第27話 シン
「もう終ったのか?」
正人は心配そうに空を見上げた。
「多分、終ったと思うけど・・・」
あんなはそう言いながら既に靴を履いていた。
「ん?どうした?」
正人はやけに急いでいるあんなを見て不審に思った。
「何か嫌な予感がするんだ。」
あんなの顔には余裕が見られなかった。
「・・・・・・」
正人も黙って靴を履き始めた。
燃は熊の死体の前で膝と手を地面につき、1人涙を流していた。
「くそ・・・何でだよ・・・なんでこんな事に・・・」
燃は相当落ち込んでいるようだ。
「うわあ〜本当に殺すとは思わなかったなあ・・・」
燃の後ろから声がした。
燃は慌てずにゆっくりと後ろを向いた。
そこには今まで見たことの無い顔があった。
背中には二本の剣が刺してある。
「誰だ?」
燃は警戒しながら尋ねた。
「どーも。始めまして。俺の名前はシンって言うんだけど、この子から聞いたかな?」
シンはそう言って死んでいる熊を指差した。
「そうか・・・お前が・・・」
燃の周りの空気は殺気で満ち溢れていた。
正吾から聞いた言葉によるとシンが正吾を改造した張本人らしい。
「恐いなあ・・・もっと穏便に行こうよ。」
シンは笑いながら言った。
「ふざけるな!!お前が・・・お前が正吾を改造したのか!」
「うん。」
シンは当たり前のように答えた。
「覚悟は出来てるんだろうな・・・」
燃はシンを思い切り睨んだ。
その瞬間、シンは燃の視界から消えた。
「何!?」
燃は目にエネルギー送る前に動かれたため、目で追えなかった。
「覚悟なんて必要ない。」
シンは燃の懐へ飛び込んでいた。
すごい勢いでかがんで燃に突っ込んでいったのだ。
両手には少し長めのナイフが握られている。
そのナイフで燃の両手首を刺した。
「ぐあっ!」
燃は唐突の痛みに叫び声をあげた。
刺したまま突進の勢いを止めず、燃を塀に叩きつけた。
「くそっ!」
燃はシンに反撃を加えようとした。・・・・・・が、出来なかった。
ナイフが燃の手を貫通して塀に刺さっているのだ。
「覚悟するのはお前だ。」
シンはもう二本、ナイフを懐から取り出し、そう言った。
燃は両手が動かないまま近づいてきたシンを蹴飛ばそうとした。
だが、簡単に受けられてしまった。
「すごい執念だね。」
シンはそう言って燃の両足のくるぶしにもナイフを刺した。
それもまたくるぶしを貫通し塀に刺さり、燃の足の自由を奪った。
「ぐあっ!!」
燃は歯を食いしばった。
「おや?そろそろ毒が回ってもいい頃なんだがな・・・」
シンは不思議そうに燃を見た。
「ああ。そうか!エネルギーを使って毒を回さないようにしてるのか!すごいね君。」
シンは愉快そうに笑った。
「じゃあ、もうちょっと強い毒を打ってみようか。」
シンはそう言って背中の剣の一本を抜いた。
「うりゃ。」
シンは燃の胸に剣を思い切り刺した。
剣は燃の体を貫通し、後ろにある塀をもやすやすと貫通した。
「ぐああああああ!!」
燃はあまりの痛さに悲鳴をあげた。