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第二話 魔道書を狙うモノ達 その6

「んー、この蛙と魚の混合生物のような異形の面構えの男を起こして、私から死霊秘法、それに黒い破片とかいうわけの判らないモノを奪おうとした理由を聞き出さないとね」



「え、起こすのかよ! また襲いかかってきたら、どうするんだよ、姉ちゃん!」



「まあ、その時はその時ってことで♪」



「むぅ、気楽だなぁ……」



「つーか、師匠! このクソ野郎を起こす役目を俺にやらせてほしいっす! うらあああっ!」



 お仲間に取り残された気絶している黒い男Aを起こし、私から死霊秘法を奪おうとした目的を聞き出せないといけないわね。んで、俺が奴を目覚めさせる――と、ヤスが先ほどの恨みとばかりに、黒い男Aの右の脇腹を左足で蹴飛ばすのだった。



「が、がほおっ! うう、なんだ……俺は一体!? うおおお、恐竜が……あ、いない? う、うわああっ!」



 右の脇腹を蹴飛ばされると同時に、悲鳴をあげながら黒い男Aは目を覚ます。そして、シャッと勢いよく立ちあがり、飛び跳ねるように後退する。クスクス、ガタガタと全身を震わせながら、私を凝視しているわ♪



「おはよう、インスマス面のクソ野郎」



「うおおお、ヘルメットがァァ……み、見たな、俺の素顔を許さん!」



 黒い男Aは、右手を蛙と魚の混合生物のような自身の異形の容貌を隠すかのように覆いながら、ギンッとにらんでくる。ヒューおっかない殺気の宿った冷たい目線だなぁ――とりあえず、魔眼を発動させたかたちでにらみ返しておくか!



「む、むぅ!」



「ふむ、あまり効果がないみたいね。流石は人外の類だわ」



 私の魔眼は、まだまだ効果の程は弱いけど、対象物に心的ダメージを与えて気絶させることぐらいは可能である。しかし、人外って奴らに対しては、さらにその効果が弱まるようだ。現に、黒い男Aは怯んだ程度だしねぇ……。



「さてと、アンタにいくつか質問がある。何故、死霊秘法を狙ったのか? そして黒い破片(ブラックチップ)ってなに?」



「…………」



「黙して語らずを決め込むようね。ところで、アンタのことをなんと呼べばいいのかしら? ニックネームをいくつか考えてみたけど、フロッグフェイス、フィッシュフェイス? それとも山田?」



「な、なんだ、そりゃ! ふざけたニックネームを考えやがって!」



「あら、しゃべったわね。黙して語らずを決め込むんじゃなかったの? 山田ァァァ~~♪」



「や、山田だと! くうう、誰が話すかっつーの!」



 黒い男Aに対し、私は山田というニックネームをつけるのだった♪ てか、語る気がさらさらないようね。まあ、当然かなぁ――どうにか吐かせたいわね。



「そいつの口を割らせる手伝いをしてやるぞ。わらわに任せろ、ガウウウウッ!」



「うおおお、金色のワン公!? なんだ、コイツはァァ~~!」



「あ、狼姫(ロキ)! ナイスタイミング!」



 シャッと黒い男Aこと山田を背後から押し倒すかたちで金色の狼が――狼姫が颯爽と現れる。丁度、コイツを召喚しようと思っていたところだったし、ナイスタイミングだわ!



「うお、なんだ、この不気味な男は!? 蛙のような魚のような……とにかく、奇妙な面構えだな!」



「どうでもいいけど、その服をどこで? まさか盗んだんじゃ!?」



「ああ、これか? もらったんだよ、わっはっは♪」



 ボンッ! という軽い爆発音ともに金髪碧眼の白人美女といった人間の姿に変身する狼姫だけど、無駄に大きな胸を強調しているかのような胸元がガバッと開いたセクシーな黒いライダースーツを身を包んでいる。つーか、あの十二単はどこへやったわけ!?



「ヒ、ヒィィ、狼女ァァ! 化け物の仲間を呼ぶなんて卑怯だぞ、テメェらァァ~~!」



「誰が化け物だ! つーか、化け物はお前の方だろう? 人間離れした容貌だしな」



「おおお、俺は人間だぞ! この貌は親の遺伝だ!」



「親の遺伝だと? なんだか哀れな気分になってきたぞ。さて、お前には嫌でも語ってもらうぞ――魅了の魔眼で!」



「が、がふぅ……判りました。なにもかも語りましょう、イヒヒヒヒ……」



 蛙と魚の混合生物といった面構えであるインスマス面は、なんだかんだと親譲りってわけね。さて、狼姫の両目の瞳が一瞬だけ、星型に変化した気がする。魅了の魔眼とやらが発動したってことかな? その直後、ニィィと山田は不気味な笑みを浮かべる。一体、なにをしゃべるのかしらね?



「俺達はとある御方の命令で死霊秘法と黒い破片を入手しにやって来た工作員だ。何故、狙ったのかというと……ガ、ガアアアアッ!」



「お、おい、山田!」



「うわああ、山田が溶け始めた!? なにが起きたんだァァ!」



「し、師匠! なにが起きたんすかァァァ!」



 なにが起きたわけ!? 山田の蛙と魚の混合生物のような異形の面構えことインスマス面がっ……肉がドロドロと溶け始める! うわ、目玉がゴボッと地面に……気づけば、山田の頭全体が白骨化する!



「沙希、山田は恐らく口封じされたんだと思う。〝とある御方〟とやらにとって不味いことことを口にした瞬間、発動する魔術の一種を予めとばかりにかけられていたのかもな」



「そ、そんな魔術があるのかよ!」



「あると思う。死霊秘法にも載っているかもしれないわね。この本には、〝その手〟の外法の魔術もたくさん載っているだろうし……」



「しかし、酷いことをする輩がいるもんだ。わらわは今、猛烈に怒っている――ッ!」



「しかし後味が悪いなぁ……」



 なんだかんだと山田は死んでしまった。気づけば、衣服を残し、山田の身体は骨まできれいさっぱりと解けてしまったわけだし……。まったく、後味が悪いわ。〝とある御方〟って一体、何者なのよっ!

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