第十話 失われた記憶を求めて! その7
私達は殉教者の遺品倉庫から立ち去る。なんだかんだと、狼姫の失われた過去を紐解くことができなかったしね。ま、私は色々と収穫があったからいいんだけどねぇ~☆
「フフフ、得をしたねぇ沙希。新しい使い魔をGETできたわけだし――」
「まあね~☆ それにしてもサキュラ様って何者? ひょっとして私の前世だったりする?」
サキュラ様って存在が何者かは知らないけど、そんなサキュラ様とやらに仕えていたリュシムナートを使い魔できたしね!
「ヘルメスが言ってたんだけど、アンタって吸血鬼だったのね。しかも真祖吸血鬼に近い存在だったとは――」
「真祖吸血鬼? ああ、サキュラ様が創造した私を含めた四人のことカナ?」
「え、真祖はアンタを含めて四人いるわけ?」
「サキュラ様ぁ、忘れてしまったんデスカ?」
「むぅ、その前に日本語をしゃべれるんじゃん!」」
さて、ヘルメス曰く、リュシムナートは吸血鬼のようだ。しかもサキュラ様って奴が創造したという四体の真祖のひとりらしい。そういえば、普通の吸血鬼は太陽の光が弱点で太陽に光を浴びると、その身が灰となって消え失せてしまうらしいけど、真祖であるリュシムナートの身には、そういった吸血鬼の弱点らしきモノが見受けられないのよねぇ――つーか、片言だけど、日本語をしゃべることができるじゃないか、お前ェェ~~!
「沙希、気をつけなよ。吸血鬼は魔物ハンター達にとって一攫千金を得られる絶好の希少種の魔物だからね。一緒にいると君まで狙われる可能性があるよ」
「ま、そん時は返り討ちにしてやんよ!」
吸血鬼を一攫千金を得られる絶好の獲物である。そうヘルメスが言う。ひゃ~面倒くさい輩に私まで狙われちゃいそうね。
「しかし、殉教者の遺品倉庫内は宝の山だね。ああ、リチャードが君に仕えたいって言うから、彼が憑依している刃が折れた剣を持ってきたよ」
「うへ、勝手に持ってきちゃったわけ? うーん……」
むぅ、ヘルメスが殉教者の遺品倉庫内からリチュードって騎士の亡霊が取り憑く折れた剣を持ち出してくる。さ、流石は泥棒の神と言われるだけあるわね。
「フ、やるわね、ヘルメス。ああ、私も対抗して、このとおり……ニヤリ♪」
「ああ、あっちゃん! そんなモノ連れて来ちゃダメって言ったじゃん!」
「む、あのメアリーって幽霊じゃん! それに子供だけど河馬も……」
むぅ、愛梨――いや、その身体を共用することもできるアヒルのアフロディーテが、殉教者の遺品倉庫内で出会ったメアリーって名前の貴族女性の幽霊と子供の河馬を連れている。おいおい、メアリーはともかく、河馬はどこから連れて来たんだよ、お前!
「んんん、この気配は神の分霊か!?」
「マジか、クロベエ!」
てか、さっきまでいなかったタツの使い魔である黒い狐のクロベエが、いつの間にか私達の中に紛れ込んでいるんですけど!
「タウエレトです。暗い倉庫の中にいたところを、そこにいらっしゃるお嬢様に連れ出してもらったんです」
河馬がしゃべる! タウエレトって名乗っているけど、その神の分霊っぽいわね。うーん、きっと殉教者の遺品倉庫内にあった河馬のぬいぐるみにでも宿っていたんだろう封印された状態で――が、その封印を愛梨&アフロディーテが解いたことで、神の力とやらを発揮し、本物の河馬に変化したってところかな?
「まさか真祖が生き残っているとは意外です。吸血鬼ハンターの知り合いが聞いたら泣いて喜ぶレベルの存在ですね、ウフフフ♪」
ミカエル先生が意味深なことを――え、そんなにレアな存在なの!?
