第八話 魔法少年としゃべる獣達 その6
「私も巨大化しちゃおうかな♪」
「ちょ、ダメェ! そんなことをしたら服が破れちゃう!」
「気にしない、気にしない♪ 細かいことなんだし~☆」
「こ、細かいことなんかじゃないィィ! 絶対、阻止してやるわ!」
「うぬぅ、小癪なァァ~~!!」
「私の身体をこれ以上、好き勝手に弄らせないんだからっ!」
三嶋と一体化しているアフロディーテが、自分も巨大化するって言い出す。だけど、三嶋が抵抗し、巨大化ができないって感じだ。しかし、一人漫才をしているようで笑える光景なんだよなぁ。
「フフフ、巨大狐とはな。まさに怪獣だ!」
「お、お前が言うなァァ!」
アポロン、お前は巨大フェレット……怪獣フェレゴンじゃないかっ! とにかく、俺は怪獣じゃないぞ!
「どうでもいいが、あの怪獣を退治しなくてはな」
「おう、判っているよ!」
でかさなら負けちゃいない! ここはアポロンと協力してアイツを――巨大HG倒さなくちゃ! だが、アイツらは実体化した状態を解除し、実体の存在しない気薄な幽霊という状態にも自由に変化させられるんだったな。厄介だ、いくら巨大化したとはいえ、倒せるのか、俺に……。
「遊ンデイル暇ハナイゼ、ウガガガアアアッ!」
「わあ、今度は分裂か! しかもでかいままかァァ!」
巨大HGが、バッと分裂する。おいおい、でっかい姿のまま分裂するなんて反則だァァ! だが、負けねぇ……やってやるぜぇ! 俺は意を決し、分裂し増えた巨大HG共に突撃するのだった!
「あ、あるぇ~? 身体が縮み始めた……うおお、人間に戻れたっ! ラッキー♪ う、だけど、状況的に不味いよなぁ?」
「グゲヘヘ、コイツ人間ニナッタゾ!」
「オマケニ小サクナッタ! ヒャッハァ、踏ミ潰シテヤンヨ、ウガアアアッ!」
「ちょ、うおわあああーっ!」
「あ、ヤバ……巨大化の術が解けちゃった。ん~大体、三分くらいしか持続しないのよね、ウフ♪」
「ちょ、それって某巨大ヒーローじゃない! 悠太君が危ないっ!」
と、三嶋と一体化しているアフロディーテが、気まずそうに苦笑をしながら、そんな説明を……って、おい! その巨大化の術っていうには、たった三分しか持続しないのかよ!? さて、巨大化の術が解けた途端、身体が縮み始める。それに身体が縮むと同時に狐の姿から人間に戻ることができぜ、ラッキー♪ だけど、今の状況下で素直に人間に戻れたことを喜んでいるヒマはない!
「なんとか逃げなくちゃ……ま、間に合わない! 俺、万事休す!」
グワアアアッと巨大HGのでっかい前足が襲いかかる! ど、どうなる、俺――っ!
☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆
「おっそいわねぇ。まだ来ないのかしら? モグモグ……」
「まあ、気楽に待ってましょうよぉ、先生」
「てか、空を飛べるっていいわね、沙羅ちゃん」
「フフフ、まあね。この姿の利点だし~☆」
今にも夜行性の猛獣が音もなく近寄ってきていそうな夜のサバンナという物々しい風景が縦横無尽に広がる固有結界をつくり出した主――先生こと逢坂美月&カラスの沙羅は、山頂が煌々と光り輝く山の麓でキャンプファイヤーをしながら、俺達を待っている。そんな先生は、探検隊の衣装を着こなす眼鏡の美女といった姿からライオンの姿に戻った状態でガリガリモグモグとキャベツを食べている。肉食獣であるライオンにあるまじき姿なのが笑える♪
『あら、美味しそうなキャベツですね。私にも分けてくださるかしら?』
バキィ! ピキピキッ――と、キャンプファイヤーの火灯りに照らされる先生と沙羅の頭上の空間に亀裂が生じ、バリッと砕け、次の瞬間、小さな割れ目ができる。んで、そんな小さな空間の割れ目から一匹の白い蛇が顔を出す。
「ん、お前は我が盟友ミカエルか!?」
「ビンゴ~☆ ウフフ、こうして会うのも一年ぶりかしら? ああ、そういえば、初めて会った時もライオンの姿だったわね、アル……」
「あー、今は逢坂美月だ。そっちの名前で呼んでくれ、我が盟友ミカエル!」
「フフ、名前をイチイチ変更するだなんて愛も変わらず物好きだわ」
白い蛇の名前はミカエルというらしい。先生とは古い友人のようだ。
「わお、先生のお知り合いには大物が多いですね! あの蛇さんは大天使教会の幹部さんじゃないですか!」
「まあ、長く生きていれば、同じ志を抱く仲間であり、強敵も多いということよ、沙羅ちゃん」
「同じ志を抱く仲間であり、強敵でもある? ふーん、複雑な関係っぽいわねぇー」
「それはともかく、この私の固有結界に穴をつくってまで、ここへやって来た理由はなにかなぁ?」
「フフフ、判っているクセにィ☆」
先生がつくった固有結界に穴を開けた? それはともかく、同じミカエルという名前の人物を俺は知っている。まさかとは思うけど……。
「さてと、我が盟友ミカエル。私の固有結界に入り込んできた理由を聞かせてもらおうか?」
キャベツを口にくわえたまま先生は、キッとミカエルをにらむ。ああ、そういえば、この蛇さんはどんな理由で、わざわざ固有結界を破ってまでやって来たんだろう?
「見学です☆」
「見学だと? 本当はウチらのメンバーを引き抜きに来たんじゃないの?」
「さあ、どうだか? ニヒヒヒ……」
「此奴め、クククク……」
「ああ、どうでもいいけど、でっかい猫がやって来たわ」
「でかい猫? フ、ここへ真っ先にやって来たのは、私の直弟子で神倉真理か! ん、直弟子その二こと芦沢修也も来たな」
ズシャアアアッ! と、頂上が光り輝く山の麓でキャンプファイヤーをしながら、俺達が来るのを待っている先生と沙羅、そしてミカエルのもとに大きな猫が滑り込むようにやって来る。チーターの神倉真理とユキヒョウの芦沢修也だ。
「あれぇ、あの狐さんはいないね。どこどこ?」
「ああ、アイツなら……ほら、来たぞ」
「うう、逃げたらボコボコにされちゃった……」
神倉と芦沢には先を越されたけど、俺、朱莉、アポロン、アーたん、クロベエ、それにアヒルのアフロディーテと一体化し、地味な眼鏡っコという容姿が一転、妖艶な美女へと変貌を遂げた三嶋愛梨も、頂上が光り輝く山の麓へとたどり着く。
「おやぁ、私のかけた獣の呪縛を自力で解いたみたいね。流石は魔法少年♪」
「うう、やっぱり、アンタの仕業だったのか! まあ、元に戻れたからいいけど……」
突然、狐の姿に変身したのは先生の仕業だったようだ。むぅ、それはともかく、俺は巨大狐の姿から元の人間の姿に戻ることができたわけだ。あ、でも、巨大HGと戦っている最中に人間に戻ってしまったので、巨大HGのでかい足にグシャッと踏み潰されそうになったし、おまけに小さなHGにフルボッコにされてしまった……。
「お前があの時、元に戻らなければ、あの亡霊共にボコボコにされることはなかった!」
「お前はアレでも妖狐か! 同じ狐として情けないと思う!」
「うううう、メチャクチャ言いやがって……」
ああ、アポロンとクロベエも分裂して増えた巨大HGにボコボコにされてしまったわけだ。つーか、逆恨みされる覚えはないぞ!
「しかし、あのアーたんがいなければ、俺達は今頃……」
「あ、ああ、すげぇよ、アーたん!」
「ニャハハ、褒められちゃった♪ でも、特になにかやったわけじゃないんだけどなぁ……」
さて、俺達がなんとか無事でいられるのは、アーたんのおかげである。彼女がいなかったら、俺はきっと……。




