第14話 再戦
リンはナイフを取りだした。
「またそれか・・・」
燃にとって、このナイフはトラウマである。
「この方が確実なの。」
「へぇ・・・」
「何で生き延びたか教える気はない?」
「全く。」
「そう・・・それは残念ね。」
そう言ってリンはナイフを突き出してきた。
スピードはカールと大違いである。
しかし燃はかろうじてそれを避けた。
「っ・・・危ないな・・・」
「喋ってると死んじゃうよ?」
リンは次に後ろ回し蹴りを仕掛けてきた。
「うおっ!?」
燃はそれを紙一重で伏せてかわした。
リンは続けざまに逆の足で膝蹴りを放つ。
それは燃のわき腹にヒットした。
「ぐはっ!」
燃の体が宙に浮いた。
燃はたまらずわき腹を抑え、膝をついた。
「どうしたの?これで終わり?」
リンはつまらなさそうに言った。
「まさか。」
燃は笑いを漏らしながら顔をあげた。
「・・・・・・」
リンは少したじろいだ。
当たり前である。
わき腹は人体急所の一つであり、そこに膝蹴りが入ったのだ。
それで笑っている人間を見て、不審に思わないはずがない。
燃はすぐさま立ち上がった。
「何で平気なの?」
リンは思わず聞いた。
「平気じゃないさ。正直、ものすごく痛い。泣きたいぐらい。」
「じゃあ、あきらめれば良いじゃない。」
「嫌だ。あきらめたら殺されるもん。」
燃はわき腹をさすった。
「それに・・・」
「?」
「敵の強さを知るのは戦いの基本。それが今終ったところだ。」
「ふ〜ん。勝負はこれからって訳ね。」
「そういうこと。」
「その前にあなた何者?」
「そいつにも言ったけど・・・」
燃はカールを指差した。
「ただの医者の弟子だ。」
「ふ〜ん。その医者って誰?」
「いつも待合室でタバコふかしてる人。」
「変な人ね。」
「ああ、変な人だ。」
燃ははっきりと答えた。
燃とリンはまた、戦いの姿勢をとった。
あたりの景色は暗くてよく見えない。
まだまだ夜は続きそうである。