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第五話 異界からの脱出! その3

私、山崎沙希が通う○○県立光桜学園の新校舎を上空から見るとL字型をしている。一方で現在でも利用者、多々な旧校舎を上空から見るとO字型なのよね。



 とまあ、それはともかく、私と茜、それにサマエルとミカエル先生は、顔面を含めた頭のあっちこっちから黒い花が生えた井川君、福島君、柴田君の三人を新校舎の保健室へと運ぶ。あ、ちなみに、保健室には主である保険医の佐伯愛子先生&数名の生徒もいるわけだが、この異常な状況を察知し、今にも悲鳴をあげそうな感じだ。



「ギャ、ギャアアアッ! 頭が痛いっ……ヒギイイイッ!」



「ギャアアアッ! 頭がっ……脳が裂けるゥゥ~~ッ!」



「「「キャアアアアッ!!」」



 保健室のベッドに寝かせると同時に、バリバリバリと井川君と福島君の顔面を含めた頭のあちらこちらが流血を伴いながら裂け、黒い花の蕾が飛び出す。ほ~ら、案の定、その光景を見た佐伯愛子先生達は悲鳴をあげるのだった。そりゃそうだよなぁ……。



「うわ、なんなのよ、この花は! 引っこ抜いてやる!」



「おやめなさい、サマエルちゃん! 引っこ抜けば、その少年の命に関わります。根が脳に達していますからね」



「根が脳に!? わお、そりゃトンでもない……」



「この手の植物は、人間や獣の脳に根を張りめぐらせる特徴があるんです。中には、寄生虫のように居座り続け、遂には宿主の身体を奪い取る種類も……」



 サマエルが井川君の額を裂いて出てきた黒い花の蕾を引っこ抜こうとするけど、それをキッと鋭い声でミカエル先生が制止する。根が脳に達しているだって!? てか、ミカエル先生の物言いは、まるで前にも同じような光景を見た時の体験談を語っているかのようだ。



「あ、綺麗な花……あ、あれぇ? 僕が触った途端、枯れちゃった!」



「む、むう、どういうこと!?」



 なにが起きたのさっぱりだ。とにかく、フッと突然、現れたアーたんの右手が柴田君の顔面に生えた黒い花のひとつに触れた途端、ボロッと崩れ落ちる。んで、連鎖反応するかのように他の黒い花、そして開花する前の状態である蕾がすべてボロボロに枯れ落ちる。



「うわああ、今度は柴田の身体が萎み始めたぞ! 沙希、一体どうなっているんだァァ~~!」



「ヒッ……砂漠で行き倒れたミイラって感じね!」



 一緒に新校舎の保健室へとやって来たツチグモこと土屋出雲と天城先輩が、ヒィと喉の奥で悲鳴をあけながら、ドッと尻餅をつく。柴田君の身になにが!?



「あああ、完全の干上がってしまったっぽいぞ。これじゃ……」



 ズギュウウウン――と、柴田君の身体が急激に萎み始める。そして、あっと言う間に砂漠で行き倒れた者の骸のように熱砂に全身の水分が奪われカラカラに干上がったミイラのような状態になってしまう。ああ、こうなっては死んだも同然か……。



「いや、まだ死んではいない。今なら間に合うはず――ペルセポネー、あれを使ってみるんだ」



「OK! どんな効果があるかは判らんけど、とにかく使ってみる」



 保健室にタツとエリザベートが駆けつける。しかし、何故、タツのことをペルセポネーって呼ぶんだろう? 確か、ギリシャ神話では豊穣の女神デメーテルの娘の名前のはずなのになぁ。その前にタツは男子よ。女装癖があるけど……。



「ん、タツ。その小瓶に入った液体はなに?」



「ああ、これか? ネクタルだ。まさかつくった初日に使うことになるとは思わなかったぜ」



「ネクタル!? ギリシャ神話に出てくる神々の飲料水みたいなモノだっけ?」



「ん、そうなのか、エリザベート?」



「むぅ、私の説明を聞いていなかったのか、この馬鹿弟子がァァ~~ッ!」



「アハハ、そう怒るなって♪ さてと、早速、柴田に飲ませてみるよ。あ、でも、不完全なモノなんだよなぁ、これ……」



 ネクタルはギリシャ神話に出てくる神々の飲み物である。生命の酒、不老不死の霊薬とか、そんな感じの効果があるモノだったかな? あ、でも、タツがつくったモノは、件のネクタルの名を冠した不完全な霊薬とのこと――ちょ、ヤバい雰囲気がするわね。



