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第四話 迷宮学園 その2

「はうう、私が顧問を務める歴史の裏舞台部も旧校舎送りになりました……」



「は、はぁ……」



「しかし、許せません! 活動内容がマニアックでアングラだからって新校舎から追い出すだなんて!」



「アハハハ……ま、まあ、旧校舎といっても築三十年かそこらだし、まだまだ掃除をすればキレイですよ!」



 とまあ、そんな感じで地団駄を踏んで悔しがるミカエル先生の姿を見て、私は苦笑する。しかし、ウチの学校の生徒会の連中は嫌味なことをするもんだ! 活動内容なんてどーでいいじゃん! イチイチそんなケチをつけられたんじゃたまったもんじゃない!



「部活か……決めたわ! アンタ達の部に入部するわ! ミカ姉から、この学校に存在する部活の話をいくつか聞いているわ。つーか、オカルト研究部に所属しているんでしょ、アンタ達って?」



「え、えええっ! そんな簡単に決めちゃっていいのぉ!? 後で後悔しても知らないんだから……」



「み、右に同じく……」



「フン、それは私が決めることよ」



 ちょ、本気で言ってるわけ!? とまあ、サマエルが私や茜が所属する部活ことオカルト研究部に入部したいって言い出す。



「と、とりあえず、部室へ行こうか……」



「言い忘れていましたけど、すでに生徒会の連中と部長の天城さんがオカルト研究部の部室を旧校舎の方に移しましたよ。あ、荷物運びのお手伝いをしました♪」



「ちょ、マジですか!? むぅ……」



 ミカエル先生はキュピーンと右目をウインクさせながら、左手の人差し指をくるくると回転させビッと旧校舎へとつながる通路を指差す。ちょ、早すぎじゃね!?



「ま、まあ、行ってみるか……旧校舎へ」



「あ、師匠ぉぉぉ!! こんなところでお会いできるとは偶然にも程があるっす!」



「あら、ヤスじゃん。てか、アンタはこの学校の生徒だったのね」



 ムム、金髪ツンツン頭の男子が駆け寄ってくる。私のことを師匠と仰ぐ不良の安田靖彦ことヤスだ。まさか同じ光桜学園の生徒だったとはね。



「俺は二年F組に在籍しているっす!」



「あら、奇遇ね。同じ同級生とは――」



「私と沙希ちゃんは、ちなみに二年B組に在籍しているわ」



「おお、師匠と同級生とは、なんという奇遇!」



 ヤスはF組の生徒だったのね。クラスは違うとはいえ、同級生だったなんて意外だっつーか、〝いた〟ことを初めて知ったかも……。



「おや、安田君じゃないですか、ウフフフ……」



「わ、ミカエル先生! ああ、ちゃんと今日の補習授業は受けたっす!」



「ウフフフ、それならいいんですけどね」



「む、むうう……」



 後から聞いた話だけど、ヤスは出席日数&英語と数学の単位が足りないせいで夏休みを返上し、そんな足りない出席日数と単位を取り戻すべく補習授業に励んでいるようだ。ちなみに、危うく留年しそうになったとか――。



「師匠、どこへ行くんすか?」



「旧校舎よ。私が所属しているオカルト研究部の部室が旧校舎に移ることになってねぇ……」



「む、それって生徒会の陰謀っすよ! PTA会長の息子であり、生徒会長の新山の野郎を筆頭としたアイツらならやりかねないっす! あ、俺も一緒に行っていいっすか? つーか、所属希望っす!」



「そ、そう? まあいいや、じゃあ、一緒に行くかぁ」



 サマエルに続きヤスもオカルト研究部に所属したいって言い出す。ふう、コイツも後になって後悔しなきゃいいんだけど……。



「あ、そうだ、山崎さん」



「なんです?」



「ペットは連れ込まないようにしてくださいね♪ サマエルちゃんもですよ、ウフフ」



「「「ええっ!?」」」



 オカルト研究部の新部室がある旧校舎へ向かおうとする私達に、そうミカエル先生が声をかけてくる――ちょ、穏行の術のおかげで普通の人間には見えないはずの狼姫やアポロン、ついでに姿は見えないけど、一緒にいるらしいサマエルの使い魔である黒猫のキョウタロウの姿が見えるわけ!? ま、まさかとは思うけど……。



