第10話 平和
「お〜す。」
燃はいつも通り学校の友達に挨拶をした。
「おう、燃。昨日はどうしたんだよ?」
「いや〜、ちょーっと風邪を引いちゃってさあ。」
「な・・・なに?」
友達はなにやら驚いた表情だ。
「ど・・・どうした?」
「いや、馬鹿は風邪を引かないって言うからさ・・・馬鹿でも風邪引くんだなあって。」
「3年間皆勤の奴がなに言ってるんだよ。」
燃はきっちり悪口を返してやった。
「ちっ・・・」
「お〜い、燃。昨日はどうしたんだ?」
別の友達が来た。
「いや、風邪を・・・」
「お・・・お前が?」
「もういいよ・・・」
燃は同じような考えしかもたないクラスメートに呆れた。
しばらくして、担任の教師が入ってきた。
「出席取るから、早く席につけ〜。」
ごくありきたりな眼鏡をかけた男教師である。
「え〜、今日は燃が休んでないから何も心配しなくて良いな。」
「・・・先生まで・・・」
燃はかなり落ち込んだ。
「燃君、今日は災難だね。」
隣の席の渡辺洋子が話し掛けてきた。
活発で元気とカンの良い女の子である。
「お前は俺を信じてくれるのか!!」
「ううん。全然。むしろ一番信じてないと思うよ?私は燃君がずる休みしたと思ってるから。」
「そんなことするわけ無いだろ。」
「どうだろう?風邪と偽って実は他の事してたとか。」
「・・・なんか微妙にかすめてる・・・」
「え?」
「いや、なんでもない・・・」
燃は今日と言う日で信用できる友達がいなくなった気がした。
「哀れな俺・・・」
「うわあ・・・自分を哀れんだら人生最後だよ?」
「もうほっといてくれ・・・」
燃は1人虚しくその日の授業を受けた。
その日の授業は全て終った。
「・・・なんか下校恐怖症になったかな・・・」
下校をしようとすると燃の体は勝手に震えるのである。
「どうしたの?下校するのが怖いの?」
洋子である。
「・・・またか・・・」
燃は図星を言われさらに落ち込んだ。
「またとは何よ。心配してあげてるのに。」
「嘘つけ。お前俺見て楽しんでるだけだろ。」
「あはは。ばれたか・・・あっ・・・もうこんな時間。じゃあ、またね。」
そう言って洋子は走ってどっかいってしまった。
「まったく・・・」
燃にとっては天敵に近い存在である。何故だか苦手なのである。
「よお。」
大蔵達也が後ろから話し掛けてきた。
「おお。達也。」
「こんな所でどうしたんだ?」
「いや、その・・・下校が怖くなってよ・・・」
「・・・まじで?」
「うん・・・」
「あっはっはっ!!」
「笑うな!!」
「わりぃわりぃ。まああんなことがあったんだから仕方ないだろ?」
達也は笑いをこらえながら謝った。
「ちぇっ・・・」
「まぁまぁ・・・一緒に帰ってやるから・・・」
「何かその言い方、腹たつなあ・・・」
文句をいいながらも燃は達也を頼ることにした。
外は一昨日と同じで薄気味悪い天気だった。
燃は身震いをした。
達也が呆れた目をしている。
「何だよ?」
「いや、本当に下校恐怖症になったんだなあって。」
「ほっとけぃ!」
「相変わらず面白い奴だな。」
達也は笑いながらそんなことを言った。
燃は無事、家に届けられた。
「完璧にガキ扱いされた・・・」
燃はそんなことを言いながらごく平凡な一日を終えた。