第32話 作戦
「兄貴、皆を連れてきたぞ。」
燃はそう言って部屋の中に入った。
「おう、サンキュ。」
慎之介は見ていた資料から目を離し、顔をあげた。
「とりあえず皆、円になって座ってくれ。要点だけ話すから。」
慎之介は皆を促した。
「要点だけってどういうこと?」
あんなは座りながら聞いた。
「詳しいことは一人ずつそれぞれに作戦を与えるってことです。」
「どういうことだよ?」
正人は眉にしわを寄せながら言った。
「つまりは、全員にまとめて話すと混乱が起きそうだから一人ずつに作戦を立てていこうと言うことです。」
慎之介は分かりやすく話した。
「つまり皆に話すと団結力にかけてしまう・・・そういうことですか?」
達也が慎之介を不審な目で見ていった。
「ああ、そうだ。」
慎之介は、はっきりと答えた。
燃は何故だかその瞬間、寒気が走った。
「と、言うことで要点を話します。まず、敵の目的、これはおそらく何処かと、この地球を大きな空間で
繋げようとしてます。理由は分かってません。そしてその目的が果たされるのは、約1ヵ月後。つまり
敵との決戦はおそらく1ヶ月後になるでしょう。それまでに準備を整えてください。それから、もしもその
間に敵が現れたら生け捕りにしてください。色々その敵から聞き出します。要点はここまでです。何か
質問は?」
慎之介は周りを見渡した。
「ほい。」
正人が手を挙げた。
「何で敵の目的が1ヵ月後だってわかったんだ?」
正人は慎之介に疑問を投げかけた。
「それは、空を見れば分かります。」
「空?」
「最近曇りが続いてるでしょう。その原因はよく見てみると雲の中に歪んだ所があるんです。敵はこれ
を使って何処かと地球を繋げようとしているのでしょう。そのゆがんだところを目立たせない為に天候
を操って曇りにしているのでしょう。そこを観測し続けて、パターンを読みました。」
「天候を操る?そんなことが可能なのか?」
「はい。敵の科学はこちらの科学よりも圧倒的に上です。だからそのようなことも可能なのです。」
「なるほど・・・」
「他には?」
皆、手を挙げなかった。
「じゃあ、個人個人で作戦を立てさせていただきます。まず、師匠から。」
慎之介はあんなを指名した。
「は〜い。」
あんなは笑顔のまま慎之介に近づいていった。
「じゃあ、他の皆は外に出ててください。」
燃たちは慎之介の言う通りにした。
しばらくするとあんなは先程と変わらない顔で出てきた。
「じゃあ次は正人さんで。」
正人はつまらなさそうな顔で部屋の中に入っていった。
「なあ、達也?」
「何だ?」
「何で皆別々なんだよ?」
燃はまだ納得できてないようだ。
「知らねえ・・・俺も訳分かんねえよ・・・」
正人も変わらない顔で出てきた。
「じゃあ、次は達也君で。」
達也は心配そうな顔で入っていった。
「正人さん、なんて言われました?」
燃は不安になってきた。
「ん。・・・いや、別に大したことでもなかったぜ。」
一瞬、正人が目を逸らした。
燃は余計不安になった。
しばらくすると、達也は蒼白な顔で出てきた。
「達也?大丈夫か?」
燃は心配して声をかけた。
「あ・・・ああ。」
達也は元気なく答えた。
「じゃあ、最後燃。」
燃は達也のことを心配しながらも入っていった。
「お前に言うことは単純だ。」
慎之介は顔を近づけた。
「な・・・何だよ・・・」
「敵の大将、シンを倒せ。そして何があっても立ち止まるな。いいか?何があってもだぞ。・・・それだけだ。」
慎之介は真面目な顔をしながら言った。
「て・・・敵の大将?そんだったら俺じゃなくて師匠とかの方が・・・」
「いや、師匠と正人さんには他にやってもらうことがある。」
慎之介は目を逸らしながら言った。
「・・・だからお前しかいない。お前が倒すしかないんだ。頼む!!」
慎之介は頭を下げた。
「それぞれの仕事が終ってから皆で戦えばいいじゃないか。それじゃ駄目なのか?」
「それは・・・訳があって出来ない・・・・・・だから頼んだぞ、燃。それだけだ。皆入ってきてくれ。」
慎之介は皆に呼びかけた。
燃の作戦会議は半ば強引に終らされた。
「これで皆、それぞれに作戦を授けました。後は敵が来るまで待ちましょう。以上で終わりです。
わざわざありがとうございました。」
そう言って慎之介は頭を下げた。