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第十一話 悪魔と天使と新人魔法少女 その7

「ぐわあああ、脳がっ……脳がっ……あれ? なんともないわ?」



「あ、あの毒音波はなんだったんだよ、一体!?」



「あの毒音波は、悪魔が張った結界に、狼姫ちゃんが触れたせいで鳴り響いた音でしょう。中は大丈夫ですよ」



「そ、そうなんですか、むぅ……」



「てか、わらわのせいなのかー!?」



 そ、そういうオチですかー! とにかく、ヴィジュアルバンド部の出入り口に張ってあった結界に狼姫が触れたせいで発生したようだ。あの脳みそが破壊されてしまうんじゃないかと思ってしまった不快な音の衝撃……毒音波は――。



「な、なあ、ここってライブ会場かよ?」



「あれ、おかしいっすね。ここは元職員室なだけあって、ただ広いだけなんすけどねぇ……」



「じゃあ、あのステージはなんなんだよ!」



「うわわ、胸倉をつかむなっす! つーか、ここにはステージなんて存在しないはずっす!」



「し、誰かいるわ! ああ、天井のライトがステージに向けて――ん、なにかいる! 件の悪魔が姿を現したようだわ!」



 ヤス曰く、ヴィジュアルバンド部の部室にはステージなんて存在しないとのこと――ん、天井に据えつけられている赤、青、黄、緑、そしてピンク色の五つの照明機器が急に点灯し、グルンとステージの中心に五つの光が集中する。出てきたわね、悪魔が!



「黄金の翼がついたピンクのド派手なステージ衣装を着た馬男が現れたぞ、沙希!」



「うわ、なんかダサい! センスがないわね」



「あれって演歌歌手の衣装というヤツかしら?」



「さ、さあ、センスはともかく、似合わない上にダサいのは確かね」



「ヒーヒヒン、似合わないし センスがない? それにダサいだァァ~~! 生意気な人間だな、ブルル! コイツは魔界のロックンローラーである俺様――アムドゥスキアス様の最高のステージ衣装だ。それを馬鹿にする貴様らは万死の値するのだァァ~~!」



 ネックの部分が馬の頭のかたちをした特注品っぽいエレキギターを抱える黄金の翼がついたピンクのド派手はステージ衣装に身を包む馬頭人身の大男が、ドーンとステージの上に現れる。んで、そんな馬頭人身の男は、ズギャギャギャッと愛用のエレキギターの弦を激しくかき鳴らしながら、魔界のロックンローラーを自称するアムドゥスキアスと名乗る。



「ぐっわぁ、すっげぇ耳が痛いっ! なんてヘタクソな演奏なんだ!」



「アハハハ、食べ物のことした頭にない狼姫にも判るくらい下手な演奏なわけだから、これは酷い!」



「な、なにィィ! 俺の演奏がヘタクソだと! ふざけるな、ブルルルッ!」



「お、怒るなよ、馬夫クン!」



「な、なんだ、その名前は! 俺の名前はアムドゥスキアスだ、ヒヒヒーン!」



「いいじゃん、馬夫の方が愛嬌があるし~☆」



「ふふふ、ふざけるなァァ~~!」



 があああ、ヘタクソにもほどがある! しかし馬夫の野郎、気づいてないわけ? 自分の演奏が、頭の中は食べ物のことでいっぱいな能天気な狼姫にも苦痛を与えるモノだってことに――うええ、余計に気分が悪くなってきた。



「まったく、いい加減にしなさい! アナタの演奏は聴き手を不快な気分にさせます! それが理解できないんですか! 不快で鬱陶しいんです!」



「な、なんだとぉぉ~~!! うお、おっかない顔だなぁ、なにをそんなに……」



「これが怒らずにいられますかっ! ド素人のヘタクソな演奏なんか聞きたくありません!」



「うがあああ、ド素人って言われた! お、俺はロックンローラー歴数千年なのに……」



 キッと真田先生が、馬夫に対し、不快だーっ! と、グワッと般若の形相で言い放つ。こういう奴にははっきり言ってやらないとね――え、ロックンローラー歴数千年!? 嘘だぁ~!



