第20話 賭け
燃は頭を抱えた。
燃は完璧に正人に油断をしていたのだ。
「お前の師匠ってどこに住んでるんだ?」
正人は楽しそうの聞いてきた。
「教えません。」
燃はきっぱりと断った。
「じゃあ、賭けでもするか?」
「賭け、ですか?」
燃は一応警戒した。
「ああ、俺とお前が戦って俺が勝てば情報を提供してやる。」
「そ・・・そんなの無理ですよ!俺が勝てるはず無いじゃないですか!」
燃は全力で断った。
「ただし!お前が勝ったら今までの入院費とかもただにしてやろう。」
「うっ・・・」
燃は正直、心が動かされた。
「そ・・・それでも勝てなければ意味が無いでしょう。俺勝てませんって!」
「じゃあ、こうしよう。お前はエネルギーを使って良い。それでどうだ?」
正人はそんなことを言い出した。
「そ・・・そんなの誰かに見られたら・・・」
「だったら人目のつかないところでやれば良い。」
「う・・・」
1時間後、結局燃は押し切られてしまった。
「じゃあ、一発入れたら終わりですからね・・・」
燃はそう言って体中にエネルギーをめぐらした。
「OK。OK。」
正人はどこか楽しそうである。
「じゃあ、どっからでもかかって来い!」
正人はそう言って両手を広げた。
燃は思いっきり地面を蹴った。
地面が陥没して土が宙に待った。
おそらく普通の人が見たら燃の動きは見えなかっただろう。
しかし正人は燃の繰り出してくる掌底を難なくかわし肘をつかんだ。
「なっ!?」
さすがに燃も驚いたようだ。
正人は燃の腕をつかんだまま膝蹴りを燃のわき腹めがけて放った。
燃は体を曲げてそれを避けると捕まれた手に掌底を放ち、正人の手から逃れた。
「なかなかやるな。」
正人は嬉しそうに言った。
「くっ・・・」
燃はまた、正人に向かって突っ込んでいった。
正人はカウンターも何もしないで避けた。
燃は反転しようと足を踏ん張った瞬間、地面が沈んだ。
「うわっ!」
燃はたまらず転んだ。
「うりゃっ。」
正人はそう隙を突いて燃を軽く殴った。
「なっ!?」
「俺の勝ちだな。」
正人は笑いながら言った。
「そんな!落とし穴なんて卑怯ですよ!」
「俺がいつトラップなしなんて言った?」
正人は意地の悪そうな笑みを浮かべた。
「くっ・・・」
「じゃあ、お前の師匠の所まで案内してもらおうか。」
「何しようとしてるんですか?」
「秘密。」
正人はそう言って、燃の手を取り、助け起こした。