第六話 邪神降臨!
キャラクター紹介
・清水祥子――自称、元人間である蝙蝠。
・霧崎ジョー――元人間を自称する喋るシャム猫。
・神崎朱莉――同じく元人間を自称数するアメショー。
・カイム――古代エジプトの猫の神バステトの化身と自称する白猫。
・雉飼狂奈――私立探偵。本名は天宮葵
私、山崎沙希がよくアクセスするインターネットのオカルト系掲示板オカルトジェネレーション――略してオカジェネには、本物の魔術師を自称する者が常駐しており、魔術絡みの話題などなどで盛りあがっている一方でKYな書き込みや誹謗中傷な書き込みを行う荒らしな輩もいるのよねぇ。
私が知っているだけでも、そんな鬱陶しい輩が四人いる。固定のハンドルネームで書き込みをする輩でクソコテ四天王と呼ばれ他の利用者から嫌われている。管理人MADOKA氏によって何度かアクセス禁止になったこともあるけど、それでも懲りずにKYな発言等を繰り返している困ったちゃん達だ。
さて、エティエンヌとは、他の利用者から嫌われているクソコテ四天王のひとりである。まったく、どんな輩なのか気になるところだわ。リアルで会ってみたい気分!
「沙希ちゃん、エティエンヌはどんな書き込みをしているわけ?」
「ん、こんな感じだよ」
私は愛用のスマホからオカジェネにアクセスし、件のエティエンヌの書き込みを茜に見せるのだった。
お名前:エティエンヌ◆enajakba
E-mail:
題名:聞いてくれよ、オメーラ!
コメント:俺は魔術師になったぜ!
あるすげぇ御方から妖蛆の秘密という題名の魔道書をもらったんだ!
そんな魔道書のおかげで魔物を手駒につけたぜwwww
ところで死霊秘法って最凶の魔道書を知っているか?
俺はそいつを持っているヤツを探している(・∀・)
もし知ってたら絶対に連絡しろよな!
――とまあ、こんな書き込みだ。エティエンヌは痛い妄想家としても有名だけど、死霊秘法がどうとかって書かれちゃ気にならないわけがない!
「ん、もしかすると、あの黒い男はエティエンヌが差し向けてきた刺客だったのかも!?」
うーん、あの黒い男――山田を差し向けてきたのはエティエンヌでは!? そう思っちゃうよね。
「沙希ちゃん、それにみんな! 元の世界に戻れたわけだし、そろそろ帰宅しない?」
「それもそうだよね。てか、本当に元の世界に戻れたのか確認したいかも……」
なんだかんだと、私達は元の世界に戻ってくることができたわけだ。しかし、本当にここは元の世界なんだろうか!? それも兼ねて一旦、帰宅してみようかと思う。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆
私は帰宅すると、即、私室に駆け込む。んで、愛用のノートパソコンの電源をONにし、ネットに繋ぐ。あのエティエンヌが、またなにかしらの書き込みをしていそうだしね。
「あのクソコテはなにも書き込みはしていないわね。ん、他のクソコテが気になる書き込みをしているわね」
前述したとは思うけど、オカジェネにはエティエンヌ以外にも鬱陶しいクソコテがいるわけだ。んで、そのひとりが気になる返事を件のエティエンヌの書き込んでいる。
名前:魔法少女ヒカル◆lougole
コメント:つーか、ニャル様からもらえばいいじゃね?
あの御方は魔道書蒐集鬼だしねw
てか、ニャル様と同じく魔道書蒐集鬼のBBAがいたよね?
先日、あのBBAに奪われちゃったよ、俺の魔道書が(・ε・♯)
「ニャル様って誰!? てか、魔道書蒐集鬼のBBAってひょっとして……」
エティエンヌと同じクソコテ四天王と呼ばれる鬱陶しいオカジェネの住人のひとりである魔法少女ヒカルの書き込みにあるニャル様とは何者なんだろう? さて、魔道書蒐集鬼のBBAって、あのアウストリアのことじゃね?