「真美子、この馬夫殿の相手は麻呂がするでおじゃる。実を言うと、麻呂もロックンローラーでおじゃる。ほれほれ、これが麻呂の愛用の弦楽器でおじゃる」



「む、琵琶!?」



 ん、馬夫の相手は自分が――と、真田先生の使い魔である烏帽子をかぶった兎こと兎田兎麻呂が言い出す。む、愛用の琵琶を抱えているわね……え、アンタもロックンローラーなわけ!?



「ブヒヒヒン、琵琶だとぉぉ~~! そんな古典的な楽器で俺のヘル・ザ・ディストラクションの旋律に勝てると思っているのかよ! オラアアアアアッ!」



 むぅ、馬夫の先制攻撃――いや、先制演奏が始まる。ぐえええ、酷い音だ! 毒音波だ、長く聴いていると私のSAN値がやばいことになる!



「や、やめなさい! アナタの演奏は毒なんです! ううう、頭がっ!」



「まあまあ、ここは麻呂に任せるでおじゃる。とりあえず、麻呂の後ろに――」



「ううう、兎麻呂……任せるわ!」



「承知したでおじゃる。では、麻呂も、この琵琶で演奏を――」



 兎麻呂はスッと立ちあがる。獣人形態というヤツか? さて、兎麻呂の前足が私達人間のような手のように器用にあつかえる形状に変化する。んで、器用に扱えるように右の前足――右手に(ばち)を握ると、ジャーンジャーンと愛用の琵琶の弦を激しくかき鳴らし始める!



「う、うげええ、酷い演奏だ! は、吐き気がっ!」



「う、兎麻呂……や、やめなさい! アンタも演奏も毒音波だわァァ~~!!」



 うひゃあああ、こりゃたまないわ! 馬夫の演奏を相殺する目的なんだろうけど、兎麻呂が演奏する琵琶の音色も、地獄の旋律に変わりはないっ……毒音波だァァ!



「な、なにィィ! 俺のヘル・ザ・ディストラクションの弦がっ!」



「う、馬夫が演奏をやめたわ!? 弦が切れた?」



 馬夫が毒演奏を突然やめる。どうやら愛用のエレキギター――ヘル・ザ・ディストラクションの弦が切れてしまったようだ。ふ、ふう、兎麻呂も毒演奏をやめる……た、助かったぁ!



「く、なんてことだ! 俺の演奏が、あんな古典的な楽器の演奏に負けちまうなんて! し、信じられないぜ、ブルル! だが、次は負け……ゴギャア!」



「ふ、ふう、もう演奏なんかさせない!」



 兎麻呂がかき鳴らす琵琶の旋律に押し負けた結果、愛用のエレキギターことヘル・ザ・ディストラクションの弦が切れた!? さて、馬夫は懲りずに再び毒演奏を始めようとするので、私をそれを阻止すべくホッキョクグマに変身し、ヘル・ザ・ディストラクションに右の熊パンチを叩き込みネックの部分をへし折るのだった。



「わ、沙希が熊に変身した……か、可愛い~♪ 私も熊に変身したい!」



「変身は私の得意分野であって、早苗姉ちゃんの特技は……うお、早苗姉ちゃんも熊に変身した!」



「わ、ホントだ~☆ 灰色熊(グリズリー)かな?」



「むぅ、早苗姉ちゃんの固有特技も変身なのかなぁ?」



「ん~、沙希ちゃんの姉だし、固有特技の波長が似ているんだよ――そんな感じでOKじゃない?」



「むぅ、そうなのかなぁ……」



 姉妹故に波長が似ているねぇ、早苗姉ちゃんの使い魔である男装女子な女性型夢魔(サキュバス)のレインが、そうは言うけど、ちと腑に落ちないなぁ。早苗姉ちゃんも、属性こそ違えど、私と同じ魔眼を持っているし……。



熊法少女(くまほうしょうじょ)が増えたわね」



「サマエル、その語呂合わせは、ちょっと……」



「そんなことより、あのお馬さん、すっごく怒っているわよ、沙希!」



 熊法少女って、なによ、その語呂合わせは! と、それはさておき、ゴゴゴゴッと馬夫の身体のあちこちから炎が噴出している。そのおかげでド派手なピンクのステージ衣装が台無しに……い、怒りの炎ってヤツ!?

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