「ちょ、不完全な霊薬なんでしょう? 使っていいのかなぁ、そんな危ないモノを……」



「いんだよ、細けぇことは!」



「ムムム、細かいことで済ませちゃってもいいのかなぁ……」



 とにかく、そんな不完全な霊薬が入った小瓶のフタを開けるタツは、ミイラ化遺体のような状態の柴田君のカラカラに乾燥した口の中に流し込む。



「ああ、見てよ、沙希ちゃん。柴田君の身体が元通りになった!」



「おおっ! まるで逆再生映像を見ているようだわ……あ、でも、なんか変じゃね?」



「てか、柴田は男子だったよね?」



「それは間違いなく……ちょ、髪の毛が伸びて胸もボンッと膨らんできた!」



「せ、性転換!?」



「あちゃー、後遺症が出てしまったか……てへ♪」



「「「てへ、じゃねぇぇ!」」」



 ネクタルのおかげ(?)だろうね。柴田君のミイラ化遺体のような干上がった身体があっと言う間に元通りに――が、その束の間、彼の身体に変化が起きる、性転換という変化が!?



「ふう、とりあえず、助かったな」



「うむ、イイ仕事をしたわ、ペルセポネー♪」



「えええ、そうなのかなぁ……」



 柴田君の命は助かった。だけど、性転換(トランスセクシャル)しちゃった――絶対にイイ仕事なわけがない!



「さあ、井川と福島にも飲ませるぞー!」



「わあああ、ダメだよぅ!」



「む、むぅ!」



 お互いの顔を見合わせながら、ニタニタと笑うタツとエリザベートは、シャッと優雅で可愛らしいゴスロリな衣装を翻し、今いる保健室のベッドの上で悲鳴をあげている井川君と福島君のもとへと駆け寄る――うお、その手には柴田君を女体化させたネクタルの入った小瓶が握られているじゃないか!



「ああ、すでに遅かったか!」



「わあ、井川君がヨボヨボのお爺ちゃんになっちゃった! 福島君は赤ちゃんに――ッ!」



 むぅ、私が止めに入った時は後の祭りであったわけだ。井川君はヨボヨボのお爺ちゃんに、福島君は赤ちゃんに――三人は元に戻れるのかしらね? しかし、ひどい副作用だわ!



「わあああ、俺の身体がっ! 俺は男子なのにィィ~~!」



「ふおおおお、俺の身体がヨボヨボに……」



「ふぎゃあああ! おぎゃああああ! ぎゃうあああん!」



 さてさて、三人の命はなんとか助かった――のかな? うーん、とにかく、元に戻れればいいね、アハハハ……。



                ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆



「よし、探索に出るわよ! ――と、言っても校舎の周囲だけね」



「う、うん、それが無難かもね、沙希ちゃん」



「フン、まあいいわ。少しだけつき合ってあげる」



「師匠、俺も行くっす!」



「行くぞ、お前ら! わおおおーん!」



 と、そんなわけで私と茜、それにサマエルとヤス、ついでに自分がリーダーとばかりに先頭になった進む狼姫の五人で旧校舎および新校舎の周囲を探索することになったわけだ。



「ん、このニオイは、あの女か!?」



「え、あの女が近くに?」



「ああ、少し前に、ここらへんにいたはずだ。近くにまだ潜伏しているのかもしれん」



 さて、私達は探索のため新校舎と旧校舎の間にある杉の木のところへやって来る。ここらへんは滅多に来ない場所なのよね。ああ、そんな杉の木の下には、黒稲荷という私達が住む○○県S市の土着宗教の神が祀ってある祠があるわけだ。それはともかく、狼姫の鼻孔が、あの女――アウストリア・ネフレンカスのニオイを嗅ぎつける。どうやら、このへんに潜伏しているっぽいわ。



「変な女がさっきまで、そこにいたわよ」



「うわ、ウワサの蝙蝠!? てか、しゃべった!」



 バサバサバサッと小型の犬ほどの大きさのでかい蝙蝠が舞い降りてくる。てか、しゃべったわ! それに首から赤いデジカメを――むぅ、あのヘンテコリンなウワサは本当だったみたいね。

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