第12話 決闘
燃には不思議と恐怖が無かった。
おそらく一度、限りなく死に近づいたからだろう。
燃も攻撃態勢に入った。
「へぇ・・・戦おうとする奴は初めてだな。ほとんどが逃げて行くからよ。」
カールは面白そうに言った。
「あんたも相当体にダメージがあるみたいだからね。さっきの会話で分かったよ。」
燃はなるべく強気に出た。
「ほぉ・・・口だけは達者みたいだな・・・だが、俺も一般人には負けないぜ。」
「一般人には、でしょ?一般人じゃなかったら?」
「ははは!」
「?」
「お前面白いな。なかなか笑えるぜ。」
「それはどうも。」
「まあ、戦ってみないと分かんねえな。」
「それは同感かな。」
「お前、戦ったことは?」
カールは構えを取りながらそう言った。
「ないよ。」
「・・・・・・よく平然としてられるな・・・」
「一度殺されそうになったからね。」
そう言って燃も構えなおした。
「そうか・・・じゃあ、始めるか。」
「OK。」
カールはまずナイフを突き出してきた。
燃はそれを避けカールの足を引っ掛けた。
「おわっ!」
カールは何とか受身を取りすぐに起き上がった。
「ちっ!」
カールは舌打ちをしてナイフを横凪にはらった。
燃は肘を押さえ、カールの攻撃を止めた。
「お前、何者だ?」
カールは先ほどから気になっていたことを口に出した。
「別に?ただの医者の弟子だよ。」
燃は適確に答えた。
「医者ぁ!?何だそりゃ。」
カールは不意をつかれた。
燃はその瞬間を見逃さなかった。
足と手にエネルギーを送り込み、軽く地面を蹴った。
すると、地面はめくり上がりアスファルトの破片が飛び散った。
「なっ!?」
カールは一瞬何が起こったのか分からなかった。
燃はカールの懐へ飛び込み軽く掌底を当てた。
「がはぁ!」
カールはものすごい勢いで塀に叩きつけられた。
燃はカールに歩み寄った。
「戦いの最中に気を抜くなんて、戦いなれてないな?」
「お前・・・本当に・・・何者だ・・・」
カールは途切れ途切れに言った。
「だから、ただの医者の弟子だってば。」
燃は微笑みながら言った。