「そ、それじゃミカエル先生、まったねぇ~☆」



「あ、待ってよ、沙希ちゃん!」



「コ、コラ、待ちなさいよ!」



「おいおい、走るなよ!」



「ミカエル先生、さようならっす!」



 なんだか気まずいなぁと思った私は、ダッと駆け出す。と、とりあえず、旧校舎へレッツゴーだわ!



                ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆



 私、山崎沙希が通う○○県立光桜学園には、新校舎が完成して数年が経つというに取り壊されず残されている旧校舎が、今も存在している。



 まあ、旧校舎といっても築三十年も経っていないというのが最大の理由のはずだ。それに利用者がけっこう多いのよね。主に旧体育館なんかは体育会系の部活に所属している生徒達が、今日もそんな旧体育館を利用中だしね。



 さてと、生徒会の連中の陰謀(?)によって旧校舎の方へと移動させられた私が所属するオカルト研究部の新部室だけど、旧校舎四階にある今も本が数多、残されている図書館だったことは幸いだったんだろうか?



「フフフ、来たな、沙希&茜+α! ようこそ、新オカルト研究部の部室へっ!」



 旧校舎四階の図書館――いや、新オカルト研究部の扉を開けると同時に、バアアアンッと部長の天城麻耶が目の前に立ちはだかる。



「ハイティンションですね、麻耶先輩」



「フフフ、当たり前だ。ここは私にとって理想の場所だからな」



「昼寝とか、授業をサボるにはもってこいの場所なのは判るかなぁ……」



「てか沙希ちゃん。そんなこと言っていると沙希ちゃんまで麻耶先輩やゆかりんみたいに留年しちゃうよ……あっ!」



「ぐ、ぐぬぬぬっ! 留年って言うなぁー!」



「アハハハ、ついつい口を滑らせてしまったわ、ごっめんね~♪」



 さて、オカルト研究部の部長である天城麻耶は、本来ならひとつ上の学年―-要するに三年生にいなきゃいけないわけだが、去年の出席日数と単位の足りなさが響いて留年し、同級生となってしまった先輩でもある。本人曰く、私は不良クンではない。屋上で昼寝をしてばっかりいたら、いつの間にか留年していた――みたいな? 



「ふう、麻耶はいいよ。あたしなんて本来は今年の春に卒業してなきゃいけないっつーのに、こうして未だに……」



 と、嘆く一方で携帯ゲーム機を弄くっているのが、もうひとりの留年者である三嶋紫(みしまゆかり)、通称、ゆかりんだ。んで、そんなゆかりんは元不良生徒である。ケンカや煙草の所持が理由の停学が数回、出席日数、授業の単位が足りず、今年で高校生活四年目に突入しちゃったのよねぇ……。



「沙希の弟君はともかく、そっちの金髪ツンツン頭の男子&我が校の制服を着た外国人少女は入部希望者かな?」



「まあ、そういうことになるわね」



「師匠と同じ部活に入部するのが弟子の俺っすからね!」



「フフ、なんだかんだと、これで我が部の男子が三人になったわけだ」



「え、三人? ラフェエルとツチグモの他にもいるじゃん、タツっていうのが……」



「ああ、アレは我々、女子と変わらん。見た目が可愛すぎるからな!」



「は、はぁ……」



 さて、オカルト研究部には部員希望者のヤスを加えると男子部員が四人になるわけだ。ひとりは、あのミカエル先生の弟であるラファエル・アーミティッジ、もうひとりは土屋出雲こと通称ツチグモ、そして女装趣味の美少年タツこと太田辰巳である――が、タツはあの眉目秀麗な容姿から女子と間違われることが多いのよねぇ。

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