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第七話 ライバルは魔法少女! その5

「お姉さん、助けてあげるから、その本を頂戴っ! うりゃあああっ!」



 右手をホッキョクグマ、両足を恐竜に変化させた私は、シャッと素早く工作員(エージェント)Nを追いかけるゾンビの一体のもとに歩み寄り、ホッキョクグマのモノの変化させた右手の肉球を思い切り叩き込む! 肉球張り手だァ~!



「グ、グゲゲ、身体と頭が分離してじまった! なんでごどずるんだ、ぎざまァァ!」



「うお、ゾンビがしゃべった!」



「沙希、まだ知性が残っているみたいだ。だけど、容赦なく破壊しちゃいなよ」



「そのつもりよ! うらあああっ!」



 右の熊張り手がクリーンヒットしたゾンビの頭がドパァァン! と、勢いよく身体から分離する! さて、そんなゾンビが私に対し、不平不満の言葉をくちにする――むぅ、少しだけ知性が残っているようだけど、こんな不浄な輩は容赦なく……踏み潰す!



「うげぇ、頭を失っても動いている。流石は不死者ね」



 私はゾンビの頭を踏み潰す! が、例え身体の一部を失った状態でも、何事もなくゾンビは動き続ける。だから不死者は厄介なのよね。



「ふ、ふう、助かったわ、お嬢ちゃん!」



「お姉さん、まだ二体いますよ?」



「は、はわわっ! この……このォォ!」



「ギ、ギギギ……おではもう死んでるがら、ブン殴られても痛ぐないぞ、ゲヘヘ♪」



「わ、わわわ、らめぇぇー!」



 工作員Nはゾンビの一体――ゾンビ二号(仮)に渾身の一撃とばかりに右の鉄拳を放つ! おー、そんな右手がズニュッとゾンビの顔面に深々とめり込んだわけだが効果なしって感じね。それどころか捕まってしまったわ。



「主っで美味ぞうだなぁ、食べでもいいがい?」



「ダ、ダメッ! 絶対にダメェェェ!」



「ぞう言われるど、おでは余計に食べたくなる性分なんだな……うがあああっ!」



「はいはい、そこまで!」



 ガッとゾンビ二号の腐敗してグロテスクな両手が工作員Nの両肩を押さえ込む。首筋にでも噛みつく気? うーん、このまま美味しくいただかせるわけにはいかないわね! と、そんなわけで私はゾンビ二号に対し、全体重を乗せたドロップキックをぶちかます!



「うにょぉぉーん!」



 ゾンビ二号は奇妙な悲鳴を張りあげながら吹っ飛ぶ。だけど、数秒後には平然と立ちあがり、再び襲いかかってくる。痛覚を失った身体って最悪ね、まったく! 吹っ飛んだまま再起不能(リタイア)していろっつーの!



「肉を食わせろ、ウガアアァァ!」



「ひゃ、もう一体いたことを忘れていたわ!」



「そいつは私に任せてっ! 大蛇鞭(ヴァイパーウィップ)を食らいなさい、不浄な輩め!」



 ゾンビ三号もことをすっかり忘れていたわ! だけど、そいつは下半身を大蛇に変身させているサマエルによって薙ぎ払われる――うお、すぐに立ちあがった! くぅ~不死者ってしぶとすぎで、うざっ!



「沙希、菩薩拳を使う時が来たね」



「あれかぁ、あれは上手く使えるか判らんけど、とりあえずやってみる」



 さて、ゾンビ等の不死者を滅す必殺技があるんだな♪ それが菩薩拳ってヤツだ。ああ、どんな必殺技かっていうと――。



「沙希のホッキョクグマのモノと化した右手が光り始めた!? なにをするのかしら? 見物させてもらうわ」



「フフフ、そんな菩薩拳ってのは要するの……こういうモノだァァ!」



 菩薩拳というのは、そう光り輝く右手の肉球による張り手を叩き込むだけの単純な技である。とまあ、そんなわけでゾンビ三号に光り輝く張り手をゾンビ三号の顔面にぶちかます。



「わ、ゾンビの腐った肉が消滅し、白骨化した!?」



「菩薩の名を冠する拳は、不浄なモノを成仏させる慈悲の拳! ほら、白骨化したゾンビから魂が抜けだし、天へ昇っていくわ」



 ――と、サマエルに説明したけど、実際のところは光の破壊エネルギーをぶち込んだだけである。しかし、上手い具合に腐敗した肉だけが吹っ飛んだもんだ♪



「アンタって慈悲深いねぇ」



「なんだか皮肉に聞こえるんだけどなぁ。さて、助けてあげた見返りをどうしようかお姉さん?」



「う、うぬぅ……」



 サマエルのそんな皮肉にニヤリと笑いながら、私は返答する。さて、お次は工作員Nから妖蛆の秘密を奪い取っちゃおうかな~♪



「ふう、助かったぜ、お嬢ちゃん!」



「ちょ、アンタ達ってタダ一緒にいるだけぇ?」



「「「ああ、そうだ!」」」



「薄情者ねぇ……」



「おいおい、ゾンビなんざぁブン殴ってみろよ? 腐った肉が拳について臭っせぇだろう?」



「つーか齧られたら、アイツらの仲間入りするハメになっちまうかもしれねぇ!」

 


