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第三話 謎の少女アーたん その2

「ななな、鳴神姫(なるかみひめ)の呪いだァァ~~!!」



「うおおおおっ! あのウワサ話は本当のことだったのかァァ~~!!」



「そ、そんなことより、高瀬がっ……息をしていないぞ!」



 ええ、鳴神姫の呪い!? んで、太った男――高瀬って奴の息が止まった? とりあえず、救急車を呼んだ方がいいわね。



「ふう、とりあえず、救急車を呼んでおいたから大丈夫よ」



「サ、サンキュー! しかし、なにが起きたんだ? 高瀬、しっかりしろよ!」



「なあ、鳴神姫の呪いに関しての話なら俺も知っているぜ。つーか、アンタらのお仲間のおデブちゃんは、鳴神姫の嫌われたっぽいな」



 鳴神姫の呪い!? うーん、とにかく、詳細を訊いてみなくちゃ!



「どういうことよ、タツ?」



「沙希は知らないようだな。じゃあ、教えておくよ。実のところ心霊写真(鳴神姫)を写しただけじゃご利益にあやかれないんだよ」



 と、タツが語るけど、鳴神姫の姿を撮影してもご利益にあやかれないの? 呪いについての詳細と一緒に、そのご利益にあやかれない理由も訊いてみなきゃね。



「タツ、詳細を希望するわ」



「ハハ、簡単なことさ。俺達、人間と同じで幽霊である鳴神姫にも好みがあるんだよ」



「た、単純な理由ね。要するに、あの太った男は鳴神姫にうぜぇー! キメェからどっか行けやゴルァァ! てか感じで嫌われたわけね?」



「まあ、そういうことになるかな? だが、それはあくまで仮説の段階なんだけどね。こればかりは実証されているわけでもないしな」



「そ、そうなんだ……」



「ま、そんなこんなで、写真撮影できたとはいえ、ご利益どころか酷い目に遭った連中が言い出したことなんだよ。〝鳴神姫の呪い〟ってね」



 なるほど、納得! てか、そういうオチがあったわけね。しかし、実証できるわけがないよね。こればかりは、なにせ相手はこちらからは接触できない存在である幽霊なのだから――。



「あ、そうだ! 件の鳴神姫なら近くにいるぞ、グフフフ♪」



「えっ!?」



「不幸な目に遭ったからといって、なにもかも私のせいにするなってプンスカ怒っているぜ。そんなわけでムカついたんで、あのデブの心臓を――」



「あ、あははは、嫌な冗談だなぁ……」



 タツがそんな冗談を言うけど、なにかしらの気配を感じるのよね。やっぱり、ここにいるのかなぁ、鳴神姫という正体不明の幽霊が――。



「ああ、気づけば、もう四時をちょっとすぎているわ! 時間切れね、ガックリ……」



 ムムム、気づけば、本日の鳴神姫の出現時間の終焉である午前四時を数分すぎていたわけだ。ふう、残念。今日こそはって思ったのになぁ……。



「仕方がない。帰るとするかぁ……」



「そうだね。もう時間切れだし、帰ろうか、沙希ちゃん」



「そうしようぜ。流石に眠い……」



「え、もう帰るんすか? んじゃ、メルアドを教えるっす。後ほど修業をお願いするっす!」



「しゅ、修行って、おいおい! ま、まあいいわ。メルアドだけでも教えてもらおうかしら。ところでタツはどうするの?」



「俺はもう少し、ここにいるよ。ちと用事があってね!」



「ふ~ん、まあいいわ。それじゃまったねぇ~☆」



 ちと用事がある? タツはなんの用事があるのかしらね? ま、それはともかく、私は帰宅しようと思う。なんだかんだと、今日はもうここにいる必要はないしね。



「あ、沙希ちゃん。なにか落ちたよ。脇に抱えている死霊秘法から……」



「ん、この小指の爪ほどの大きさの黒い物体のことかな?」



「あああ、それは弓子が紛失した……わあ、沙希! それに触れちゃダメだァァ~~!」



 お、脇に抱えている死霊秘法から、小指の爪ほどの大きさの黒い物体が地面に落っこちる。拾ってみると硝子の破片のようだけど、なんだろう、これは!? さて、ヘルメスがそれに触れるなって慌てた物腰で叫ぶ――弓子? ああ、前の死霊秘法の持ち主が紛失したモノらしいわね。