「今後、コイツらの書き込みに注目しなくちゃね」
「うん、それがいいよ、沙希。もしかすると、最初に死霊秘法を狙ってきた連中と関係がある可能性があるしね」
「それより腹が減ったぞ! 飯を食ってから色々と計画を立てりゃいいじゃん」
「てか、死霊秘法か、すごぃなぁ! その本になら、私を人間に戻すことができる方法が載ってたりするかな?」
「わ、清水さん! い、いつの間に……」
ヘルメスと狼姫はともかく、いつの間にか蝙蝠の清水祥子の姿が!? いつの間に入り込んだのよ、むぅ……。
「細かいことよ。気にしちゃいけないわ☆」
「こ、細かいって……ああ、それから食うなって早苗姉ちゃんから念を押されている特盛生クリームプリンでは!」
ムムムム、冷蔵庫を漁って早苗姉ちゃんの大好物の特盛生クリームプリンを引っ張り出してきちゃってるし……うお、私が食べたって疑われるじゃん!
「早苗? ここは山崎早苗の家なわけ? ひょっとして、君はアイツの妹だったりして?」
「そうよ、早苗は私の姉です!」
「ふむふむ、そうなんだ。てか、なんだか懐かしい名前を聞いて人間だった頃の哀愁を感じちゃうわ」
「ねえ、そんなことより、私の家になにをしにやって来たのさ?」
そういえば、清水さんはなにをしに私の家にやって来たんだろう? てか、その前によく判ったわね……あ、早苗姉ちゃんのことを知っているっぽいし、そこらへん事情は判って当然かな?
「実はアナタに――マダムの死霊秘法を受け継いだ者に会いたがっている連中がいるのよ」
「え、マダム?」
「それって弓子のことだよね?」
「そう、マダム――天宮弓子のことよ」
「うむ、ということは沙希に会いたがっている連中とは弓子の従者達か!? うむ、生きていたのか!」
「わ、アポロン、アンタもいつの間に!」
「ムムム、いつの間にだと! さっきから、私はここに――と、それはさておき、弓子に仕えていた連中なら、すでにこの家の中に入り込んでいるぞ」
天宮弓子――死霊秘法の前の持ち主に仕えていた使い魔達が、この私に会いたがっている? えええ、すでにそいつらも私の家の中に入り込んでいる、だって!?
「ガルルルッ……いつの間にか猫が二匹、窓辺に!」
「え、猫が二匹、窓辺に!? わあ、本当だ! シャム猫とアメショー?」
「悪いな、勝手にあがらせてもらったぜ」
「あはは、ゴメンね。勝手にあがっちゃって……」
「む、しゃべったわ、猫が!? やっぱり、コイツらは……」
狼姫がガルルルッと吠える。ムムム、確かに私室の窓辺の猫が二匹いつの間に……むぅ、しゃべったわね。でも、もう驚かないわ。私の周りには、同じような獣が他にもいるわけだし――。
「もしかしてジョーと朱莉かい?」
「そういうお前はヘルメスか!? おお、生きていたんだな!」
「アポロンさんも無事みたいですね。ん、そういえば、ヘルメスさんもですが、マダムと行動を共にしていた頃とは、そのお姿が全然、違いますが……」
「まあ、お前達と同じだ。〝あの時〟に――おっと、彼らを紹介しておく。沙希、お前が持つ死霊秘法の先代の持ち主であるマダム弓子こと天宮弓子の従者であった霧崎ジョーと神崎朱莉だ」
「沙希、あのふたりは元人間さ。決して化け猫というわけでじゃないよ」
「そ、そうなんだ……」
「お、おいおい、化け猫ってなんだよ!」
「でも、そう言われても仕方がない気がするわね……」
二匹の猫は、先代の死霊秘法の持ち主であった天宮弓子の従者だったモノのようだ。ちなみに、シャム猫の方は霧崎ジョー、アメショーの方が神崎朱莉である……ん、元人間!? ヘルメスが化け猫って皮肉るけど、確かにそう思っちゃったかも!