「うーん、腐った肉が拳につくのは嫌ね……く、臭ァァ! てか、齧られたら奴らの仲間入りっていうのは映画の中の話じゃん。あ、でも、ありえそうで怖いなぁ」



 工作員Nの三人の同伴者である大男達は、外見は雄々しく強そうなナリをしているのに、なにもせず見ている傍観者を気取る薄情者だわ。まあ、ゾンビなんて不浄な輩を相手にしたくない気持ちは判るけどさぁ……うげぇ! 気づけば、私のホッキョクグマのモノに変化させている右手がドロッとしてペースト状の腐ったゾンビの血肉がごっそりこびりついている! うっがぁー、念入りに消毒しなくちゃぁぁ!

 


「操屍術には前々から興味があったのよね。これは私がもらっておくわ」



「わ、蛇女、なにをする!」



「ちょ、サマエル! 横取りはダメよ!」



「フン、いいじゃない? どうせ、これは写本だろうしね」



「痛っ……全身の骨がギシギシと悲鳴をあげているわ! うぎゃああっ!」


 ムムムム、サマエルが工作員Nから妖蛆の秘密を強奪する。うへぇ、大蛇に変化させている下半身を工作員Nの身体に巻きつけてギュウギュウと絞めつけている。



「写本ねぇ。ん、魔道創生会監修って書いてあるわね。何々、お猿でも読める魔道書シリーズ第三弾、超初心者向け妖蛆の秘密ねぇ……」



 お猿にも読めるっていうのは余計な気がするけど、魔道創生会監修の初心者向け魔道書シリーズなんてモノがあるようね。魔道創生会の連中は新人育成のためにつくったってところかなぁ?



「フン、まあいいわ。私には死霊秘法があるしね」



 ま、最凶の魔道書である死霊秘法(ネクロノミコン)を所持している以上、他の魔道書を手に入れてもサッと読む程度のモノになりかねないのよね。



「さてと、ミスティアは連れて帰るわよ」



「ううう、ダメよ……ダメ、ダメ……ぐへぇ……」



「あ、力を入れすぎちゃった♪」



 ミスティアは断固、我々が連れて帰る! と、強い意志を感じる視線を私に向けてくる工作員Nだったけど、その直後にガクンと意識を失ってしまう。サマエルったら工作員Nの身体をす巻き状態にしている大蛇のモノと化した下半身に余計な力を入れたみたいね。



「あ、姐さんを離せよ! とりあえず、ミスティアの身柄は預けておくからよぉ!」



「OK! 気絶しちゃったしね」



「ふう、このまま寝ててくりゃいいんだがなぁ。起きてるとうっせぇし……」



「まあいいや、連れて帰ろうぜ。じゃあな、お嬢ちゃん達!」



 下半身を大蛇化させているサマエルの絞めつけ攻撃から解放された工作員Nを同伴者の三人の大男のひとりが背負う。ミスティアの身柄を私達に委ねるっていうのは賢明な判断だわ。



「アイツらとはまた遭遇するだろうね」



「うん、ミスティアを奪い取りにやって来るかもね。指名手配されているしね、コイツ……」



「どうでもいいが、コイツは予想以上に屈強な娘だ。わらわの肉球が生命力は相当奪ったはずなのに、こんな感じで気持ち良そうそうに眠っているしな」



「ホントですね。予想上にタフネスです」



「わ、みんな早く、この公園を離れた方がいいよ! パトカーのサイレンが聞こえるし!」



「むぅ、公園で騒ぎが――って、通報した周辺住民がいるのよ、きっと!」



「うーむ、とりあえず、雉飼探偵事務所へ行こう、みんな!」



 耳を澄ますと、パトカーが奏でるやかましいサイレン音が聞こえるわ。一旦、今いる公園から立ち去った方が無難かもしれないわね。



「あ、ゾンビはどうしよう?」



「私達が後始末をしておきます」



「そういうこと! 沙希達はさっさと狂奈さんの事務所へGO!」



「あ、それじゃよろしくお願いします!」



 首から上がない状態で公園内を蠢くゾンビ一号、そんな一号と同じく公園内を蠢くゾンビ二号、そして白骨化して再起不能(リタイア)となったゾンビ三号の処遇をどうするのか? という後始末は、アテナさん、清水さん達、夜の守護者達に任せておこう。さ、一旦、雉飼探偵事務所へとりあえず、行ってみるとするかぁ――。

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