第22話 用事
「で?おじさんは私に何の用なの?」
燃にしがみつきながら、あんなは首をかしげて正人に聞いた。
「あ・・・おう。ちょっと燃の師匠って言うから、手合わせでもお願いしたいなぁと・・・」
正人はあんなに言われて用事を思い出した。
「なっ!?正人さん聞いてませんよ!?」
燃は驚いて言った。
「当たり前だろ。言ってねえんだから。」
正人はそのままの理由を述べた。
「ふ〜ん・・・でもこんなに小さい少女だよ?私あっという間にやられちゃうよ。」
「じゃあ、エネルギーを使ってもいいって言ったらどうだ?」
あんなは正人がそう言うとゆっくりと燃の方へ振り返った。
「ばらしちゃったんだ?」
あんなはじ〜っと燃を見つめた。
燃は怯えながら恐る恐るうなずいた。
「ばらしちゃったんだ?」
あんなは燃にしがみついてる手の力をよりいっそう強めた。
「っ〜〜〜」
燃は声にならない叫び声をあげた。
「まあまあ、その辺にしといてやれよ。」
正人が仲介役に入った。
「まっ、いっか。過ぎちゃったことは仕方ないし。」
あんなが起き上がると、そこには死体みたいになった燃だけが残った。
「で、手合わせだっけ?」
あんなはスカートについた土を落としながら正人に聞いた。
「あ・・・ああ。」
正人は動かなくなった燃を見ながら答えた。
「じゃあ、行っくよ!」
そう言ってあんなは地面を蹴った。
「おう。」
正人は真剣な顔になった。
あんなはまず、普通のパンチを繰り出してきた。
それに対して正人は信じられないほどのスピードであんなの手を取り思いっきり投げた。
あんなの体は大きな岩に当たり、岩にひびがはいった。
「いたた・・・おじさん強いね。」
あんなは腰の辺りをさすりながら起き上がってきた。
「何故本気を出さない?」
正人は不思議そうに聞いた。
「まず相手の強さを見るのは、戦いの基本だよ?」
あんなは人差し指を立てて揺らしながら言った。
「?その言葉・・・」
正人は聞き覚えがあった。
「そうだよ。だって私が教えた言葉だもん。」
あんなはそう言って胸をはった。
「何で正人さんが知ってるんですか・・・」
燃がやっと言葉を発した。
「そりゃ見てたからなあ・・・」
「見てたんなら助けてくださいよ・・・」
「まあまあ、過ぎたことを言っても仕方ない。」
正人はあんなを見てにやりと笑いながら言った。
「あ〜っ!私のセリフ〜!」
「はっはっはっ。」
正人は愉快そうに笑った。
「もう怒った!」
そう言ってあんなが飛び込んできた。
正人は殴ってくるのかと思い、構えた。
しかし、あんなは何もせずにただ突っ込んできた。
正人は油断して思わず食らってしまった。
「ぐはっ!」
正人は5メートルほど吹っ飛んだ。
「もうやめようよ。本当はこんな事しに来たんじゃないでしょう?」
あんなは口を尖らしながら言った。
「ほお・・・よく分かったな。」
正人は感心した。
「だっておじさん本気じゃないもん。すぐに分かるよ。」
「なるほど・・・」
「まあいいや。とりあえず中に入って。お茶でも奢るよ。」
そう言ってあんなは正人と燃を招き入れた。