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第一話 使い魔との出会い その3

「西瓜ウメーウメー!」


 西瓜を食べたのは久しぶりかも! そんなわけでメチャクチャに美味しい♪ 今の私なら丸々一個、食べられそうだ!



「沙希ちゃん、種まで食べてるの?」



「え、そうだよ」



「うーん、西瓜の種を食べると盲腸になるって話だよ!」



「ああ、それは迷信よ、迷信」



「そ、そうなの? う~ん……」



 西瓜の種を食べると盲腸――虫垂炎になるって話は迷信だ。私は西瓜のみならず葡萄や石榴の種も平気で食べるけど、体調に変化等は起きなかったしね。



「奇遇じゃのう。わしも種を食べるぞ」



「アハハ、なんだかんだと、種も美味いよね♪」



「うむ!」



「「「えーっ!」」」



 お爺ちゃんも西瓜の種を食べるようだ。つーか、そんな西瓜の種を食べるのは、どうやら私とお爺ちゃんだけのようだ、う~ん……。



『さてと、美味しい西瓜も食べたし、そろそろ行動に移すとするか――』



『うん、そうだね!』



 まあ、そんなわけで茜にテレパシーを送る。とりあえず、お爺ちゃんの家の裏山にでも登ってみようかな?



「ん、どこへ行くんだ?」



「あ、ちょっと、そこらへんを散策に……暇だしね」



「そうか? なら注意しておこう。わしの家の裏山ならともかく、縁側から見える山があるだろう? あの山は姫鬼山(ひめぎさん)といってな。昔から得体の知れないモノが住まい魔境と呼ばれているからな」



「う、うん、判った。でも、今の時代に魔境とか迷信話もいいところね」



 へえ、得体の知れないモノがいる魔境ねぇ。そんな迷信話があるんだ。興味深いわね。



「お爺ちゃん、それってこの村に伝わる伝説みたいなもの?」



「ああ、思い出したわ。あの姫鬼山って狼姫(ろき)の物語だっけ? そんな御伽噺(おとぎばなし)の舞台になった場所でしょう? 古墳だってウワサもあるわね」



 ――と、早苗姉ちゃんが、そんな話を始める。その前に狼姫の物語? 聞いたことのない御伽噺だわ。



               ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆



「へぇ~世良江野村と周辺にのみ語り継がれている民話みたいなものなんだぁ」



 ふ~ん、どうりで知らないわけだ。とはいえ、興味津々かな--詳しい話を訊いてみるかな?



「狼姫の物語ってどんな話? つーか、姉ちゃんはよく知っていたな!」



「お、悠太も興味津々なわけ? ああ、私も知りたい!」



「知っているとは言っても断片的よ」



「ふむ、断片的ではいい加減な話になりかねん。わしが語るとしよう」



 ゲームやアニメの話ならともかく、弟の悠太が御伽噺に興味を持つなんて珍しいわね。さて、お爺ちゃんが断片的にしか狼姫の物語を知らない早苗姉ちゃんの代わりとばかりに語り始める。



「さて、お前達も藤原紀典(ふじわらののりのり)の伝説なら知っているだろう?」



「うん、それは知っているよ、当然! ○○県のあちこちに妖怪退治の伝説を残す英雄だしね」



 藤原紀典のことを知らないなんて野暮な話だわ。なにせ、○○県じゃ桃太郎や金太郎といった有名な御伽噺の主役と肩を並べる存在だしね!



 さて、そんな藤原紀典だけど、私の記憶では今から千年ほど昔の人物だったかな? んで、御伽噺によると、相棒である怪力無双の僧侶、轟慶とともに魔物狩りを生業とする正義の味方である。



「それじゃ世羅江野村に伝える民話を語るとしよう。あの姫鬼山には狼姫という鬼が住んでいてのう。たまに棲家である姫鬼山から降りてきては田畑を荒らし、牛馬はおろか人間をさらうなどの悪行を繰り返したのじゃ!」



 ビッとお爺ちゃんは、茶の間の縁側から見える山――姫鬼山の方を指差す。ふむ、狼姫とは、あの山に住んでいた鬼の名前のようね。



「狼鬼の正体ってさ。昔、この辺を支配していた暴虐な大名とか豪族、或いは山賊のことじゃないのかな? そいつがお爺ちゃんが語ってくれたこと以上に悪鬼羅刹な行いを働いた外道だったからじゃないかな? だから、〝鬼〟というかたちで御伽噺の悪役にされたとか?」



「うむ、そういう説もあるぞ……さ、続きを語るとしよう。狼姫は世羅江野村を荒らすだけに留まらず、遂には京の都にまで出張り、貴族達も襲い始めるのだった。さて、そんな狼姫を野放しにするわけにはいかない! ――と、その存在を危惧した時の帝は討伐団を編成し、世羅江野村へと差し向けるのだった。そのリーダーを務めたのが藤原紀典というわけだ」



 狼姫の正体は、私の予想だと、かつて世羅江野村周辺を支配していた暴君のような大名とか豪族、またはぶらりとやって来て世羅江野村を荒らしまわった風来坊な盗賊団とか――とにかく、その手の悪党のことだと思う。んで、そいつの悪行があまりにも非道で残忍だったわけで、それが起因となった作られたのが、狼姫の物語という御伽噺なんじゃないのかなぁ、と?



「うへぇ~すごいポジティブな鬼だなぁ! 京の都にまで出張って貴族達を襲うとか……」



「まあ、こんなチンケな村で暴れまわるよりは、そんな京の都で暴れまわった方が価値のあるお宝なんかを強奪できたりしたんだろうし、鬼――狼姫としては楽しかったんじゃない?」



「チンケな村とは失敬なことを言う!」



「あ、冗談、冗談……って、どこへ行くの、お爺ちゃん!」



「……畑だ」



「ああ、話の途中なのに……」


 

 むう、チンケな村って言ったのが不味かったかなぁ? お爺ちゃんはムッと不機嫌そうに立ちあがると茶の間を後にする。



「余計なことを言っちゃったわね。あの調子だと、しばらくは家に帰ってこないわよ」



「む、むぅ……」



「沙希ちゃん、こうなったら名井有人にも訊いてみよう!」



「うん、そうだね。彼なら恐らく狼姫の物語についてより詳しく知っているはずだわ!」



 お爺ちゃんがダメなら、彼に訊いてみるか――と、そんなわけで頼ってみようと思ったのが名井有人というオカルトマニアである。早速メールを送ってみるかなぁ――。



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