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第五話 異界からの脱出! その7

「ヒ、ヒギィィ! 身体中が痛いっ!」



「さ、沙希ちゃん、身体がァァ!」



「痛ェェ! なんだよ、突然!」



「こ、この光が原因かもっ!」



「身体が痛いぞ、この野郎!」



 次元修復石から放たれた光って、なんなのさァァ! 目を開けられないくらいの光量と同時に全身に激痛が走るっ!



「うう、光が消えた……あ、あれぇ?」



 次元修復石から放たれた光が、フッとまるでなかったかのように消え失せる……あれぁ? 外の様子が元通りになってない!? 私達は元の世界に何事もなく戻ってきたのか?



「ちょ、時計を見ろよ! 五分と立ってないぞ!」



「わお、本当だ。あの世界のでは時間って一体……」



 むぅ、校長室の中にある時計を見て気づく。あの世界での出来事は、元の世界においては五分かそこらの出来事であったことに――。



「ああ、鳥人間……アスペリウスがいなくなっている!」



「沙希ちゃん、校長先生のデスクの上に赤い宝石が埋め込まれた鍵が置いてあるよ」



 むぅ、様々な次元を行き来する迷宮図書館とやらからやって来た鳥人間ことアスペリウスの姿が、いつの間にか校長室から消え失せている。だけど、置き土産なのかは判らないけど、赤い宝石が埋め込まれた鍵が校長先生のデスクの上に置いてあるわけだ。



「アイツが置いていったモノなのかな? とりあえず、もらっておこう」



「てか、沙希ちゃん。わざと置いていったんじゃないかな?」



 とりあえず、鍵をもらっておくとしよう。うーん、茜が言うように、鍵をわざと置いていった可能性も否めないわね。しかし、なんの鍵なんだろうねぇ……。



「ところで沙希。あの女をどうするんだ?」



「そうねぇ……フフフ、イイことを思いついたわ」



 そうタツに尋ねられた途端、私の頭の中にあの女――アウストリアの処遇について、ズギュウウウンと面白いアイディアが浮かぶのだった。



「んじゃ、早速……クククク♪」



「うわ、沙希ちゃん、怖いっ!」



「狂気が彩っているぞ! 三日月のような笑みが怖いぜ!」



 えーそう? クククク、別段、凄惨な行為を今から始めちゃうぞ☆ なんて外道な真似をする気なんざぁ更々ないのにねぇ。



「さ、あの女のもとへ行くわよ!」



「う、うん!」



 思い立ったら即、行動! 私はスキップをしながら、校長室から立ち去る。さて、あの女――アウストリアに、ちょっとした罰を与えてやるかー♪



               ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆



「自称、魔法少女? お前はなにを言っているんだ? 三十路を超えているのに恥ずかしくないのか、そんなことを言ってて?」



「ホ、ホントのことなんだからっ! 私は魔法少女なんだからァァ~~!」



「そういや、学生時代から妄想癖が酷かったよなぁ、佐藤……」



 ん、アウストリアがなにか問題でも!? 先生達は苦笑を浮かべながら、彼女と対応しているわね。つーか、魔法少女って年齢じゃないでしょ! アンタの場合、魔女だっつーの!



「先生達、そのオバサンの対応は私に任せてよ」



「そういえば、佐藤と知り合いなのか? なんだか魔法少女だって言い張っているんだが……」



「うーん、魔法少女って名乗るのは、ちょっと歳を取りすぎているわね。魔女だって言った方が、みんなを納得させられるんじゃね?」



「う、うっさいィィ~~! 私は永遠の十七歳なのよ!」



「…………」



 永遠の十七歳って言い始めたよ、この人。まあ、そう思いたいなら、そう思えばいいさ。アンタの心の中で――。



「さて、アンタにはすっげぇ迷惑をかけられたし、罰を与えようと思っている」



「ば、罰ですって!?」



「そうよ。だけど、私は慈悲深いから、この程度で許してあげる……えいっ!」



「も、もぎゃああああっ!」



「ああ、弘子さんが黒いウサギになった!」



 対象物――人間を獣の姿に変化させるのは得意技だったりするのよね。そんなわけでアウストリアを黒いウサギの姿に変化させたってわけ。フフフ、私って優しいでしょう?



「うわああ、なによ、この身体はァァ~~!」



「うおお、(ウサギ)がしゃべったぞ! どういうことだァァ~~!」



「てか、いい加減、人間の姿に戻してくれよ、姉ちゃん!」



「わあ、しゃべる狐がいる!」



 外見は黒い兎でも、その中身は人間――アウストリア・ネフレンカスこと佐藤弘子のままである。そりゃ戸惑うよね。ま、慣れっこよ、慣れっこ♪



「おい、コイツを連れてさっさと立ち去ってよ」



「うむ、そのつもりだ」



「お嬢が迷惑をかけたな」



 さてと、黒い兎の姿になったアウストリアを職員室の外で待機している子分の黒川と瀬戸に投げ渡す。てか、これで良かったのかな? なんだかんだと、後日リベンジにやって来る気がするのよねぇ。



「絶対に仕返ししてやるんだからァァ~~!!」



「その前に人間に戻れなくちゃ本領発揮はできないよね、クククク」



「うにゅにゅ、一旦、引くわよ!」



「ほ~い、了解だ、お嬢」



「んじゃ、またな、お前ら」



 うーん、子分の方が聞き分けがいいっぽいなぁ。ま、とりあえず、リベンジにやって来たら、その時は完膚なきまでフルボッコにしてやるまでさ!



「あ、沙希ちゃん、突然だけど、名井有人からのメールが届いているわ」



「なんだか、すっげぇ久しぶりに聞く名前のような気がする。どれどれ、内容は『やっとメールが届いたかな? ふう、困ったよ、まったく(・3・)。それはさておき、オカジェネを見てごらんよ。エティエンヌが死霊秘法がどうとかって書き込みをしているよ!』……むぅ、後で見てみよう」



 アウストリア一味が立ち去ると同時に、私と茜のスマホに名井有人からのメールが届く。私達が、あの赤く彩られた異界へ行っている間に何度かメールを送っていたようだわ。



「沙希、オカジェネってなんだ? 美味いのか?」



「もう~食べ物じゃないってば!」



「フフ、もしかしてインターネットのオカルト絡みの掲示板かな?」



「ビ、ビンゴ! まあ、そんなところかな?」



「てか、あそこには本物の魔術師が書き込みをしているって話だね。てか、エティエンヌは、あの掲示板のクソコテだっけ、沙希ちゃん?」



「う、うん、自称、本物の魔術師だったね」



 オカジェネとは、オカルトジェネレーションというオカルト系掲示板である。管理人もそうらしいけど、本物の魔術師は常駐しているって話題があり、オカルトマニアが集まる人気の掲示板だったりするわけだ。んで、名井有人のメールの中に名前があったエティエンヌとは、件のオカジェネに常駐する固定ハンドルこと略してコテハンで、同時にうざい書き込みを繰り返す荒らしである。



「私、アイツが大嫌いだ! 嘘吐きだし、妄想家だし、おまけに嫌味な書き込みをするし!」



 エティエンヌという固定ハンドルネームを使う輩が何者なのかは知らないけど、私は大嫌いだ。現実(リアル)で会う機会があれば、絶対、ブン殴っているわ! それくらい大嫌いなわけだ。



「さて、とりあえず、確認だけでもしておくかなぁ……」



 さ、スマホからブラウザを開いてブックマークしてあるオカジェネの件のエティエンヌの書き込みを見てみよう。

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