第33話 それぞれ
「ね〜んくん。」
燃が振り返ると、そこには満面に笑みを浮かべた小泉あんながいた。
「何ですか?」
「1ヶ月後まで私と修行しない?」
あんなは首をかしげながら聞いた。
「修行ですか・・・」
燃は何か用事があったかと、記憶を探った。
学校があるのだが、それは休めばいいので燃はあまり気にしなかった。
「いいですよ。俺も強くなっとかなきゃいけないですし。」
燃は何も無いことを確認してからいった。
「じゃあ、決まりね。今すぐにあの小屋に行こ。」
あんなはそう言って走り出した。
「あっ、ちょっと、師匠〜」
燃は慌てて追いかけた。
正人、達也、慎之介の三人はその場に立っていた。
「正人さん。」
慎之介は正人を呼んだ。
「何だ。」
「達也君を少し貸してもらえないでしょうか?」
慎之介は奇妙なことを言い出した。
「何でだ?」
正人は驚いた顔をして言った。
「ちょっと彼には今回の作戦で大事な役割を果たしてもらいますので、そのことについての詳細を・・・」
「別にいいが、俺からも少し聞きたい。」
正人は深刻な顔をした。
「・・・いいですよ。」
慎之介は少しためらった後、承諾した。
「まず、今回の作戦に変更はないか?本当にあの作戦で行くのか?」
「はい。変更はありません。」
慎之介の返事にためらいは無かった。
「そうか・・・分かった。」
正人は納得したようだ。
「もう一つ気になったことがある。」
「何ですか?」
「向こうの世界のことだ。」
正人は慎之介のことしっかりと見据えながら言った。
「と、言うと?」
「お前、何であんなに向こうの世界のこと知ってんだ?」
正人は答えを予測しながら言った。
「それは・・・」
慎之介は困った顔をしていた。
「頼む・・・お前の口から聞きたいんだ。」
正人は慎之介を心配した目で見ていた。
「・・・・・・分かりました。話しましょう。相変わらず正人さんには隠し事は出来ないや・・・」
慎之介はため息をつきながら言った。
「その言葉が聞きたかった。」
正人は嬉しそうに言った。
「俺は最近、こっちの世界に来た敵を捕まえて、通信機を奪い、敵をだまして向こうの世界に行って
偵察をしていました。あの情報はそのときに仕入れたものです。」
慎之介は真実を話した。
「そうか・・・やっぱりな・・・」
「勝手に動いてすいませんでした。」
慎之介は正人に頭を下げた。
「いや、お前は良くやった。あの作戦を立てたのもお前だろ?辛かったろ。ありがとな。」
正人はそう言って慎之介の頭を撫でた。
「よし。じゃあ、達也を頼む。達也、がんばれよ。」
正人は達也に向かって言った。
「お・・・おう。」
達也は曖昧に返事をした。
「じゃあ、達也君。よろしくな」
慎之介は手を差し伸べていった。
「はい。」
達也もその手をとり、うなずいた。