「さ、一旦、帰宅するかぁ」
ふう、いつまでも浪岡自然公園内にある図書館の前にいても埒が明かないよね。地下エリアにあるミカエル先生や白蛇王が管理運営する邪神討伐機関こと大天使教会S市支部内の曰くつきの場所――殉教者の遺品倉庫内には、狼姫の過去に隠された秘密を紐解く遺品等は、あの三対六枚の翼が見受けられる女神像以外、存在しないっぽいしね。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆
「お帰り、沙希……ん、変なのが混じっているわね」
「変なのって誰のことよ!」
「あっちゃん、冗談を真に受けちゃダメよ!」
さて、帰宅した私と狼の姿に戻った狼姫を居候であるアメショーの朱莉が出迎える。ああ、一緒について来た茜とサマエルはともかく、愛梨とアフロディーテ、それにリュシムナートという闖入者も一緒なんだよなぁ。
「あ、そうそう、アンタが留守の間にお荷物が届いたわよ。んと、差出人は名井有人って人物みたいね」
「え、名井有人からの荷物が届いた!? むぅ、まさかアイツ自身が届けに来たんじゃ……ま、とにかく、これで判るかもしれないわね」
「そういえば、名井有人にメルしてたね。サキュラ様って奴が何者かって知っている――ってさ?」
「うん、アイツならなにか知ってそうだからね」
困った時は名井有人に訊いてみよう! とまあ、そんな感じで彼にメールで訊いてみたわけだ。そうしたら、例の荷物が届いたってわけだ。メールしてから三十分も経ってないのに、すっげぇ迅速だなぁ。
「ん、名井有人からメールが来てるわね。何々、『やあ、君からのメールは、なんだかすっごく久しぶりな気がするんだけど(・3・)。ま、それはどうでいいや、サキュラって人物は古代の魔法少女かもしれないよ、沙希。そんなわけで彼女についての詳細が記されているかもしれない本を君にプレゼントしよう』……ふむ、荷物の中身は本みたいね」
「沙希、荷物は食べ物じゃないのか……」
「あ、コラ、狼姫! 勝手に開けちゃダメ!」
「あら、本のようね。何々、題名は魔女と魔法少女の歴史かぁ、どれどれ~☆」
「ああ、サマエル! 私が先に読むつもりだったのに……」
名井有人が送ってきた荷物の中身は一冊の本だ。んで、題名は魔女と魔法少女の歴史。この本の中に記されていればいいんだけどね。サキュラという人物についての詳細が――。
「ん、それじゃ茶の間へ行こう。そこで読んでみましょうか――あ、冷たい飲み物を悠太に用意させるわ」
さ、魔女と魔法少女の歴史って本を茶の間で読んでみるとしよう。丁度いい具合に、そんな茶の間に弟の悠太がいるから、アイツに冷たい飲み物を用意させちゃおうかしら~☆
「だっだいまぁ~悠太☆ あ、早速だけどさ。私のお友達の飲み物を用意してくれる?」
「う、うえぇ、なんでだよ! つーか、ミイラのコスプレさんまでいるのかよ……うお、三嶋! お、おう、判ったぜ。ジュースを用意するわ!」
「あら、素直ね。てか、愛梨と知り合いなの?」
「うん、同級生よ……って、沙希さんは悠太君のお姉さんだったんだ!」
「クククク、あの小僧は愛梨にホの字のようだわ」
「えええ、あっちゃん! それマジ?」
「ふむふむ、あの素直な態度の裏には、そういう事情があったのね、クククク♪」
ほう、悠太と愛梨は同級生なんだ。んで、彼女にホの字なわけね♪ フフフ、判る気がするわ。変身している時の愛梨は美人だし、巨乳だし……ん、元の地味な眼鏡娘な愛梨の方が好みなのかしら!?
「さてと、いつまでも、全身包帯姿っていうのも変な感じね。私の服じゃサイズが合わなそうだから、早苗姉ちゃんの服でも拝借しちゃおうかなぁ」
おおっと、忘れていたわ。リュシムナートは全身包帯姿ってことを――てか、コイツ意外とスタイルがいいのよね。おまけに顔面を覆う包帯を解くと、その下から褐色肌の南国美女って感じの容貌があらわとなる。ま、とりあえず、早苗姉ちゃんの服を拝借しておくかな。私の服だとサイズが合わなそうだしねぇ。
「沙希ちゃん! この本には、あのディオナって女の人とアレスって魔犬のことも載っているわ!」
「え、えええー! サキュラって人物の詳細よりも、そっちの詳細を先に見つけちゃったか! ――てことは、アンタそっくりな女の人は魔法少女だったのね!」
「ムムムム、そのようだ! 気になるから、その本を寄越せっ!」
ムムム、サキュラって人物の詳細よりも先に、愛梨のサイコメトリーのよって判明した鉄の十字架および三対六枚の翼を持つ女神像の持ち主――狼姫そっくりな女性ディオナ、それに魔犬アレスに関する詳細が記されたページを茜が、名井有人が私宛てに送ってきた魔女と魔法少女の歴史って題名の本の中から見つけるのだった。