「わ、光り始めた!? なんなのっ……ああ、人間の女のコの姿に変化した!」



 ちょ、黒い硝子の破片のような物体が、赤い閃光を放つ――と、その刹那、私と同い年くらいの人間の女のコの姿へ変化するのだった! ちょ、グラマーで美人だわ! なんか妬けちゃう!



「うへへ、素っ裸の女のコっす!」



「ちょ、なに鼻の下を伸ばしているのよ!」



 む、むぅ、確かに素っ裸なのよね。おっと、なんでもいいから服を着せなきゃ!



「にょっ……にょにょにょ! はにゃああああ!」



「わわ、なにをする……ニヒヒ♪」



 さて、ハッと目を覚ます黒い硝子の破片のような物体が変化した女のコは、そんなわけの判らない言葉を発しながら、ダーッと悠太に抱きつく……むぅ、悠太の顔にニタ~と笑みが浮かんでいるわね。



「あ、あのコ、でかいわね……イライラ!」



「沙希ちゃん、どうしたの?」



「いや、なんでもない。つーか、アンタは何者なのさー!」



 大きな胸を見ると、何故、腹が立つんだろう? まあ、それはともかく、黒い硝子の破片のような物体が変化した女のコに対し、何者か――と、私は尋ねる。



「ア、アアア?」



「アアア?」



「もしかしてしゃべれないの?」



 このコ、まさかしゃべることができないんじゃ!? 



「よし、君は今日から〝アーたん〟だ!」



「えええ、アーたん!?」



 ドーン! と、タツがそんなニックネームをつける。むぅ、可愛い名前かもね。



「アーたん? うん、僕は今日はアーたんだ♪」



「うお、しゃべれるんじゃん!」



 なんだ、しゃべれるんじゃん! てっきりしゃべれることができないのかと思ったわ。



「しゃべられるに決まってるよぅ♪ でも、自分が何者かさっぱりなのよねぇ……あ、急な睡魔が……あうっ!」



「ちょ、寝るなァァ! てか、悠太、いい加減、離れなさいよー!」



「お、おう! むぅ……」



 アーたんは自分が何者なのか、そこらへんさっぱりな様子だ。記憶喪失? それとも――てか、悠太は残念そうに突然、眠ってしまった彼女を地面に寝かせる。



「仕方がない。俺の服を貸してやるか――」



「お、丁度いいわね。早く着せちゃって……ああ、忘れてた! アンタも男子だったわね! このスケベェェ!」



「彼女には私達が服を着せるわ! 男子は目を閉じて!」



 ニタニタ笑いながらタツは、背負っているリュックサックから黒いTシャツとジーンズを取り出し、眠っているアーたんに着せ始める……ちょっと待てぃ! タツは本物の女のコと見間違えてしまうほどの美人だけど男子であることに代わりはないわ! そんなわけで男子であるタツに任せちゃいけない気がする! とばかりに私と茜が代わりに服を着せるのだった。



「沙希ちゃん、このコをどうしよう?」



「うーん、それが問題だなぁ……」



「師匠、俺の家で預かってもいいっすよ?」



「嫌だ! 僕はこのコの家に行く! ムニャムニャ……」



「わ、それはないっす! あ、また眠ってしまったっすね」



 さて、アーたんをどうしよう? ヤスが自分の家で預かるって言うけど、ハッと目覚めたアーたんに激しく拒否され、何気にショックを受けているわね――てか、アーたんは再び眠ってしまう。なんなのよ、まったく!

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