第28話 漆黒
「あれ?これでも死なないんだぁ?」
シンは面白そうに笑っていた。
「だ・・・誰が・・・ごほっ!げほっ!」
燃はたまらず血を吐いた。
「でも、さすがに辛そうだね。」
シンはそう言いながら、燃に刺さっている剣を捻った。
すると、燃の傷がえぐれて血が噴出した。
「ぐあああああああ!!」
燃は苦しそうな叫び声をあげた。
その瞬間、剣を握っていたシンが吹き飛び、塀に叩きつけられ、その塀は崩れた。
横から衝撃波が飛んで来てシンはそれを食らったのだ。
「燃くん、大丈夫!?」
衝撃波を放ったのは燃の師匠、小泉あんなだった。
燃からは何も返事が無かった。
「おじさん!燃くんをお願い!」
あんなはそう言うとシンが吹き飛んだ方向に目をやった。
正人は急いで燃の手当てをしている。
「なるほど・・・現エネルギーの使い手継承者か・・・」
先ほどまで笑っていたシンが真面目な顔になって起きてきた。
「そうだよ。君は?」
あんなも余裕が無さそうだ。
「俺は今回の件の・・・まあ、ラスボスとでも言っとこうかな。」
シンはふざけた口調で、だが真面目に言った。
「隠す気は全くないみたいだね。」
あんなは全身にエネルギーをめぐらした。
「ふっ・・・」
シンはもう一本の剣を抜いた。
一瞬、あんなが消えたように見えた。
だが、消えてはいない。早すぎて見えなかったのだ。
シンは気配で追っているらしく集中をしていた。
「はっ!」
シンは掛け声と同時に後ろへ剣を回した。
ガキンッという音とともにすさまじい衝撃が走った。
あんなが気のこもったパンチを繰り出し、それをシンは剣で受けたのだ。
あんなはパンチを止められると、また瞬間移動のように消えた。
今度は蹴りで攻撃を仕掛けた。
シンは剣を持ってないほうの腕で受け、剣で突きを繰り出した。
あんなは受けられた方の足の足首を曲げ、シンの手に巻きつけ、シンの突きを避けた。
しかし、それだけでは留まらず、あんなは巻きつけていない方の足でシンの顔面を蹴り飛ばした。
あんなは完全に蹴りが入ったので勝利を確信した。
だが、シンはわずかに急所をはずし、蹴られた反動を生かして剣を横凪に振るった。
剣はあんなの顔の真横に来た。
シンはにやりと笑った。
「くっ!」
あんなが死を覚悟した瞬間、漆黒の衝撃波が走り、シンの剣を砕き、シンの腕を飲み込んだ。
あんなが衝撃波が飛んできた方向を見るとそこには手を掲げた燃の姿があった。