みながら達也を呼んだ。
「何ですか?」
達也も慎之介から渡された書類を必死で見ながら答えた。
「本当にあの作戦でいいのか?」
慎之介は申し訳無さそうに聞いた。
「今更何言ってんですか?」
達也は顔をあげて答えた。
「いや・・・何かその・・・俺の立てた作戦だからよ、申し訳なくって・・・」
慎之介はうつむき加減で話している。
「安心してください。俺の覚悟はもう決まってますから。」
達也ははっきりと答えた。
「そうか・・・」
慎之介は少し安心した顔をした。
「それよりも、急いでこの作戦の準備をしなくちゃ、ですよ?」
達也は明るく、だが何処か寂しそうに言った。
「そうだな・・・」
慎之介も辛そうに答えた。
正人は相変わらず病院の待合室でタバコを吹かしていた。
だが、今回はいつもと違っていた。
正人の前の机にはコンピューターが乗っていたのだ。
正人はすごい勢いでキーボードを打っていた。
なにやら真剣な顔をしている。
「ふう・・・やっと見つけた。」
正人は疲れたようにため息をついてそう言った。
パソコンに開いてあるのは次元空間についての一番まともそうなサイトだった。
正人は今度はすごい勢いでマウスを動かしている。
「これか・・・」
正人はすごく長い文章の書いてあるサイトを見て言った。
正人はそれを一気に斜め読みをした。
「これは・・・」
正人はその文章を印刷するとすぐに病院を飛び出した。
正人がついたところは慎之介が借りているアパートだった。
「おいっ!慎之介!出て来い!」
正人はドアを叩いた。
「何ですか?」
慎之介はドアを開けた。
「これ例のサイトにあったんだけどよ、こんなのが乗ってたぞ。」
正人は印刷した文章を慎之介に渡した。
慎之介はそれを受け取り、目を通した。
「これがどうしましたか?」
「どうかしましたかって・・・これが本当なら、俺たちは・・・」
「大丈夫です。無駄にはなりません。とりあえず、敵の目標は潰せますから、世界は救えます。」
「だけどよ!・・・・・・・いや、悪い。そうだな。今は目の前のことだけ見ていよう。」
正人は深呼吸して自分を落ち着かせた。
「すいません、俺のせいですよね・・・」
慎之介は元気なく言った。
「いや、悪いのは俺だ。すまなかったな・・・」
正人はそう言って帰っていった。
「慎之介さん。どうしたんですか?」
中で達也が呼んでいた。
「あ・・・いや、すまない。話を続けよう。」
慎之介はそう言って部屋の中に入っていった。