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第六話 邪神降臨! その5

「うわ、あの女だ! 俺はあの女に身体を……シャアアアッ!」



「わ、私の身体を返せ、フゥゥシャアアアッ!」



 ジョーと朱莉が全身の毛を逆立てながら、唸り声を張りあげる。身体を奪われた!?



「こんにちは、ナイ牧師です。ああ、この男の妻とか恋人ってわけじゃないから、そこらへんよろしく!」



「ま、紛らわしい!」



 さて、仮面の女もナイ牧師と名乗る。姿形は違えど、同じ名前の人物がふたりもいるというのは、ホント紛らわしいなぁ!



「んんん~身体を奪われた? ああ、お前達はあの時、〝私達〟と戦った人間の魂を宿した獣かい? フフフ、奪われた身体っていうのはコイツのことかな?」



「ゲ、ゲェー! ミイラ化した俺の元の身体がァァ!」



「イ、イヤァァ! なんて酷いことをするのよ!」



「ちょ、動き出したわよ!」



 不愉快な気分になる嫌味な笑い声を張りあげながら、女ナイ牧師がパチンと指を鳴らす。それと同時に、全身の水分を失いカラカラに干からびた砂漠のような熱砂の大地で行き倒れ自然とミイラ化した男女の遺体が、地面から這い出してくる……うお、まるでゾンビとして復活したかのように動き出したわ!



「あれはジョーと朱莉の元の身体じゃん? しかし、ひっでぇことするわね」



「お嬢様、操屍術(ネクロマンシー)の使い手のようですね。あのニャルラトホテプは――」



 操屍術か、死霊秘法にも記してあった文字通り死体を操る術である。てか、私は使いたくないなぁ、ああいうグロい術は……。



「私も操屍術を使えるわ。よし、元の絶対に動かない屍に戻してやる……うわっ!」



「おいおい、お前の相手は黒いスフィンクス君だぜ!」



 まあ、なんだかんだと、私の操屍術を使えるし、女ナイ牧師に操られるジョーと朱莉の本来の身体を元の状態――絶対に動くことがないタダの屍に戻そうかと思った矢先、ズウウウンッと黒いスフィンクス君が立ちふさがり邪魔をする。



「沙希、あの仮面の女とミイラは任せろ! 操屍術の解き方ならエリザベートから習った!」



「そ、そうか! じゃあ、頼んだわよ!」



「てか、ミイラが増えてるんだけど……頑張れぇぇ!」



 女ナイ牧師、それにジョーと朱莉のミイラ化した元の身体に関してはタツやエリザベートに任せておこう。ちょ、応援してないで手伝ってやってくださいよ、狂奈さん!



                    ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆



 うく、気づけば、女ナイ牧師が動くミイラを大量に召喚している。ちょ、某映画を連想させる亡者の軍団だわ! ふ、不浄すぎる!



「卑劣なり、ニャルラトホテプ! 貴様が召喚したミイラ軍団の中には、私達の仲間であった者も!」



 そうカイムが叫ぶと同時に、ドンッと数体のミイラがバラバラに砕け散る! 不可視の広範囲攻撃――衝撃波を放ったってところか?



「ヒュー! 流石は神猫カイムってところかな? だけど、ミイラの在庫(ストック)はまだまだ……クククク♪」



 パチンパチンと連続で指を鳴らしながら、女ナイ牧師は氷上を舞うフィギュアスケートの選手のように踊り出す。う、バカンッと砂漠地帯な地面から増援とばかりに動くミイラが複数体、飛び出す。



「失せろ、悪魔め! ジョー、朱莉、行くぞ!」



「「は、はい、カイムさん!」」



「私達も行くぞ、ペルセポネー!」



「おう! 操屍術を解除できるかやってみるぜェェ!」



 カイムを筆頭に、ジョー、朱莉、タツ、エリザベートが、女ナイ牧師率いるミイラ軍団に対し、突撃する。はわわ、大丈夫かな? 向こうは数で攻めてくるような連中だし、そんな数で圧倒的に負けているし……と、それはともかく、目の前の悪鬼羅刹をなんとかしなくちゃ!



「沙希、わらわの背に乗れ!」



「狼姫、巨大化できるんだ! よし、ラ~イドオン!」



「沙希ちゃん、私も!」



 狼姫の身体がズモモモッと巨大化する。わお、北欧神話に出てくる魔狼フェンリルを連想させる巨大狼と化したわ! んで、そんな巨大狼と化した狼姫の背に、私と豹の姿のままの茜が飛び乗るのだった。



「フフフ、巨大化できるお友達が一緒とはな。だが、甘いぜ、黒いスフィンクス君はなにもコイツだけではない」



「えっ……うわ、黒いスフィンクスが増えた!」



 ふたりいるナイ牧師――男ナイ牧師が騎乗する黒いスフィンクス君とまったく同じ姿をした顔のないスフィンクスが二体、増える……ちょ、増援だなんて卑怯だわ!



「あっしに任せるでヤンス! うおおおっ!」



「仕方がない。私も戦うとしよう」



「ああ、タヌキチとアポロンも巨大化した!」



「アポロンはまるでガ○バのノ○イみたいだね、沙希ちゃん!」



「う、うん、フェレットもイタチだしね」



 茜が持っている星のアルカナカードがモコモコと蠢き一匹の狸の姿に変化する。久々に見た気がする彼女の使い魔である仙狸(センリ)のタヌキチが、黒い鎧兜姿で巨大化する! そんなタヌキチと同じくアポロンの身体もズモモモモッと巨大化する。



「面白いっ! さあ、黒いスフィンクス君、クマ公と狼を叩き潰せ!」



「わ、あの野郎、空へ飛びあがった!」



「沙希ちゃん、大きさではあっちが勝っている! 私達を踏み潰す気よ!」



「く、空へ飛びあがったのは、きっとそうね。むぅ、こうなったらコイツを使うしかないか!」



 狼姫は巨大化したとはいえ、黒いスフィンクス君の方が大きさでは勝っているのよね――というか、さらに黒々した禍々しい身体が巨大化した気がする。このままじゃ本当に踏み潰されてしまい兼ねないわ!



