第2話 嵐
「・・・確かにいやな天気だなあ・・・」
達也と別れてから燃は空を見ながらつぶやいた。
よく見ると塀には黒猫が5、6匹。そして電線にはカラスが7,8羽とまっていた。
人も少ない。というかいない。
何か幽霊とかが出そうな雰囲気だ・・・
「や・・・・やっぱり引き返そう・・・」
燃がそういった瞬間、空がカッと光りだし、風が吹き荒れた。
「うわっ!!」
燃は叫び声を上げ風に吹き飛ばされ、黒猫のいた塀にたたきつけられた。
「ブギャ〜!」
「シャ〜!」
黒猫は叫び声を上げて暗闇に消えていくものや、威嚇するもの、様々であった。
カラスももちろん逃げている。
しばらくすると、風による轟音、光による眩しさが無くなった。
「痛ててて・・・」
燃はそう言って顔を上げた。
先程の風と光は無くなり、黒猫とカラスもいなくなっていた。
風景も道端に人が倒れていること以外は何も変わりが無かった。
「!?・・・おい!大丈夫か?」
燃は先ほどの突風の被害にあったのかと思い、心配して近づいてみた。
外傷が無いか確かめるためにうつ伏せだったのを仰向けにする。
次の瞬間、燃はその容姿に思わず見とれてしまった。
とても可愛らしい女の子だったのだ。
「・・・っと、いかん、いかん」
思わず見とれてしまった自分に燃は恥ずかしくなる。
ためしに体を揺すってみる。
「お〜い、大丈夫か??」
起きる気配が無い。
手をとって脈をみてみる。
「・・・死んで無いよな・・・」
燃がどうしたものかと途方にくれていると、
「おい!そこの君!何をしているんだ!?」
と言いながら、警察官が近づいてきた。
「おっ、丁度良いかな。」
燃はこのままこの娘を警察に引き取ってもらって真っ直ぐ帰ろうとした・・・次の言葉を聞くまでは・・・
「そこから動くんじゃないぞ!お前を痴漢容疑で逮捕する!」
「・・・・・・・・へ?」
訳が分からなかった。
「ストーーーップ!!違う!誤解だ!」
「うるさい!こっちにおとなしく投降しろ!!」
どうやら聞く耳を持たないようだ・・・
その警察官がこっちに走ってきた。
「仕方ない!」
燃はその警察官に背を向け、逃げることにした。
燃は丹田から足にエネルギーを送り込んだ。
ズドンッと言う音がしてアスファルトにひびが入る。
その警察官が次に見たものはすでに小さくなっていた燃の後ろ姿だった。