「女帝のカードに狼姫の力が封印されている! 狼姫(ロキ)……オーバードライヴブ!」



「オーバードライブ? 食べ物のことか? うひゃあああ、身体が熱いぞ!」



 ったく、なんでも食べ物だと思っちゃうなんて食いしん坊だな! それはともかく、女帝のカードに私の魔力を注ぎ込む――オーバードライブ化だ!



「ああ、狼姫の背中に翼が生えたっ!」



「うお、なんだ、これは!? わらわは鳥だったのかァァ~~!」



「うーん、なんだかんだと、オーバードライブ状態にしたら翼が生えたことだし、元から翼を持っていたんじゃないの、アンタ?」



 女帝のアルカナカードには狼姫の力が封印されている。そんなわけで私が魔力を注ぎ込むことで。狼姫が本来持っている能力を引き出したことになる。てか、狼姫は元から翼を持っていたっぽいわね。ご本人は、何故かわすれちゃっているみたいだけど――。



「狼に翼だと……ハハハハ、すごいぞ! さあ、もっと見せてくれっ! 死霊秘法を受け継ぎし者の力を!」



「この翼は狼姫は元から持っていたモノ! ここからが、私の奥の手よ!」



 黒いスフィンクス君の背に騎乗する男ナイ牧師は、バッと両腕を開きながら哄笑する。さて、アイツを黙らせる奥の手も使うか!



一角幻獣(ユニコーン)の角!」



「あ、それは武装用魔術カード?」



「そうよ。狼姫をオーバードライブさせたわけだし、コイツも使ってみたくなった!」



「お、おい、わらわの頭に角が生えたぞ! どういうことだァァ!」



 さて、死霊秘法に記されている武装用魔術カード――一角幻獣の角ってヤツをつくってみた。そんな一角幻獣の角というカードは、短時間だけど、太陽の光ネルギーを一角獣の角というカタチで具現化させることができるモノである。ヒュー、初めて使ってみたけど、上手く狼姫の頭の額に発現できてホッとしたかも……。



「狼姫、そのまま飛んで! その光の角で黒いスフィンクスを貫いちゃって!」



「無茶を言うな! まあいい、飛べばいいんだな?」



「そうそう! わ、黒いレーザー……あっぶなっ! く、素直に近寄らせてくれないみたいね!」



 バアアアッと額に光の角を生やした狼姫の巨体が空中に舞いあがると同時に、男ナイ牧師がその背に騎乗する黒いスフィンクス君の妖怪ののっぺらぼうのような目鼻口のない顔にボコンと穴が開く。んで、そこから黒い光の筋――レーザーのようなモノが発射される! ふう、なんとか紙一重でかわせたけど、アレに当たったら流石に不味いわね。



「沙希ちゃん、また黒いレーザーがっ!」



「うわあああっ! 速射砲ってヤツですかー? うお、また回避できけど、何度も回避するなんて無理っぽわね。でも、大丈夫……こういう場合に備えての防御用魔術カードもつくってあるよ!」



 フフフフ、私は二手、三手先のことを考えてあるのだ! そんなわけで防御用魔術カードを何枚か作成してあるわけだ。さ、使ってみよう!



「沙希ちゃん、三発目は来るよ! 黒いスフィンクスの顔に穴が……ああ、黒い粒子が収束を開始した!」



「ま、任せて! 土塊魔像(ゴーレム)のカード……が、があああっ!」



 防御用魔術カードの一枚――土塊魔像のカードに魔力を注ぎ込むと同時に、黒いスフィンクス君の目鼻口のない黒い無貌から放たれた黒いレーザーが、私と茜が騎乗する狼姫に直撃する! ば、万事休す!



「THE ENDだ! さて、死霊秘法を回収するとする……ぬぅ、なにィィ!」



「ハハ、残念でした☆ 私達なら無事よ!」



「うおー、くそみそに危なかったぞ! 倍返しだァァ~~!!」



 ズドーンッ! と、黒いスフィンクス君に目鼻口のない無貌から放たれた黒いレーザーが直撃したのは、私達の身代わりである土塊である。土塊魔像(ゴーレム)のカードは、土砂などを媒介として身代わり人形を召喚することができる防御用魔術カードってわけだ。さあ、反撃だァァ!



「光翼矢のカードも使っておく!」



「な、なんだぁ? うあああ、飛行速度が勝手にっ!」



「沙希ちゃん、これはヤバい!」



「いいのよ、細かいことは! ぶっち抜けェェェ!」



 空中を駆ける狼姫のそんな飛行速度を強制的に上昇させる補助用魔術カードの光翼矢のカードも使っておくか! ちょ、こりゃ速度的にヤバいな……でも、細かいことを気にしていられるかァァ!



「ハハハ、面白い! さあ、俺と黒いスフィンクス君をブチ抜いてみろ!」



 ムムムム、男ナイ牧師の嬉しそうな声が聞こえた気がする。なにが楽しんだよ、クソ! その刹那、黒いスフィンクス君と光の矢となった狼姫が激突し、バアアアッと純白の粒子と真っ黒な粒子が弾け飛ぶ!

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